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2016年9月19日月曜日

角幡唯介さんのトークイベントにお邪魔しました!「『漂流』で描きたかったこと、描かなかったこと」


またもや行ってきました。角幡さんのトークイベント! 面白かった。これまた新しい発見があり。聴き手は川内イオさん

角幡唯介さんのファンになってからというものの、行けるイベントには必ず行っているのだけど、今回のが一番リラックスした感じで内容が良かったかもしれない。それにしても、こういう「ファン活動」って楽しいねぇ〜! イベントがあると言っては参加し、何かが発売になると言っては発売日を指折り数え… なので、今日もワクワクで参加してきました。

お話をうかがいながらメモったものがあるので、多少ここに紹介していきますが、私の理解が間違っていたらすみません。あくまで私のメモからということで…

まず今回の作品は、自分の探検ではなく、取材をして書いているという点が他の角幡作品とはだいぶ違う。

(以前出した黒部ダムのノンフィクションともまた違うのでしょうか…という質問に答えて)あの本はあくまで新聞記者的立ち場から書いているので、今回の「漂流」とは全然違う。新聞記者とは事件なら警察(副署長さん)、何かあれば学者とか、その筋のオーソリティに裏を必ず取る。自分の中では善悪の判断はしない。自分の判断は記事にできない。今回の作品は、それとは違って、すべて自分の判断で海の世界を書いている。そういう書き方をしないと彼らの、建前も何もない、あからさまな、自由な海の世界は書けないと思った。

例えばあの地域においては、過去に選挙で買収があからさまに行われていたなど、外部に知られていない恥部もたくさんあり、今回この本で多数それがあかされている。別の港で女を買った、とか。でもそういった事も含めて書いていかないとノンフィクションとしての力がなくなる。1名をのぞき実名で書いたのも、そういう理由がある。それによって彼らの世界が伝えられるという自信が自分にはあった(←かっこいい!!!)

この世界で生きる人たちに対しては「すげーな!!」という思いがある。自分のように陸で生きる人間とは全然違う。畏敬の気持ち。

今回本が出て、彼らから手紙をもらった。お礼の手紙で「立派な本になってありがとうございます」ということなんだけど、彼らはきっと実際はこの本を読んでいないと思う(会場笑)。でもこの本、装丁がすごく立派だから…(会場爆笑)実は今度佐良浜にまた行くんだけど、心の中は何か彼らに言われはしないかとドキドキである、とのこと。

この本を他の編集の人に読んでもらって感想をもらったのだが、本当に途中まで本のエンディングが見えないと言われた。いったいどこで、この物語の決着がつくのかが分からない、と。でも途中を書いている段階においても、角幡さんの中には、うすぼんやりとだけど考えがあって一環して書いているつもりではあった、とのこと。

そもそもこの企画は新潮社の担当編集から「漂流」をテーマに書いてみませんか、と提案された事から始った。日本においては、過去かなり壮絶な漂流事故がいくつかある。特に5、6名一緒に漂流して、次々亡くなって最期1名になって助かった人の話とか(『たか号漂流』)、ダイバーも結構取り残されて漂流したりしているし…。その新潮社の担当編集者は、そんなサバイバル的な要素が角幡さんの探検に通じるものがあるので、そんな内容の話を期待して提案してくれたのだと思う、と。

が、取材していく過程で、海難事故の背景である深い日本の文化にかかわる話なども盛り込んだ上で、この物語を書き上げたいという気持ちになった。

(取材は大変でしたか、という質問に)まず電話案内でその人の名前を言って住所をある程度予測したら、そのまま訪ねて行くのが一番いいんです、と。電話をかけてもいいんだけど、電話をかけて断られてしまうと、もうそこで終わり。それ以上は訪ねてはいけなくなる。

なので、いきなり訪ねていくのが一番いいんだけど、それは、ものすごく時間がかかる作業。訪ねていっても不在だったり… 

最初の沖縄取材の時は、(本になるか確信がなかったため)1泊1,500円くらいの部屋に泊まっていた。広くて何もない、ちゃぶ台しかないようなところ。また車ではなく経費節減のため原付で回った。そして取材していく中で「行方不明者ってこんなにいるんだ」とびっくりした。他にもフィリピンで殺された,どこそこで死体が見つかった…などなど。フィリピンの海賊島の話もあり、海の世界の闇の深さを知った。それを知ることによって、これは書けると確信し、二度目の取材からは東横インに滞在した(会場笑)

(ヨットでニューギニアにも行かれたことだし、海の世界にはもともと憧れがあったのでは?という質問に)もともと海の世界への憧れはあった。ヨットやシーカヤックとか… でも学生には海の探検は経費が高すぎる。学生にはハードルが高かった。なので峠恵子さんが「冒険歌手」で書いているニューギニアへの探検に参加した。でも経験してみて、海の探検は自分の船で行かないと意味がないなというのを痛感した。

船酔いも大変だけど、船酔いは3日もすれば良くなる、というのは、その時経験した。

海の世界は細かいことに動じない、ずさんで大雑把な世界だ。そしてそれが事故につながった。本村さんの漂流について、映画を撮りたいというチームもいたのだが、本村さんが帰国後、(違反行為、無免許などで)書類送検されちゃったりで、諦めて引き上げて行った。本村さんじゃなくても、多くの漁師が、たくさんの違反行為をしている。

狩猟採集民は言葉が下手。なので取材はたいへん。心に残ったのは、海のもくず…という表現。生と死のあまりにも薄い感覚。過去に対する記憶のなさ(過去に関心がない)、起きたことを記録したり、外の人に伝えようとする気持ちもない。まさにすべてが海のもくずとなって消える…そういう世界。

(この本の中で本村さんの二度目の漂流の結論は出ていないわけですが、角幡さんはどう推測しますか、という質問に)きっと大きな船に衝突してしまったんではないかと推測している、とのこと。ホントに大きな海原で、巨大な船が小さな船にぶつかって、小さな船が沈没しても、大きな船は気付かないでそのまま行ってしまうことも多いのだそう。

その他マグロ解体のすごい動画とか(流血騒ぎ!)、あとここには書けないオフレコのこととか(笑)、いろいろあってやっぱりトークイベントは最高に面白いなぁ、と思ったのでした。いや〜、角幡唯介さん、川内イオさんありがとうございました。

最期に「角幡さんは漂流に興味がありますか」と聞かれて、角幡さん「選択肢としては“あり”ですね」と言ってらしたのが笑えました。自分ではどうしようもないという状況に「興味がある」のだそうです。

しかし10/30からいよいよ北極に行ってしまう角幡さん。お帰りは4月くらいになっちゃうそうで、その無事はいつ確認できるんですか?と言ったら、4月にブログのアップデートで分かると思う、とのことです。うううう、どうかお気をつけて。極夜がテーマの新作も、とてもとても楽しみにしていますから。

角幡さん、次のトークイベントは名古屋なんだよね… どうしようか迷い中! でも今度のトークはなんといっても「グリーンランド」だし私が行かなくてどうする!という気持ちもあり。自分もグリーンランドに行ったことを思えば,名古屋なんてちょろいわな…終るのも日帰りできる時間帯だし。ただしロビンのツアー前でバタバタな可能性もあり、要検討。



PS
そういえば、会場から「小説は書かないんですか」という質問が飛んだ。質問をした方(初老の男性)は角幡さんの文章力にいたく感動し、これだけ筆力があれば、すごいものが書けるのではないかと想像したのだと思う。それについては「今はどうやって書いていいか分からない」「ノンフィクションは事実を書いて行けば良いから… でも小説は書きたいと思うことに磨きをかけて飛翔させないといけない(って言い方だったかな?メモ取ってないからすでに不明)それが出来るのか、うまく想像できない」とのことでした。