映画「100円の恋」を見ました

テレビ局の事業部とか大手代理店が絡んだ「〜映画制作委員会」とか、エンタテイメント・ビジネスのヒット制作システムが大嫌いな私は滅多に邦画は見ないのだけど、この映画は、とにかく信頼できるライターの先生方がこぞって大絶賛していたので、この映画は例外でずっと興味を持っていた。

そしたら、数日前の夜、またもや信頼できる友達がFBでまたもや絶賛しているのを見て、私もついに背中を押され、翌朝六本木で見て来ましたよ。「100円の恋」

いやーーーー 結論から言うとめっちゃ良かったですよ。なんといっても彼女がいい。主演の彼女。いい、っていうか、すごい。すごすぎ。凄まじい。全然知らなかったけど、バイオグラフィーみたら奥田瑛二の娘なのね。全然知らなかったよ。安藤サクラ、名前を覚えておかなくちゃ。

ストーリーは、32歳のニートでどうしようもないデブ女(斉藤一子)が、離婚して出戻って来た妹ととっくみあいの喧嘩をし、実家を追い出されるように飛び出すところからはじまる。親からもらったお金だけど、それを元にとにかく1人暮らしをスタートさせ、100円ショップでバイトをはじめるのだが、この100円ショップに集まるバイトの連中がワケありの個性的な人たちばかり。まともに見える人間など誰もいない。一方、一子は通りがかりに見るボクシングジムでトレーニングを積むボクサーが気になりはじめるが、男は100円ショップでは、店員たちにバナナマンと陰口をたたかれながらも、バナナをいつも大量買いしていくのであった。そんな二人がふとしたきっかけから一緒に暮らし始め、果たして一子はその男に捨てられてしまうのだが、そこからの展開のテンポが非常に良く、すべてにギアが入った感じで、とにかくすさまじかった。

ほんと人生、いつギアチェンジが来るか分からない。自分の内側から何かがわき上がってすべてのシフトが変わるのか。とにかくダメダメでデブデブの主人公が、どんどん変わって行く様が本当にすごかった。それを見事に演じきった安藤サクラ、とにかくすごい。

音楽がダレたブルースから、シャープなロックになっていく感じが、その空気のギアチェンジを良く表している。

セリフが極端に少ないんだよね、主演の二人。ほとんどしゃべらない。で、しゃべったとしても一子は、ごにゃごにゃしてて、まるではっきりしない。おどおどして、姿勢も悪く、自信がなく、ダメダメで、仕事もトロイ。でもそれが、なんかこう変わって行くんだわ。主演の二人のインタビューも必読。

あ、そうそう、最近にしては珍しいタバコの多い映画だった。タバコの映像、なんか見ているだけで気持ち悪くなる… でもって、それがどっかこれは都内じゃ不可能だろうと、地方でロケした感じを醸し出してる。どうやら山口県でのロケらしい。あと脚本が「第1回松田優作賞」受賞の作品だということも忘れないように書いておかなくちゃ。