ビジネス・コンベンションに思う

もらったパンフレットの数々。
先週、先々週と続けてちょっとしたビジネス・コンベンションに参加するためにビックサイトや幕張メッセに行ってきた。こんな奴

特に幕張の奴は今年4度目くらいなのだが、1度目に参加したら毎年案内が送られて来る。今年は主催者から「絶対に来てくださいね」と勧誘の電話までかかってきて、ちょっとうるさいくらいだった。

あまり気乗りしなかったのだが、畔柳ユキ隊長が1つ目のコンベンションに友人が出展しているらしく誘ってくれたので、行くことにした。正直あぁいうところで新しいビジネスが拾えるとはとても思えないが、いろんなものを見れば刺激を受けて自分の中かから新しいアイディアが生まれてくる可能性は確かにある。

お友達は頑張っていた。小さなブースなんだけど、出展には大変な金額がかかるという。音楽系のコンベンション/ショーケースも同じだ。WOMEX、MIDEM、SXSW… 儲けているのは主催者だけで、なんとか自分の作品を世に出したいというミュージシャンやバンドにたくさんのお金を出させ、業界人はなんとなく付き合いでブースを回る。見て回る人間の動員だって、主催者のDMよりは結局参加する出展者の方の力が大きく担っているんじゃないか。主催者は場を提供するだけだ。誰もそこで新しいビジネスが発生するとは思ってない。こんなところでいい話が来るわけない…と思いつつ…ま、でもそれは業界全体が目をつぶって行うゲームみたいなもんだ。みんなそんなことは分かっている。分かっていながらゲームに参加するのだ。

かつてバブル時代は、こういったところで拾えるビジネスもあったのだろうと想像する。が、例えば私も数多くの海外のバンドを手がけてきたが、自慢じゃないがビジネスショーケースみたいな場所にはかなり最近になるまで行ったことがなかった。

間違ってフィンランドのやつに行ってしまった時、律儀な私はそこでバンドを4つも拾う結果となり、招待してもらった恩は返したと思うのだが、正直あまり良い気がしなかった。あれは付き合いで引受けてしまったが、そういう場所には積極的には行きたくないものだ。というのは、バンドを選ぶという事は、私の仕事で唯一私が手にしている自由であり、またお客さんに対する裏切ってはいけない信頼だからだ。そこに第3者を介入させたくない。(とか、青いこと言ってるから、ダメなのかなー でも青いことも言うけど、私は他の誰よりもちゃんと実績も返していると思うよ、自慢じゃないけど)

ビジネス・コンベンションもそうだけど、例えばディレクトリに載せてもらったりするのも同じ事だ。私は独立した時から、某ディレクトリに載せてもらっているが(正確には載せてもらっていたが)そこから私に新しい仕事や問い合わせが来たことは1度もない。でもあのディレクトリのおかげで、ウチに対する売り込みはあきらかに増えた。ウチみたいな小さな事務所でも、年間2、3通。なんとかしてデビューしたい日本のバンドが、音資料を郵送で送りつけてくる。スタジオやCDプレスの会社にいたっては、いまだに年間3、4通くる。こっちがどんな音楽をやっているのかいっさい調べもしないで、どの程度制作やリリースを手がけているのか知らないで、たぶん片っ端からDMを送っているのだろう。それがあまりに多いので、途中から掲載することを辞めてしまった。

前にも書いたけど、大金払ってビジネス・コンベンションに出展しても、次の売り込みが来るだけだ。結局のところ自分に仕事を呼び込むには「面白い事をやっている」ということを100%のパワーでアピールしていくしか方法はない。音楽,特に海外の音楽を売っているものにとって、CM音楽やタイアップなどの飛び道具は滅多にやってこない。ただ単に地道に自分のやれることを続けていくだけしか出来ることはない。そして実績を重ねていく。それしかない。

どんな宣伝活動をしてもあまり効果がない時、お金を払って参加するこういう場は、もしかしたらアーティストやなんとかして自分の作品や技術を世に出したいと思っている人には魅力的にうつるかもしれない。でも、そこまで世の中甘くない、ってこと。

とはいえ、こういうビジネスコンベンションにまったく意味がないとは言わないよ。参加する人に1つ出来るアドバイスがあるとしたら、そういうところに参加することに決めたのなら、それを迷うことなく100%活用すること。ゴチャゴチャと、こんなところに来ても意味ないとか思ってはダメ。(ユキ隊長いわく、そこは「見ちゃ行けないところ」/笑)参加することになったら、100%、いや空元気を出してでも200%のポジティブな気持ちで参加しないといけない。そして、それをきちんと自分のSNSや自分の既存のお客様に案内すること。それによってメジャー感を演出することだ。私の場合もディレクトリに5,000円払って載せるのならば、今なら出しっ放しするのではなく「音楽業界人の名門電話帳、なんとかさんに掲載いただきました!」「〜さんの隣りに掲載してもらっちゃった!すごい」とか、ここで紹介するなりするだろう。

こんなすごいコンベンションに出展しました、そしたら誰々が来てくれました、隣りは著名同業者の誰々さんでした、〜さんも出展してたよ、一流の方々が掲載される業界電話帳に載せてもらいました…などなど。それを自分の場所で、自分のお客さんにポジティブな気持ちで伝え、自分の場でも200%活用することだ。お客さんはそれを見て、自分が応援しているものが、ある程度社会的地位を与えられたと喜んでくれるかもしれない。一番信頼できるのは結局自分のお客さんだ、ということでしかない。その数がどんなに少なくても。そしてそこから広げて行くのが一番確かなのだ。

という中、こちらは某クラシック・レーベルさんのブースでいただいたパンフレット。クラシックにはJASRACがかからないから、音源を比較的自由に扱える。なるほどねぇ… もうCD売ってるだけじゃ立ち行かないものね。でもトラッドだって、編曲のコピーライトがないものであれば、著作権フリーだからね。やり方はあるのかもしれない。

とかなんとか書いていたら、この週末にもオフィスに飛び込みの営業電話が。もう固定電話には営業電話しかかかってこないな。こういうところに参加して名刺を安直に置いて来るとこういうことになるのよ… もう少し考えよう。

とはいえ、最初に戻りますと、華やかなあぁいう場所に行くと、ホントにいろんなアイディアが頭に浮かぶ。それは確かだ。それを得るだけでも参加する価値はあるのかもしれない。特にユキさんと行ったのが良かった。一緒に時間をすごすならポジティブな人に限る。それはどんな場面においても重要だ。もう暗いことばっかり言う業界人とは一緒にいたくないよ。

ユキさんのナチュラル隊長ぶりに感動。時間を読みながらちゃっちゃと要領よく移動していく様子とか、松屋のケータリングカーの営業のおっさんに「韓国で展開したら絶対に売れます」とか熱心に語っちゃったりとか、某ブースを通りすぎたあと「こんなの、愛情がまったく感じられないよ、ダメだね」とか正義感燃やしたり(笑)、何にせよユキさんといると、楽しい。かつ駐車場代とかをちまちま楽しく節約するのに、友達には気前良くお土産を買ったりしてるし… なんというか、隊長肌なんだよなぁ! 隊長、一生ついて行きます! 世の中、ただでさえ落込むことが多いんだから、明るくて熱量の高い人の側にいることは、とっても重要です。いや〜 ユキ隊長、ありがとうございました。

さぁ,今週も頑張っていきましょう! 今日も意識の高い系グリーンランド犬で。脇目もふらずソリを引く。放射状につなぐのがグリーンランドのスタイルで、カナダなんかは縦列なんですよ。