死んだ作家の本はアマゾンの中古で買う |
でも正直読み始めてから一気に後悔した。なんというか、恰好つけた文体がいちいち私にはうっとおしく思われるのと、女を女と呼び名前をつけないところなど、まぁ、男尊女卑もいいとこ。考えてることは呑むこと、寝ること、セックスのみ。ノンフィクションなんだかフィクションなんだか分からないところが卑怯だし、とにかくかったるく話は進む。また角幡さんの書評にだまされちまったぜ…と正直ちょっと思う。
しかし。途中からいきなり面白くなった。途中、釣りに出かけ、新聞を見て再びなぜか古いたち再び旅?(取材?)に出かけようという気持ちがムクムクと頭を持ち上げてくるくだり。
「あなたのお友達なんかどうしてるの?」と女に聞かれ、答えるシーン。「近頃めったに会わない」としながらも、そのあとのセリフが良かった。
「大学にのこったのは助教授になってる。父親の会社をついだのは社長になってる。新聞社ならデスクとか次長とかだね。みんな太るか禿げるかで、顔型がすっかり変わってしまって、見分けもつかないよ」
「会えば病気かゴルフの話だね。糖尿や血圧なんかがいい。病気の話をはじめるといきいきしてくる。そうでなかったら戦争中、子供のときに豆カスやハコベを食べた話、これもいきいきできる。無限に語れるね。病気と豆カスの話をするなといわれたら両手を縛って川へほりこまれたようなもんだ」
「豆カスの話はいいな。夢中になるよ。おれたちの世代の絶対不可侵なるものといえば豆カスだね。豆カスが聖域なんだ。ほかに何もない」
この周りの人間をバカにするような、しかし孤高な感じはなるほど!と思った。これは戦うオヤジたちが共感するのも無理ない。私も共感する。過去のことしか考えておらず前を見ない連中は面白くない、と言っているわけなのだ。
が、でもこれって著者の子供っぽいところというか、カモメのジョナサン的なところで、これって同窓会みたいな場では、そこにいる全員が思っていることに違いないのだ。それぞれに「現在の事」もかかえているのだろうけれど、そんなの説明してもこいつらには分からないだろう…と言う事なのだ。それはみんながみんな考えているに違いないのだ。だから共通である過去の話題に終始する。著者だけの話ではない。…と、まぁ、それはさておき。
そこからは妙に面白くなりグイグリと引き込まれた。最後の20ページくらいだけど(笑)
いずれにしても開高健に詳しいおじさんに確認したところ、やはり私が手にした本が良くなったらしい。「オーパ」や「日本三文オペラ」とか派手なやつを先に読めば良かったのかも。
ただ文章に迫力があり説得力がある(こういうのを文章が上手い、というのだろうか)のは事実だと思った。っていうか、巨匠にたいして私も失礼だよなぁ! またもう少し何冊か読んでから出直します。私にはまだ開高健を語る資格はないわな。またこういうカッコつけたおっさんたちも、私みたいな粗暴で見た目に気を使わない女が大嫌いである(笑)