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2017年2月26日日曜日

石川直樹「最後の冒険家」を読みました!

読んだ。読んだよ! 実はこの本、なんどもAmazonのバスケットに入れてはキャンセルし、これ以上、冒険本読書のエリアを広げてどうする…と買おうか買うまいか散々悩んでいたのだが…。

先日,某現場で一緒になったとある方から薦められ、ついにポチった。そして読んだよ。

ふむ。読み始めたら止まらない…かと思ったら実はそうでもなく、確かにすごい話でしたが、うーん、どうも文章にパンチがないんだよなー、パンチが! とはいえ、これ、すごい世間の評価は高い本である。開高健賞も受賞している。

角幡さんと同じ歳で、早稲田の探検部在学時代にすでに交流もあったという著者の石川直樹さん。ルックスがかっこいいせいもあって、角幡さん,相当意識していたという話を聞くが… でも、これじゃ文章力が全然違いすぎるでしょ。角幡さんの方がかっこいいよ! ていうか、文章のスタイルがまるで違うんだから、そんな風に比較する事自体間違っているのだけど。(ちなみに誤解のないように言っておくが、石川さんの文章、すごく読みやすいです。スイスイ読めちゃう)石川さんの他の本を読んでないし、他の活動をよく知らないからなんとも言えないのだけど…同じ神田さんを書いた話なら角幡さんの「探検家の憂鬱」に入っている短いエッセイ「グッバイ・バルーン」の方が、私はより感情移入できた。

とはいえ、やはり神田さんの最初の太平洋横断に付き合った著者だけあって、そのへんの描写は圧巻である。特に気球が8000mの上空に突入し、真っ青な音のない世界に突入した下りはすごい。そこはさすがにグッときた。でも太平洋に着水し、死にそうになったところについては「たか号の漂流本」の方がすごかった。角幡さんが書いた「漂流」も…となると、描写うんぬんよりも、起こった事件の凄まじさの方で判断されてしまうんだ、このテの本は。

そして…この神田さん本人にも私はあまり感情移入できなかった。なんでだろう。たしかに公務員しながら夢を追い続ける彼の姿は心を打つ。が、どうも彼の探検は自分勝手な思い込みとしか思えないのだ。着水したら絶体絶命の藤のゴンドラの気球じゃ、どう考えても駄目でしょ。そもそも装備から何からまったくもって100%じゃないのも… なんだか単に予算不足で準備がひどく悪いようなだけに思えて… なんか違うと思った。そして、そんな危険な冒険に、同行する人を捜したりしちゃダメでしょ。本によれば石川さんに断られ、角幡さんに断られ、結局1人で神田さんは旅たった。そして二度と戻って来なかった。

厳しいかな。でもちょっと彼の太平洋飛行は…。勝算がないのに旅だってしまった無謀な行動のような気もするんだよね…。でも最後に最初のトライ時の2004年の冒険時のゴンドラがとある島で見つかったのは、すごいオチだった。

探検家/冒険家はそもそも理解することが難しい。角幡さんも高野さんも探検家だが、でも彼らはこういう無茶はしない。高野さんは探検というが、単に流れに運ばれていくだけで、あえて危険を試みることはしない。というか当然危険はなるべく避けようとしている。角幡さんも、あくまで「知的情熱の身体的表現」(チェリーガラード)という域の中での活動だ。角幡さんの場合は、ちょっとしたおっちょこちょいや、準備上の手抜きで危険な目にあうことはあるのだが、でもこういう危険は犯していないように思う。

いずれにしてもこんな危険なチャレンジに100%で装備していないところが… すでになんだか違うように思う。

神田さんという人は、植村直己にちょっと似ているところがあって、人間として必要なたがみたいなものが、きっと外れているのではないかと思う。そしてそんな中で冒険活動のとある一線を超えてしまった、そんな事なのかもしれない。例えば植村直己。植村さんについては、奥さんが書かれているように最終的に焦ってしまいマッキンリーで遭難してしまった…という評価があてはまるように私には思えるのだ。神田さんもそんな感じだ。最後の最後にもとからあったあやういバランスを崩してしまった、と。

いや、私に何が分かるというのだろう。ただ家族の人がいる以上、悪口を書くわけにはいかなかったのか。また死んだ人を悪く言うのも…抵抗があったんだろうな。でも著者が死ぬほど神田さんを尊敬している…という印象も受けなかったし、こんなんじゃダメだと批判するでもないのが、なんか…パンチが足りない原因かな、と思った。いや、神田さんが行方不明になって時間が充分にたってないから、著者の中でも整理が出来ていないのかもしれない。それでも記録に残すべくしてこれを書き上げたのかもしれない。でも、そんな遠慮みたいな部分もこの本にパンチがない理由の1つかもしれない、と思う。

いずれにしても、この本を読んで「石川直樹すげー、もっと読もう」とも思わないし、「神田さん、すごい、もっと知りたい」と思わなかったのは事実だ。私の中の探検熱も、徐々に引いてきてしまった、ということか。

しかし角幡さんは生きて帰ってくるのだろうか。帰ってくるとしたら4月くらいかな…と思っているのだけど。一番最初に生還が確認されるのは、ブログのアップデートなんだろうか。最後にお会いした時は、そんな風におっしゃってはいた。そのブログは「対談本が文庫になりました〜」で止まっており、北極にいることすら書かれていないという放置ぶりだ。そんなドライなところがいかにも角幡さんだよね。

PS
とか、書いてたら角幡さんのブログが更新された!!!   良かった、ご無事で!   でもなんだか早すぎる帰還だ。ウヤミリックは無事なんだろうか。