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2016年7月4日月曜日

押川剛『「子供を殺してください」という親たち』を読みました。

ショッキングなタイトルだ。最近本屋のノンフィクションの棚が好きでよくチェックしているのだが、そこに行くとこういう煽動的なタイトルの本が並んでいるわけですよ。で、ついつい買ってしまう。さすが売れている本だというだけあって、テンポよく、興味深く読むことが出来ました。

この装丁も上手いよね… 可愛い男の子の後ろ姿。ありえないだろう、子供を殺してくれ、なんて…と誰もが思うだろう。

NHKなどによると介護殺人は2週間に一度起きているという事だが、この本の前半は、家庭内に大きな問題をかかえた家族の実際のドキュメントが多数収録されている。家族という閉じられた中で、こんなことが起きているのかという衝撃の事実に目を覆うばかりだ。確かに実際に殺したいと恨みつらみが蓄積するのは閉じられた環境の中だ。「誰かを殺したい」と思うほどの恨みを抱えるなんて、普通の人なら滅多にないが、抱えてしまう可能性は誰にでもあることだ。が、さらに実際にその一線を越えてしまうというのは、これは、もうあってはならないことだ。いったいどういうことなのか。

すさまじい。すさまじい家族の肖像がいくつも描かれている。いわゆるパーソナリティ障害、アルコール中毒など、これは病気である、と認識して、症状がエスカレートしてしまう前に、とにかく早い段階で医療に結びつけるしか出口はない。部屋から出てこないすごいゴミためのような部屋に住む40代の娘、お風呂にも何日も入らないのだという。アルコール中毒で家族に暴力をふるい職場でも問題を起こし妹に金属バットでなぐりかかる息子…などなど。けっこう裕福な家庭の子も多い。それでも年齢が若いうちは学校に通い、就労も出来ていることも多いそうだが、年齢が重ねるほど、症状は悪化する。こういった事例は特にここ10年の間で非常に増加しているパターンだという。家庭内暴力がもはや家族を殺害するレベルにまでなってきている、ということ。そして浪費の度合いも生半可なものではないと。1,000万単位の財産を使い、かつ何100万単位の借金を負い、年老いた両親の年金まで奪ってしまい生活がもうなりたたない事例もある、とのこと。状況は切実だ。

こういった状況におちいった場合、まず大事なのは、冷静な社会的かつ閉じていない健全な判断力なのだが… そういう判断力は、こういった家族はすでに失っている。そして状況がどんどんエスカレートし、近隣などとの刑事事件に発展し、酷くなれば殺人事件にまで発展し、そして初めて世の中はやっと動き始める、というわけだ。それでは遅い。

第1章ではそういった家族が山ほど紹介されるが、まぁ、ひどいというか…なんというか…いやホントに目を覆いたくなる。…と言いながら、この本を私なんぞは、ワイドショー観るみたいに興味津々で読むわけなのだが… 先日の映画「葛城事件」じゃないけど、ホントに家族の内部というのは…ホントに凄まじい。

引きこもりになってしまっている人、アル中もそうだけど、そういう人は早くそれを医療の場に引っ張りだすことが必要なのだ。が、その医療も、安倍政権のおかげだかなんだか、2014年の法改正で3ケ月以上の入院が難しくなり(まったく死ね、と言っているのだろうか…。世の中間違っている!)、薬などに頼るばかりの医療体制も問題だと著者は指摘する。せっかくこの先生が、医療と問題のある本人をつなげても、中途半端な結果となり、根本的な解決には向わない。

この本を読んで感じたのは、いや、これホント大問題でしょ。家族だけでどうにかできる問題じゃないでしょ、と。そういう事だ。日本はもう1人の人間をも取りこぼしてはいけない。こういう病的な家庭を放置すれば、そのリスクはあまりにも膨大だ。これは家族の問題ではなく、社会の問題である。それが刑事事件にまでつながり、ましてや殺人まで起してしまうまで放置しているのは、社会がいけないのだ。1人1人の人間をなんとしてでも救済していかないと、それは重大な問題や犯罪につながってしまう。1つ1つのケースはまちまちで、複雑だ。それにしても社会的コストとは良く言ったもので、これはコストだ。税金みたいなもんで、こういう問題は誰にでも起こりうる。子供という次の世代を担う人間がいる家庭は、社会が全力で応援していかないといけない。

また著者いわく、警察OBで何か組織を作るのがいいのではないかという提案もしている、と。現行のシステムおよび、この先生が運営しているような民間の組織では限界がある、とも。

ってなわけで、この先生に興味を持ち、公式ブログに行ったら、イメージと全然違う人で、ちょっとびっくり。なんかちょっとヤンキーっぽくって引いてしまった(笑) ま、それもキャラクターなのかもしれないけど、この本から受ける印象は、もっと上品な落ち着いたカウンセラーという印象だったので、ちょっと驚き。自分のことを「オレ」とか言っちゃってるし、見た目もなんか…??? ふふふ…でもそうよね、ちょっと親近感持ちました。

こちらの東洋経済の記事も必読。このあとに読み出した「脳が壊れた」についても、実は似たようなポイントをついていて、これまたドキドキ。感想は読み終わってから書く。

PS
なんかこういう本を読んで、それが良かった…という話をすると、すぐ批判的なことを言う人があらわれる。あのセンセイのあの説は間違っている、とか、どうとか。この先生と同じ活動をしている人ならともかく、素人が何を言うかとも思うが、世の中には、そういう有り難いアドバイスをこっちが望んでいるわけでもないのにしてくれる人がたくさんいるわけだ。でもそんな風に人の批判ばかりしていて、行動しないとホントに世の中、何も始らないよ、と思う。

先日赤羽で飲んでいて「企業年金貰える人はすごい」という話になり、大きな会社を早期退職し、若いのに働いてない友人がいる、という話で盛り上がったのだけど、うーん,そういう人とか、こういう社会的な仕事を手伝ったり出来ないもんかね。フィンランドとか北欧の国では、健康で動けるのに社会に貢献していない人は白い目で観られる(主婦という選択肢がないのも特徴)。健康で時間もお金もたっぷりある人間を無駄に遊ばせている余裕など、社会にはないのだ。そういう意味においても、何度も書くが、もう日本は1人の人間も取りこぼしてはいけない。遊ばせておくのもよくない。それが改善できれば世の中はきっと良くなる。私も今の仕事をやめたら、社会的にもっと具体的に役にたつ仕事がしたいな。それにしてもこういう仕事をするということは精神的にも体力的にも、ものすごく強くないといけない。それだけでもこのセンセイは尊敬に値する。