映画「ストックホルムでワルツを」を観ました



やっと観たよー 早く観ようと思ってたけど忙しくって…。60年代スウェーデン語でジャズを歌って一世を風靡した歌手モニカ・ゼタールンドの物語。「ストックホルムでワルツを」

この映画ヒットしているみたい。月曜日の午後、行ったら満員で入れず。前後のアポの予定も詰まっていたのでその時は諦めて退散。なので今日は午後のアポが詰まっている前にお昼の回を事前ネット予約で取ってから劇場へ向う。ネット上で座席表を見たらガラガラだったのに、行ったら高年齢層のお客様で超満員。まぁ高齢者はネット予約なんかしないわな… それにしてもタイトルがいいよね。「ストックホルム」で、「ワルツ」だもんね。「ワルツ」が「ジャズ」でもダメだっただろうからこれは配給会社さんの大正解だと思う。

モニカはシングルマザー。親の反対を押し切り普段は電話交換手をしながらも歌を歌い続ける。時には自分の意図しないようなショウもこなし、でも少しずつ実力を発揮しはじめ、ユーロヴィジョンには「歌謡曲なんて」と言いながらもスウェーデン代表として参加。そこで零点をくらい、成功のプレッシャー下で、アル中状態になり… でも最終的にはスウェーデン語で歌うことで自分自身の魅力を確立し、憧れのビル・エヴァンスとの共演も果たす、と。

いいシーンだな、と思うのは、スウェーデン語の詩をTake 5にあわせて歌いはじめるカフェのシーン。モニカのお洒落な60年代北欧ファッションも含めて、とても絵になる。日本語版のチラシの写真になっているシーンだ。このヘンも配給会社さん、さすが。オリジナルのポスターじゃ日本人はここまで引っかからなかっただろう。

いや、実にいい話だった。ネタばれになるがお父さんと和解するシーンとか、めっちゃ泣けた。っていうか「ワルツ・フォー・デビー」が流れれば、それだけで泣けるのは当然なのだが。話のテンポもよく2時間ある映画だったけど飽きることもなく充分楽しめた。なかなか愛する人にたどり着けないもどかしい感じも、映画として更にプラスポイントを加えていたしお嬢ちゃん役の子役の子も可愛かった。

ただ……なんつーか、いまいちパンチが感じられなかったのは主役の彼女がイマイチだったからかも。俳優で魅力的だったのは超頑固者のお父さん役の方。残念ながら彼女本人には今いち感情移入できるほどの魅力がない。でもストーリー展開がおもしろいので、とりあえず観ている間は充分楽しめた。なんだろ、この感じ。ちょっとハリウッドの流行映画の感想に近いものがあるかも。特に彼女がアル中から一転復活しスウェーデン語で歌う、と一念発起する時の復活のパワー。なんか納得いかないんだよね…

こっから先は偏見なんだけどさ、なんかやっぱスウェーデンって今いち感情移入出来ないんだよ。彼らは高い教育を受けて、恐ろしく頭のいい人たちだ。小さい国をなんとかしていく効率の良さや生き抜く力も備えている。周到なマーケティングだって、お茶の子さいさいの彼らにとっては世界的ヒットのポップスも、世界的ヒットの映画もお手のものかも? ちょっとそんなことを思いたくなるのだった。私はフィンランドは国としても大好きだけど、スウェーデンにはどうも感情移入出来ない。そもそもこの映画の頭に出てくるロゴが、スウェーデン映画産業協会みたいなロゴだったのも気に入らない。音楽も映画もインダストリーと言ってしまえる人たちなのだ、彼らは。

ここにも何度も書いているが、ヴェーセンはスウェーデンだから好きなわけではなく、たまたま好きなバンドがスウェーデンだっただけだ。もちろんスウェーデンの伝統音楽は一通りあらってみたこともあったけど、当然彼らよりすごい音楽は発見することが出来ず、今だにスウェーデンのアーティストはヴェーセン1本という状態なのだ。一方のフィンランドは、すでに7、8組やっているというのに! だから、なんかスウェーデンって言うだけで、やっぱり斜めに見たくなっちゃうのかも。いや、誤解ですよ、スウェーデン好きですよ。充分好き。でも、なんか…違うんだ。私には決定的に相容れないものがある。

…というのが映画に対する厳しい私の意見であるが、この映画でこういう歌手が存在した、という事自体も初めて知ったので、それだけで勉強になった。やっぱりヴェーセンやるからには一通り、このテのものはさらっておかねばならない。

そうそう、ユーロヴィジョンに対して「歌謡曲なんて」って彼女が言ったのが良かったねー。ユーロヴィジョンはヨーロッパでは一大ビックビジネスだから、あの発言は痛快だった。そういやダーヴィッシュもユーロヴィジョンに出て零点くらってなかったっけか?

でもスウェーデン語にジャズ、ちょっといいね。実は私はちょっとだけだけどスウェーデン語をかじったので韻の踏み方の綺麗な感じとか、ちょっと言葉を知っているだけなんだけど、結構グッと来た。

そういやヘヴィメタの世界では英語で歌ってりゃ北欧ものでも英米ものと同じに扱われるそうだ。確かにフィンランド人もスウェーデン人も英語は上手い。でも母国語で歌ってるとワールドになっちゃうんだって。それって、おかしいよね? 音楽ってサウンドの感触で判断されるべきであり、もっと言えば演奏する態度で判断されるべきものだと思うんだが… あ、やばい。また「べき」とか言っちゃった。でもそんな事も思い出された。

あと音楽ビジネスの裏側…っていう点でも多いに同意する部分はあっておもしろかった。人に言われて方向性を変えているようじゃダメなんだ、って事。人が提案するヒット狙いの企画をしぶしぶこなしながらも、彼女が身体を壊しボロボロになっていくところなど、そんなことを思ったりした。でも反対に「あ、そうか、私は自分の好きなことしかしてないからヒットしないんだな」とも考え、自分のことを反省したり。毎度のことだけど、分っちゃいるけどヒットは出せない(笑)

それにしても、この世界、どうやっても失敗する確率の方が、悲しいかな圧倒的に高い。そんな風に失敗した時、人の言うことを聞いて失敗したのだとしたら、もう目も当てられない。だから、やっぱり自分のやりたい事を常にやるべきだ、と。そこに行き着く。でもって自分のやりたい事なんかはレコード会社に「100枚しか売れないぞ」とバッサリ切られたりするんだよね、これが(爆)

この映画、彼女の自伝がベースになっているそうで、実際の話はどうだったかは知らない。きっとあれこれ裏ではあったのに違いないのだが… 

さて本物のモニカ・ゼタールンドがビル・エヴァンスとやっている映像がこれなんだけど、いいよねー、スウェーデン語の「Waltz For Debby」



しかし以前マーティン・ヘイズとデニス・カヒルの楽屋で聞いたデニスが弾く「Waltz for Debby」の素敵だったこと! いつまでも心に残るメロディだ。