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2014年12月27日土曜日

映画「おやすみなさいを言いたくて」を観ました

アイルランドが舞台だということ。歌手のマリア・ドイル・ケネディやU2のラリーが出演しているということもあって行ってきました。「おやすみなさいを言いたくて」

まず簡単に感想を言ってしまえば、実はイマイチでした。題材は働く女性における家庭と仕事の両立。職業観がテーマの映画で普段の野崎なら「仕事をするパワー」を映画から受け取り泣いて喜ぶような内容のはずなんですが、ダメだったなぁ。観ている時は長女に感情移入して泣いたりしていたものの、見終わった後、落ち着いて感想を考えてみれば、たいしたことは残らなかったように思います。

監督は自分自身の体験をネタに作った、と言っているようですが、確かに現実は映画みたいにはっきりしないものなのかもしれない。でも映画として世に出すからはある程度強いメッセージを感じられるものである必要があるようにも思います。つーか、メッセージはあるんだろうけど私がそれを感じ取れなかったのかも。いずれにしても、私には響かなかった映画でした。でも好きな人は多いように思う。

というのもジュリエット・ビノシュはいい女優さんで、もう何をやっても説得力があります。彼女の演技力に押されて、実は脚本が薄かったように思うんですよ。いろいろ場面や展開があるわけだけど、それについて説得力が足りない。なんでそうなんの、みたいなところが書ききれていないように思うんですよね。

でもって長い。イングリッシュ・ペーシェントよろしく長くてドアップの観念的なカットが長すぎる。

俳優さん的には母親以上に長女が良くって、母親の職業を理解しつつある、でも子供だから寂しい、みたいな微妙な年齢の子供をよく演じています。すごいなー 彼女。とにかく二人の女優は超一級品です。

でも旦那がさっぱり分らない。旦那はとっても素敵なデンマーク人の俳優さんなんですが、まったく感情移入出来ません。でも彼の演技がどうこういうことではなく単に脚本が弱かったんだと思います。

あとダブリンの話なんだけど、いわゆる海の近くのお金持ちの家で、あきらかにリフィー川の南。ブラックロックよりさらに南っぽい感じで家は超豪華。それもなんか拍子抜け。マリア・ドイル・ケネディが出てこなかったら、ここがアイルランドだとは分りません(笑)。ラリーの演技も特に書くこともなし。

…と、あれこれ厳しく書きましたが、この映画好きな人はいると思います。でも私にはまったく説得力がなかった。

ストーリーをかいつまんで紹介すると紛争地帯を取材するジャーナリストのお母さんは自爆騒ぎに巻き込まれて大変な重傷を負います。この自爆シーンの描写はすごい。若い女性がたくさんの爆薬を身につけて行くシーンは圧倒的です。そこに居合わせたお母さんはシャッターを何度も切ります。

長女に母親が「(戦争ばかりの世界に対して)いつも怒っているわよ」「でも今はその怒りとどう付き合うか分って来た」みたいな事を言うところがあって、そこは良かったです。あと「私よりもママを必要としてる子供たちがいる」とか娘が言うところなど。グッと来ました。

自爆シーンは象徴的で、終わりにも同じようなシーンが出てくるんですが、そこでは(ネタばれになるけど)家族とは別居してしまったお母さんは、もうシャッターを切ることが出来ません。なるほど、このシーンで監督は何が言いたいんだろ。監督の結論的には家族があるからこそ彼女は不死身の強い女性でいられた、ということでしょうか? 最後のシーンはおそらく監督の家族に対する感謝のメッセージなのかもしれません。

まぁ、でも映画の内容に戻って、この家族に言いたい事があるとすれば「時間が解決してくれるよ」という事ですね。仕事って世の中との係わりだから自分ではどうすることもできない。逃せないタイミングが来てしまえば、もう脇目もふらず突進する必要があるでしょう。それが事業であれ、撮影であれ… そして落ち着いたころまた家族との関係を見つめ直せばいいんじゃないかしら。でも、そんなこと仕事100%人生送っている私が言ってもあんまり説得力ないですな。

でも例えば彼女が夫の周りの人たちとの薄っぺらな日常会話に乗り切れないところなど、同情するところはたくさんあります。とはいえ、そうやって仕事であれ何であれ自分の世界がない人は、一緒にいるパートナーの世界に付き合って生きて行くしかない。彼女も家族と一緒にいることを決めたのならば自分の性格を理解して地元でもできるような何か自分を生かし意義を見つけられるような職業でもボランティアでも研究でもやればいいのに、そういう努力をしていない。…と、まぁ、なんか物語というか理由付けのツメがあまいんだよな、この映画。だから説得力がないのかも。

しかし映画であれ現実であれ、こういう話を聞くたびに自分は本当に恵まれているなぁ、と思います。周りの理解があるからこそ自分はこの仕事が続けられる。それがいつまで続くか分らないけど、分らないからこそ、今を必死に仕事しないと、と思うわけです。まぁ、でもウチの親なんかは理解っていうより「諦め」なんだろうな、と思ったりしているわけですが(笑)(あぁ、経理部長/母親との打ち合わせが今年も近づいてくる…頭が痛い)

映画のストーリーの流れの中で長女を巻き込んだ事件が起こるわけですが、私も友達や親を自分の仕事に巻き込んで(自分のコンサートに招待して)「あぁ、やめときゃ良かったな」と思ったことは何度もある。音楽の現場って、みんながフレンドリーであるがゆえに、そこが仕事場だという事が理解されにくい。例えば人の事務所に来て、自分の家族だからと言って我が物顔で振るまう奴はいないでしょう。でもコンサートの現場だと難しいんだ。いつだったかウチの某アーティストが「今の彼女はいいんだ、コンサートとか来ても楽屋で絶対に僕の仕事の邪魔をしないで見守っていてくれている。前の彼女はずっと相手をしなくちゃいけなかったからホント大変だった」と言ってましたが、それ、すごくよく分る! 自分に職業がちゃんとあって自分の世界を持っている人は人の世界を邪魔したりはしません。

例えばすごいお世話になった業界の大先生であればあるほど「野崎さん、忙しそうだったから、感想はメールしました」とか気を使ってくれる! 業界の常識を知ってる/知ってないじゃないと思う。業界内だって常識のない人、多いですから。そんな中、ただでさえウチの家族とか会場に来るとスタッフもアーティストも気をつかうし、ホントに面倒。家族ってなんて面倒くさいんだろう!(笑)でも家族がいるから強くなれる、ってのは分るような気がしますね。

…とか、まぁ、いろいろ考えました。ん? あれこれ書いているうちに本当は自分はこの映画好きなのかな、という気分になってきました(笑)。ま、いいや、とにかくそのへんの何も考えさせないお馬鹿な映画では決してないので、興味持った人は見に行ったらいいと思います。