ウォリス、ありがとう! また来てね!

photo by Naoki Fujioka  http://www.wisterias.jp
ウォリス・バード、ほんとに圧巻でした。実は今回もカメラマンの藤岡直樹さんに写真を撮っていただいたのだけど、藤岡さんがウォリスと数分接触しただけで言ってくれた「すっごい優しい人ですね」っていうのが、ホントに一番ウォリスの空気を説明してるかも、と思った。ウォリスのこの感じを言語化するのはホントに難しい。

なんというか、ドイツであった時はすごく「はかない」子だなと思った。ちょっと意外でしょ? もちろんステージはパワフルですよ。でもこちらの期待に精一杯答えようとしている健気な感じが、ものすごく感じられた。でも、そうなんだよね。藤岡さんの言うとおり、ウォリスはとてつもなく優しい。あの空気感は…ホントに説明しがたい。

そしてまたもや手前味噌だけど、自分はアイルランドの音楽に対してだけは、ホントに何1つとして間違わないなとまたもや確信したのでした。すみませんね、バカな幸せもんで…(笑)でもこうやって小さくても1つずつ企画を成功させて自信を付けて人生は歩んで行くしかないんですわ。ただでさえ、あれこれ厳しいから。ふふふ…

初来日公演は本当に最高でした。これ以上,何をのぞむかってくらい。ウォリスは、きっとこれからも来日するだろうけど、初来日は今回だけで、本人も最高だ、最高だを繰り返してたし、明らかに私が1ケ月前にドイツで観た公演の3倍は音楽が良かったんですよ。もちろんドイツでの公演も素晴らしかったけど、やっぱり東京は環境がバツグンに良いもの。小さくても最強の環境を作りをして、良いお客さんを集めればミュージシャンは、きちんと答えてくれる。そしてまたそういうチャンスを掴めなくては、ミュージシャンとしてもダメなわけです。それはミュージシャンじゃなく、すべての人間において言えることだと思うけど。

まぁ、とはいえ現状はホントに大変ですよ。今回たった1回の100人ちょいの公演で2人も海外から呼んでしまったから、大赤字こいて、これからこの赤字は他の仕事で埋めるしかないですな。でもこの成功は…私は買ってでも欲しかった…だから大成功ってことでいいんだと思います。

この仕事の素晴らしいところは、結果がお金だけじゃないこと。このお客さんや、ライヴを観た関係者から受けるリアクション、また絶対に続けて行けるだろうという確信。この感じがやっぱり成功なんだと思う。こういう考え方、人はきっとバカな幸せと呼ぶのだろう。うん、何度でも答えよう、その通りだ、と(笑)

でも続けて行ける、というこの確信。それが大事なんだわさ。業界内の人ばかりではなく素人さんからももらう意見に多いんだけど、次はフェスに出たらいいとか言う人も、ホントに多いんだよね。もちろん関係各所に資料を送るくらいはやるわけだけど、でもそういうのって、ホント送ったら合格通知を待つしかなく、結果フォーエバーに待つ事になることが多い。かつまだ自分の足でちゃんと立ててないミュージシャンがフェスに出たところで、なんになろうだろう。そんな状態でフェスとか言って、瞬間風速でしかないと私は思っているんです。自分で、自分の名前の公演のチケットを1枚ずつ売らないと、アーティストとしての筋肉にならない。フェス1発終わりの、ちょっくら話題になり消えてきった来日ミュージシャンのなんと多いことか。そんなんばっかです。他人の企画に頼る、おんぶする、そんなんばっかです。フェスティバルのプロデューサーだってホントに大変だと思う。大変な中、唯一自分が自由になれるのがアーティストの選択だ。だから私は簡単に「ウチの誰々呼んでくださいよー」とかあんまり言いたくもないんだよね。(とか、書いてますが、フェス関係の皆さん、ご連絡お待ちしています/笑)

そしてよく言われるのが、こんなに素晴らしいのになんで良く知られてないのか、って事。褒められてんだか叱られてんだか…って感じですが、まぁ、すみませんね、ウチの力が及ばなくて(笑)でもウチはこんな風に1人ですべて動かしているので、ホントにあれこれやれることに限界があるんですよ。でも事業やってる人なら分かると思うけど1人でやっているからこそ、こんな低予算の企画が出来る、というメリットもあるんです。そんな風に皆さんの協力,理解がなくてはウチは成り立ちません。またぜひ次の公演にはお友達をひっぱってきてください。それが一番の強力な協力になります。今回の来日公演を見た皆さん、ほんとうにこれからもウォリスをどうぞよろしくお願いいたします。

それにしても今回の一連の来日決定から始まり公演が終わるまでに、あれこれ確信したこともあり…私にとってもいい経験になりました。外野は、まぁ、あれこれ言うけど、そんなのは関係ないね。うん、自分は間違ってないな、とまた強く思うのであった。またバカな幸せもの? そうね、その通りだわ…

だからまだまだイバラの道なんだけど、頑張ろうと思います。次回の公演は必ずやりますよ。こういうのやるのかやらないのかは、すべて私とミュージシャンが決められる事だから。私たちは誰にも束縛されない。すべて私たちで決めていく。お客さんが居てくれる限り、ホントに頑張って続けたいと思います。だから大丈夫。また見たい、という人、待っててください。必ず次を作ります。

ウチのミュージシャンみんな、そうだもんね。みんな4、5回、ヴェーセンとか9回も来日している。私は1度やったら、短期では終わりません。大丈夫。(と、書いて、退路を断つ!

そして最近は後ろ向きの話題しか聞かない、どうしようもない洋楽音楽業界なんだけど、ちゃんとやれば大丈夫ってのも、私は業界に対して言いたかったんだ。もう最近は集まれば暗い話題しか出ない。そして簡単に「野崎さんは調子いいですね」とか言われる。そんなの、なんかウォリスの言葉を借りればFuck Offって感じ。

ウォリスは、ホントにすごかった。PAのエイダンの、あのハウリングするギリギリまで音をあげてくサウンド作りがすごいと思った。サウンドチェックを見ながら、いや〜、それはもう感動したよ。ウォリスの音楽は、私はまだうまく言語化できないけど、山口洋のこのブログがすごく言い表していると思う。圧倒的なオリジナリティーはリズム感に顕著に現れていて、ときどき自分のリズムがキレすぎてるのを自分で持て余してる。笑。さすが洋先輩…わかっとるなぁ!!! そして洋先輩は、ウォリスに紹介したかったのにさりげなく来てさりげなく帰ってしまわれた。で、あとから「良かったよ」メールを私の携帯にくれて、かつブログに強力な感想を残してくれた。かっこいいよなぁ、オイ! 洋は!!! 私もあんな風にかっこよくありたいと思う。

そして今回は、このブログを見ているお客さんだけではなく、関係者やら友達にまでチケットを買ってくださる方、続出で本当に感謝。皆さん、ほんとにありがとうございます! 音楽ライターの大谷隆之さんにいたってはチケットを発売日に2枚速攻で購入していただき、媒体の説得までして場所を確保しインタビューまでしていただき、そして、こんな感想もいただきました。ありがとうございます。そしてSmashing Magの船橋くんもありがとう! 足立区の寂しいカフェで二人であれこれ打ち合わせしたのが昨日のことみたいだよね。また次回もよろしく。あとライヴレビューでは、さすがの佐藤エースケが最高。エースケは良いライブの味方だと思う。本当に感謝。その他にも歌詞対訳をやってちゃんとサンプルCDも持っているはずなのに、インストアにあらわれてCD改めて買ってサイン会の列に並んでくださった通訳さんとか(笑)…もうお礼をたくさん言いたい人がいっぱいいる。ありがとうございました。

それにしても本当にいいコンサートだった。もちろん、普段やってる伝統音楽の世界も忘れていないけど、今やもう今持ってる連中… ヴェーセンとかマーティン・ヘイズとか…以上のアーティストはたぶん伝統音楽系では見つけられないと思うんだよね。となるとヴェーセンやマーティンを続けて呼ぶ事以上のことは、もう何も出来ないわけで… もちろん伝統音楽の、あぁいう牧歌的な空気も嫌いじゃないんだけど、ウォリスの今回の人間の感情むき出しの音楽の説得力ったら、なかった。

伝統であれコンテンポラリーであれ、とにかくウチは原則的に音楽的に低いもんは絶対にやりたくないんですよ。文化的なものだからということに甘えて、音楽自体が甘い連中が多くて、最近はちょっとそういう意味での伝統音楽に少し自分が飽きている。そんな中、今年は年があけてからグレン・ティルブルック、ペッテリ・サリオラ、ウォリス・バードと、完全なコンテンポラリー系が続いているのだけど、どのアーティストのライブも最高に最高に最高に素晴らしく、ホントに自分には音楽の神様がツイてるのかも、と思ったのであった。もちろんそれに向けて人の何倍も努力してきた自負もあるんだけどさ… やっぱりバカな幸せもんだよね、わたし。

そうよね、新人バンドを例えばヴェーセンと比較しちゃ可哀想なわけで…。もちろん、そっちはそっち周りで、実はまた別のディレクションで来日説得をしているミュージシャンもいるから伝統音楽好きの方は期待しててください。ただこれはウォリスの5年どころのレベルではなく、おそらく構想10年とかかかっちゃう可能性が高い。まぁ、でも今回確信したのは、諦めないで良かった。ウォリスを呼んで良かったってこと。Bクラスのアーティストはいくらでもいる。でも本当にあきらめないで良かった。音楽はしっかり選ばないとだめだ。人生は短いんだし。

まだまだ戦い続けます。それにはまず肉でも食べにいかないとね! そしてステージタオルを洗濯し冷蔵庫にものをつめて自分の生活をたてなおす。そして7月に入るとまた強烈に忙しいので、今のうちに企画書書きをやらないと。仕事があるというのは有り難いことですわ、ホント。そんなに寂しくならずにすむ。っていうか、ウォリスがいないのが寂しいな。ほんとに「優しい」人だった。毎度のことながら「ツアーロス」がひどいです。ウォリス、またね。



















PS
藤岡直樹さんもこんなことをご自身のホームページに書いてくださった。http://www.wisterias.jp Noteに行くと読めます。550と551です。