マルコム・グラッドウェル「ケチャップの謎」を読みました

読んだ。積ん読山の中から発掘の1冊。これ3冊シリーズなんだよね。1冊はすでに読んだ記憶があり、残りの1冊もどこかに埋もれているのだろうか。

マルコム・グラッドウェルがNEW YORKERに寄稿したコラムを集めたもの。勝間和代さんの訳。

いわゆるちょっとした発想で世の中を変えてしまった人たちのことが書いてある6本。どれも納得の読み応えだったが、特に素晴らしかったのはロレヤルの女性コピーライターの話。「Because I'm worth it」(私にはその価値があるから)。この名コピーがどのようにして生まれたか、という話。これはかなり興奮して読んだ。商品のキャッチコピーとして発表され、のちに会社のスローガンとなり、今でも全米の70%の女性が「これはロレヤルのもの」と企業名まで認識できるという驚異的に“当たった”キャッチコピーだ。

このコピーライターの女性は、新製品CM発表4週間前になんっても何もアイディアのないクライアントのジジイどもにイライラしていた。会議のテーブルでは「みんながみんな男に対してどう見えるかを気にする女の気持ちをうたったコピーを期待していた」どいつもこいつも女を馬鹿にしやがって。70年代の話だ。

それに怒り、キレた彼女が、名コピーを生み出だす。ロレヤルの製品は高い。でも私はこれを買う、私の髪のため。私がそれを決める。なぜなら…「私にはその価値があるから」たった5分で出来たコピーだという。

時代だよねぇ…時代はこういうコピーを待っていた、ということなのだろう。女が立ち上がりはじめた40年前。このコピーは共感を呼びロレヤルの製品はぐんぐんと売り上げを伸ばした。CMのコピーライトなんて、今,人は何を求めているか、そこを掴むに尽きるよね。時代はどういうメッセージを求めているか。またコピーによって製品にも付加価値がついてしまう、という、そういう時代の幕開けだったのかもしれない。

他にピルを開発したジョン・ロック、そして犬と話ができるというトレーナーさんの話など、実はちょっとしたことで大成功している人たちの話が並ぶ。でも売れっ子投資家の話は面白かった。彼などはすごく成功しているのに、いつも不安げで「まだ何もわからない」と常に発言しているのだそうだ。謙虚、というのとはまた違う、そんな彼の性格。そして意気揚々と自信満々な投資家たちは次々とつぶれていく。

考える。いったい成功ってなんだろう、って。そして思う。成功とはきっと時代を捕らえることなんだろう、と。私も「マッサン」観てませんとか、自慢しちゃ全然ダメだ(笑)
時代を捕らえないと(ウソウソ)

で、今、このブログにAMAZONのリンク貼るのに調べてて思い出した。この人、「急に売れ始めるにはワケがある」を書いた人だ。これ面白かったよなぁ。この本が書かれた時と、また今は時代がすごく変わってしまったと思うが…。

1月はいつもと違う仕事が多くて面白かった。赤羽で講座を持ったり、松江で映画の話をしたり。不思議なことに「担ぎだされる仕事」をすると、世間の評価があがる。松江の映画上映会は、地味だけど本当に素晴らしい映画を集め、東京でも難しいような上映会を地元で実現させた山陰アイルランド協会の皆さんが偉いのであって、私は担ぎだされて自分の好きなことしゃべっただけだ。私が偉いのはまったく無名のミュージシャンを日本に連れて来て、日本の皆さんを楽しませ、ミュージシャンにギャラを払って帰国させることだ。そこを間違っちゃいけない。だが世間の価値は自分が思っているのと違う場所にある。世間では担ぎだされた方が偉い人だと思うらしい。これについてはじっくりまた書きたいと思うが、それでもあちこちで直接お客さんに会う機会が与えられ嬉しく思う。「ブログ読んでます」とか言われちゃったりしてさ!(笑)

インターネット上にはたくさんの人たちがいる。と言っても、今でも日本の人口のマジョリティはネットから離れた生活をしている。いったい自分のビジネスはどこにいる人たちに向けて行くのかを考えないといけない。インターネットに接触しないで生活している人の数は多い。が、この人たちが「急に売れ始める〜」に出て来たような周りをひっぱるイノベーターやアーリーアダプターになることはまずありえず、自分から行動したりすることはもちろん、周りの人に自分の持っている情報を振りまくような事も絶対にない。こういう人たちを説得し、たとえばコンサートのチケットを買ってもらうには手取り足取り1人1人へ向けての説得とサービスが必要となる。そして時間をかけた割には、その人から他へ何かが広がることはない。点が点在するだけだ。

反対にイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる人たちは、物さえ良ければ自らどんどん集まってくれる。そして自分が見つけた物を回りにも宣伝してくれる。1人で事務所まわしてるウチみたいなところは、私のブログを誰に頼まれたわけでも読んでくれる、そんなクールな皆さんに頼るしかないかな、と思ったりもする。

そうやって考えていけば、あれこれ言って悩む前に、とにかくお客さんの期待を裏切らないことが大事なんだよな、と。これに尽きる。でもビジネス本、ホントよく買うんだよね。さて、次はどの積ん読本を読もうか。