映画「誰のせいでもない」を観ました〜



ヴィム・ヴェンダースの新作「誰のせいでもない」試写で拝見しました。ありがとうございます。

いや〜なかなかリアルで重厚な2時間でした。カナダの郊外の田舎町で起こった「誰のせいでもない」事故。それが大きく人の運命を変えてしまう、というもの。事故が起こってからの12年間。係った人たちの12年間を断片的に綴って行くというストーリー。

俳優陣…圧巻です! なんといっても主人公のトマスがいい。ずっと罪悪感に悩まされながらも,職業においては、彼はどんどん成功していく。でも常に影をたたえた、そして大きな事故に遭遇にしても同様しない妙に感情の揺れが少ないミステリアスな人物になっていくんですよね。「私はこんなに震えているのに、あなたはなんでそんなに落ち着いているの?」と叫ぶ、彼の新しい妻。そうそう、新しい妻もいいけど、その連れ子ちゃん(8歳くらい?)のセリフが妙にするどくて、結構な存在感をかもしだしていたのも面白い。

彼を通りすぎていく女性たちは結構したたか。というか自然体で人間的です。なんというか、そういう部分も含めリアルな映画でした。資料によれば、ヴェンダース自身は女性は強い。特にゲンズブールが演じるシングルマザーのケイトについては「強くて1人で生きて行けるタイプの女性だ」とも発言しています。なるほどねー。

私は普段はパパ・ゲンズブールをはじめとして、バーキンとか彼を囲む女性たちとの世界は、あまり好きではないのだけど、この映画における彼女の存在感はちょっとすごいな、と思った。親の七光りじゃないってことでしょうか。なんだかんだ言っても彼女も45くらい? 

そしてなんと脚本はノルウェー人なんだって。巨匠ヴェンダース自ら発見したという本。

何というか,タンタンとした感じだけど重厚な作品でした。最期はなんとなくというか希望を持てるのかな…という終わり方に思える…のかな?…これ? 悩ましいところですが、でも結局この主人公、生きているからには、この事故と一生係って行くということなんだと思います。そこから逃げるわけにはいかない。

そしてその分、彼の書く作品が良くなるってのは、やっぱりあるのかもしれないなぁ! ミュージシャンの話を聞くと、やっぱり人生が辛い時に良い作品が生まれるって実際あるものね。妻を失って「レイラ」を書き、息子を亡くして「ティアーズ・イン・ヘヴン」を書いたクラプトンが良く例に出されるけど… まぁ人生はつくづく平等な幸せと不幸せで出来ているんだなぁと映画を観ながら考えたりしました。

あ、そうそう、この作品、私は2Dの試写みたけど、3D作品でもあるんだって。確かにちょっと自然が綺麗なロケシーンとかカメラがぐうっと引いて行くシーンとかあって、3Dで観たらすごいかな、というシーンもあり。ヴェンダース監督は、この前の作品、ダンサー、ピナ・バウシェのドキュメンタリー映画で3Dの味をしめちゃったらしいですよ。3D映像で観ることで俳優たちの心の揺らめきみたいなものが伝わる、ということらしい。

11/12からヒューマントラスト他でロードショー。またキネカ大森ではヴェンダース監督の特集上映もあるようです。ご存知だろうと思いますが「パリ、テキサス」「ベルリン天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」など数々の名作を世に出して来た巨匠ですから、こちらも楽しみです。

あ、そうだ、そういえば最初の方でシャルロット・ゲンズブールが、子供を寝かしつけるのに歌ってたのがスコットランドのトラッドだった。あれなんて曲だったっけ…  Mist Covered Mountainだったかな… ビル・フォーサイスの映画「ローカルヒーロー」で使われたこともあるから、映画関係者の中では有名な曲とされているのかもしれない。


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