映画「追憶と、踊りながら」観ました。いや〜、すごく素敵だった!!!!

かーーーーーっっっっ。いい映画だったなぁ! ホントにいい映画だった。静かでロマンチックで、心のひだが揺れるような、そんな映画だった。 「追憶と、踊りながら」原題「Lilting」試写で拝見しました。もう最高です、これ。さすがムヴィオラさん配給の映画に外れなし。



もうめちゃくちゃ、めちゃくちゃ、めちゃくちゃロマンチックで素敵な映画なんですよ。なんていうか、静かでね。言葉が通じないの。でも言葉が通じないって事は、ホントにロマンチックなんですよ。そしてなんとかコミュニケーションをとろうとするところとかね。同じ人を愛した二人。そしてその人を突然失った二人。あぁ、もう、なんかすごくロマンチック。下手な恋愛映画なんかよりも、うんとロマンチックだと思ったよ、この映画。

もちろんあのブリティッシュのおっさんとお母さんのほのかな恋愛の感じも、こちらは文字通りいい感じにロマンチックで、すっごく笑えたんだけど、それはまぁこの映画の楽しいコメディ的な部分で、それよりもホントこの青年リチャードと、お母さんとのやり取りがホントにいいんです。

そして映画全編に渡るキーワードは「匂い」。愛する人の甘い匂い。うわ〜 なんかいいわぁ〜 そういうの、なんかしばらくご無沙汰してたけど… うん、なんかそれがものすごく感覚に訴えてくるものがあって、ものすごい説得力のある映画なのでした。そして、その人を永遠に失ってしまったという痛み。それをずっとかかえて、この二人は生きていかないといけない。

主演の彼がねー、いいんですよ。ベン・ウィショー。押さえた感じとか、いかにも誠実そうんな感じとか。知らなかったけど、「007」とかにも出てた有名な俳優さんなんだって。実生活でもゲイで男の人と結婚している。ホントに誠実そうで… このしゃべり方、ウチのミュージシャンの誰かに似てんだよな… 誰だっけなぁ、この感じ。お母さんの方の女優さんも頑固な感じが出てて、すごく良かった。そういえば今読んでるウィリアム・トレヴァーの本にも拘束力の強い、頑固なお母さんが出てくる話があるんだけど、それとちょっとシンクロしたかも。

ほんとに素晴らしい映画だった。これねぇ、監督のセンスがいいんだね、きっと。押し付けがましくない静かでありながら説得力に溢れる演出。カンボジアからの移民である監督のお母さんも、やはり英国に長く住みながらも言葉がしゃべれないままでいて、子供に通訳をさせていたのだという。そしてそういう子供を頼りにしていた母親から、いきなり子供を奪ってしまったらどうなるんだろう…というところから、この物語のプロットが出来上がったのだとそうだ。そして1つのシーンが呼び戻すようにもう1つのシーンにつながったりする、あの素敵な演出が生まれたらしい。うむ。そしてタイトル「Lilting」(伝統音楽ファンなら、すぐピンとくる言葉だよね)にもあるようにこの映画はとても静かだけど、全体にリズムがあって、ほんとうにリズミカルに物語が流れて行く。

新人の監督さんいわく「ベンみたいな大スターが、こんな低予算映画に出てくれるわけがない」と最初思ったのだそうだ。でも!!これは彼しか出来ない演技だったね。俳優側も、そしてどんな仕事も、こうじゃないといけないと思う。ホントお金じゃない。まったくお金じゃない。自分の才能を表現できる場があるかどうかということが仕事を選ぶ基準であってほしい。誰もがそれを実現できるわけじゃないけど、それが実現できる人は幸せだと思う。

一方のベンは、この映画について「脚本が強いアイデンティティを持っているのが好きだ」と発言している。いや、本当に。確かに全編に出てくる言葉が、すべて本当に素晴らしいもの。分かるよー

脇役である通訳の女の子も良かった。なんと彼女はこの映画が初めての演技経験。でもすごく良かった。リチャード(ベン)は、だーーーっと一方的に自分の心をぶちまけてしゃべっては「訳すな」と言ったり超混乱。それをジュン(母親)は「訳してほしがっているような」表情でいたりして… その間に挟まれて通訳役の彼女はオロオロ…混乱する二人の間にいて、真面目に自分の役割を実行しようとしている彼女にもすごく好感を覚えた。そこは非常に現実的ななんだけど… うん、言葉が通じないのはロマンチックだな、とまた思う。

いや〜本当に良かった。まだだいぶ先だけど、是非観に行ってほしいと思う。5月23日公開予定。