和田静香さんの回の最終回になります〜。そしてICE STATION講座もこれで終了。明日番外編でスコットの日本の思い出エッセイを掲載します。いよいよこの日曜日にメンバーが来日となりますよ!(でも全員揃うのは6日月曜日なのさ… ややこしい)
和田「本当にいい思い出。いい思い出で終わって良かったかな、とも思う。逆に2007年とか2008年とか無理して行かないで良かったのかな、と」
「とにかく、彼らについては、いい思い出、たのしい思い出がたくさんある。彼らが解散したのは悲しかったけど、最終的にこんなにいっぱい仕事させてもらってさ…」
「仕事も最初は別のライターさんの独占状態でさ、私なんかが出て行く場所なんて全然なかったの。でもその人がとある原稿を彼が落としそうになって…締め切りなんてとっくに過ぎてて、ホントにやばいって時にレコード会社が「なんとか明日までに」と言ってきて、私が“このライナーなら4時間で書けます”って言って、書いた事もあった。で、ホントに4時間で書いた」
のざき「かっこいーーー!!」(爆)
和田「なんの資料もないけど大丈夫?って言われて“構いません”って」(爆)
のざき「すっげー、かっこいい!」(爆)
和田「書いて、出して、それからは、ずっと私にR.E.M.の仕事を振ってくれたものね…」
のざき「そりゃそうだろうね…。でもライナーノーツの執筆ってさ、ライターとしてはミュージシャンの仕事を手伝える最高の機会なわけじゃない?」
和田「CDに名前が載るんだもんね」
のざき「最高のコラボレーションというか、仕事仲間になれるわけじゃない?」
和田「そうだよね」
のざき「今回の来日についても、そっち周辺の音楽ライターさんとか連絡とってみたんだけど、返事もよこしゃしないよね。あの辺の人たちにとっては、レコ社が広告出さなくなったタイミングが縁の切れ目って事なのかしら…」
和田「本当にR.E.M.には1つ1つ思い出があるよ。ただ好きっていうじゃないんだよね」
のざき「ICE STATIONもどうやってプロモーションするべきか、今、すごく悩んでるんだけど、例えばR.E.M.のファンの人たちが、こういうメンバーのバンド以外でのプロジェクトをどう思っているかだよね。本当ならバンド活動してほしい、って思うんだろうからさ」
「先日もこの件で五十嵐さんと話していて気付いたんだけどさ、例えばピーターなんかはさ、ホントに音楽大好きじゃない? あぁいうところをR.E.M.ファンの人も分かってあげてほしいんだよね…。例えばR.E.M.はミリオンどころか、すごい数字を売るバンドでさ、で、ピーターやマイクはそのバンドのオリジナル・メンバーでさ、それはものすごい事だよ。でもその事以上に、ピーターは若いバンドでも年寄りバンドでも好きだと思えばライブを見に行き、レコーディングやライブを手伝い…っていう、で、上手くいけば新しいバンド作っちゃう…みたいな、そんなピーターの音楽好きなところを認めてほしい、って思うのよね。まぁ、リスナーにとっちゃ好きなレパートリーが聞けないから関係ないことなのかもしれないけどさ。リクエスト叫んでもいいし、カバーもやるだろうから… そういうところが伝わるといいよね、って事。スコットとかもそうだけど、ピーターと損得抜きの“音楽仲間”っていう、あの感じがホント好きなんだー、私」
和田「マイケルの声がなくてもR.E.M.ってすごい良いバンドだなってのは1つ言えるよね。彼らのドキュメンタリーがあって、リハーサル・シーンが出て来るのだけど、そこではマイケルは歌わず、バンドが演奏しているのを隅で聞いているのね。で、バンドだけの演奏を聴き終わるとマイケルが言うの。“ホントにすごいいいバンドだ”って。“ヴォーカリストがオレじゃなくて、ヘンな奴だったとしてもオレは絶対に最高のバンドだと思うよ”って言うの」
のざき「きゃーーーっ♡♡♡」(爆)
和田「私もすごくそう思うのね。そういうことをみんなにもっと知ってほしいよね」
のざき「とはいえR.E.M.イコール・マイケルだし… あのカリスマ性あってこそのバンドだって言う事はあるよね。でも、よくあの4人が出会ったなぁ、という感じはするね」
和田「しかもジョージア州アセンズでね…」
のざき「田舎なのにね…」
和田「(R.E.M.の)マネージャーのバーティスっていい人でさぁ…」
のざき「会ったことある? さすが和田さんバーティス、知っているんだ!」
和田「実は2004年にアメリカに見に行った時に取材したくて、ずっとオファーしていたんだけど全然ダメで… で、直訴しちゃおうって思って勝手にお願いしようと決意したら、バーティスがその辺歩いていたからメモを渡してお願いしたんだけど… で、結局インタビューは出来なかったのよ。でもあとからCDとか送ってきてくれた」
のざき「いい話!」(爆)
和田「そんな人いないでしょ、普通“レコ社通せ、ばかやろう”ってなもんじゃない? しかもちゃんとLimited EditionみたいなボックスのCDでさ… すごい事でしょ?」
のざき「R.E.M.はスタッフが良いってのは、いろんなところから聞くね」 和田「バーティスこそインタビューしたいなぁ。それこそ田舎の弁護士だったわけだから…」
のざき「ピーターのレコード屋のお客さんだったみたいだね」
和田「でも彼らをあれだけのものにしたのだから…。1バンドがあんなにお金を儲けられたってのはかつてなかったわけだし、おそらくこれからもないわけだから」
のざき「そうだね、これからも絶対にありえないね…」
和田「それであの人はいったい何をしたのか…、何をしなかったのか… すごく聞きたいね」 (結局それでインタビューをすることになった。結果はここ)
のざき「本とか読んだけどさ、感動だよね。まぁ、あの本の頃はまだジェファーソン(R.E.M.の初代マネージャー)がいたわけだけどさ…」
和田「ジェファーソンは女子社員に対するセクハラ疑惑でクビになったんだよね。たぶん有能な人だったと思うのだけど、それでもクビにしたってものすごい英断だったと思う。普通は女の方をクビにしてお金を渡して黙らせるでしょう。じゃなくて、ジェファーソン・ホルトの方を切ったっていう事が、すごい」
「バーティスに会ったのはワシントンDCとニューヨークに行った時かな…で、ワシントンDCで会えたから“すみません、ワーナー通してインタビューのオファーも出しているんですけどダメだって言われたんですが…”って言ってアプローチしたのよ。ちょうどブッシュとケリーの大統領選挙の時だった。で、どうしても興味があるから、って言って。これまでもこんなに記事書いてきました、って伝えて… できればこのあとニューヨークにも行くので、そこで時間がもらえれば…って。そしたら受け取ってくれた…」
のざき「でもマネージャーの顔とかよく分かったね」
和田「顔はね、ファンサイトのMurmurs.comとかに登場していたのよ。だからそこを見ている人は当然知っているわけですよ」
のざき「すごいねーー!」(爆)
和田「そしたら1週間か2週間で事務所からいろいろ送られてきた…」
のざき「いい話だわ…。バーティスさんってノルウェーのICE STATIONには顔を出してるんだよね。あんな僻地へさ… しかもバンドの課外活動というか…仕事ではないわけじゃない?」
和田「友達だからだよ」(しんみり)
のざき「ホントそうだよね…」(妙にしんみり)
和田「常に一番の友達だから側にいてあげる、っていうかね」(キラッ)
和田/野崎「きゃーーーーー❤❤❤」(キラキラッッ)
和田「彼は常にバンドの一番の友達なんだよね。とにかくこのDVD見てもらえれば、もうバンドのことはバッチリ分かるよ。すごくいい内容だから絶対に観て」
のざき「それにしても、すごいバンドだよね。ミュージシャンの方もマネージャーを信じてきたわけだから」
和田「なんか人を信じる力が強いんだよねー」
のざき「いいね、それ!」
和田「なんか悪い人がいないんだよね…。そういえば、私が海外でインタビューした時とか、通訳いなくてさ…、とにかく時間がないから… ラウンド・インタビューで、ジャーナリストがチームになって、私は明美ちゃん(中村明美さん)と同じチームになれたら良かったんだけどなれなくて、シンガポールの人とスウェーデンかなんかの人と一緒になったの。そっちの人たちはもう英語ペラペラなわけよ。私だけが英語できなくて質問を英語で書いたものを持っていって… そしたらマイケルがさ、自分でその質問を読み上げてインタビューを進めてくれて…」
のざき「きゃーっっ(爆)すごい! 頭いいね。そうだよね。録音に残せば、あとはプロの人が後から整理してくれるものね」
和田「そうそう… だから質問を読み上げてくれてさー」
和田/のざき「優しーーーーーーーーーっ❤❤❤」(爆)
和田「あんな大スターなんだよ!」(爆)
のざき「泣ける!」(爆)(涙)
和田「もうホントに申し訳なくってさ、私、英語が下手で…って言ったら“いやいや”とか言ってさ…」
「R.E.M.本当にみんないい人たちだった。特にマイケルはモゴモゴしゃべるから何言っているか分からない時もあったんだけど… ピーターとマイクならはっきりしゃべるから私でも理解できるんだけど」
のざき「それはいい話だわ」
和田「でもその時ピーターが、“オレたちが何を歌ったって誰も気にしてくれない”って 言ってたのよね」
のざき「ピーターってインタビュー読んでると、そういう事、言う時あるよね」
和田「ピーターがもしかすると一番繊細だよね。あ〜〜、それにしても久々にR.E.M.の話した! 最近、相撲の話しかしてないから…(注:和田さんの相撲本がもうすぐリリースされますよ!)、最近口をついて出て来る言葉は“白鵬”とかだからさ」
和田/野崎「はははははははははははは」(爆)
和田「でもR.E.M.みたいな成功例はホントにないよね。これだけ成功したロック・バンドっていうのも… だって何もないところから始めているんだよ」
のざき「そして常に活動が健康的というか、やりたいことはちゃんとやれてる、ってのが素晴らしいよね。今回もこんな小さなツアーにも来てくれるし。普通あんなに大きくなっちゃうと、そういう自由は放棄しなくちゃいけなくなるからね」
和田「自分たちも好きなことをやり、人を喜ばせ、そしてお金も稼いで… ありえないよね。今後も絶対にあり得ない。確かに90年代とかオルタナティブの盛り上がりがあったけど…。パール・ジャムは長くやっているから稼げているかもしれないけど、R.E.M.ほどには…ってのはあると思う。ニルヴァーナとか成功したけど死んじゃったし…」
のざき「死んだら駄目だよね、死んだらね…」
(ここで頼んだモツ鍋をあれこれいじる)
のざき「そういやワルシャワにも行ったんだよね…」
和田「すごい良かったよ。ワルシャワでのライヴって、R.E.M.のライヴの中で1番目か2番目に良かったかも。最初チケット取れなくてさ…当時Ticket Mastersとかないから…。ポーランドの航空会社のオフィスまで行ったりして… ワルシャワのプロモーターにメールしても返事がなくて… でも当時合気道を習ってて、合気道の先生の友達の友達みたいな人に頼んだら、その人たちがすごく良い人たちでね。日本に駐在していたことがある人で… 日本の学校にも通ったことがあって日本語ペラペラで、その子が一緒にコンサートに行ってくれてさ、最高に良かったの。あの時、アジア人、私一人だったのよ。そんな思い出もある。それが2003年」
のざき「歌は世に連れ…じゃないけど、いろいろあるね。音楽を聴いていただけなのにね…」
和田「なんだろうね、音楽って不思議だよね」
のざき「人間をつなげる、っていう機能があるんだよね」
和田「でもチケット売るって大変だね〜」
のざき「ホントだよ」
和田「ウォリスよかったよね。あれ見たらみんな感動するよね。理屈じゃないわ…」 (ここでウォリスの話、仕事の話で熱く盛り上がる。長いので割愛しますが、内容は省略。ただ赤尾さんとピーターのツーショット写真を絶対に撮ろう!とやけに盛り上がったのでした)
和田「でも今回のICE STATIONってどういうプロジェクトなの?」
のざき「そうなのよ、結構分かりにくいよね。あれはそもそも(ポップ・アーティストの)ミシェル・ノアクがノルウェーで始めた企画で、彼女が北極でアーティスト・イン・レジデンスをやった時に極夜の時期で寂しいから、って言って、友達のミュージシャンを北極に呼んだのよ。それが一番最初のICE STATION」
「一方私は2006年にスコットとピーター呼んでから、彼らがまた日本に来たいっていうのを何度も言われていたのだけど、前回のツアーもけっこうな赤字だったし、どうしようかなぁ、ってずっと迷っていた。ところが今、私ナヌークをやっているでしょ? で、あの子たち11月にプロモで呼んで取材させて記事を出すでしょ… でも若いバンドだけじゃコンサートはなりたたないと思ってたのよ。企画として、どうも弱いな、と。で、ある日Facebook見たら「なんだピーターたち北極やってんじゃーん!」ってなって…。そんなわけで2つのプロジェクトをくっつけることにしたわけ」
和田「なるほどー!」
のざき「だから企画として、ちょっと無理があるんだよな。ピーターが環境問題に詳しいかっていうと、そうでもないと思うし…。でもピーター、ノルウェーの北極圏に行った時のドキュメンタリーがあるんだけど嬉しそうだったよ。サーミのミュージシャンと共演して「サイケデリックだ!」とか言っちゃって。ホントあの人、音楽大好きなんだなぁ、って」
のざき「まぁ、とにかく彼らは演奏できるって事ならすごく喜んで飛んで来てくれるわけよ。今回も声をかけたら、すごく嬉しい!って、速攻で返事が来た。それにしてもR.E.M.から2人来る、ってのが、結構すごいと思うんだよね。ベースボール・プロジェクトだって、通常はマイクかピーターかどちらか1人だけなんだから。私はピーターとスコットが来日してくれれば他は誰か来てもこだわらなかったけど、結果マイクとピーターが両方が来てくれるって事になったのがすごいな、と思ってさ。そもそもピーターだけじゃなくマイクが来ればR.E.M.のレパートリーが歌えるしね」
和田「マイケルも来ればいいのにねぇ」
のざき「ははははは。でも音楽活動またすぐ開始しそうじゃない?」
和田「うーん。でもバンドがいないと彼1人では何もできないでしょう」
のざき「コールドプレイと歌っていたじゃん?」
和田「でもあれはコールドプレイのステージであって、あくまで客演だからね。あなたが主役になるのはR.E.M.だからね、ってこと」
のざき「再結成ないっすかね…」
和田「ないだろうな…」
のざき「ないかな…。赤尾さんだったかな、言ってたの… マイケルがやるって言えば、ピーターあたりは文句をブーブー言いながらもやるんじゃないかって。でも私も規模は全然違うけど、あのツアーの辛さってホントダメでさ… 私自身2週間以上は絶対にツアー出来ないタイプだから。気持ちは分かる。もういいでしょ、充分でしょ、って気持ちになるんだよね。なんていうか、あれはやっぱり人間性失うよ…」
和田「普通に旅行するのだって大変だものね」
のざき「あの、どんなにいいホテル用意してもらっても、どんなに豪華なケータリング入れてもらっても、ファーストクラスで飛んでも埋まらないっていうか…」
和田「埋まらないよね」
のざき「その点、ICE STATIONは友達企画だから!(笑)だから、みんなめちゃくちゃ楽しみにしてくれている。自分たちでやるって決めたことだから」
「しかし今回R.E.M.のオフィスの皆さんとメールとかしてて、おもしろかったのは、R.E.M.のオフィスではさ、R.E.M.っていう名前をオフィスの名前っぽく扱うんだよね。バンド名っていうよりも…」
和田「株式会社 R.E.M.でございまーす…ってか(笑)」
のざき「うん、なんていうの…みんなでメールやりとりしてると、“オフィス”っていう感覚なの。“今日、REM寄ってく?”とか、“あれREMに持っていっておくから…”とか。もちろんメールでいちいち句読点を打ったりはしない(笑)。そしてなんというか、パーマネントなチームっていう感覚もあって、すごくいい」
和田「あそこで働いている人たちとかどうしてるんだろうね。あんな田舎で職を失ったら困るでしょうに」
のざき「ホームページには今でも従業員のクレジットがあるよね。ある程度遺産で続けられるだろうけど、桁違いに稼いでいた時期とは明らかに違うわけだしね。でもオフィスで働くスタッフの給料は安いって、R.E.M.本に書いてあったなぁ…。男社会なんだって女は安いOL価格とか書いてあった(笑)。女の人の方が安い給料でも一所懸命働くからね」
和田「ファンクラブとかホントにちゃんとしててさ、デヴィット・ベルって人がいてさ…、その人がいい人で、こちらのどうでもいい問い合わせにもいちいち返事をくれるわけよ。で、返事の封書におまけみたいなシールとか付けてくれるわけ。手紙の世界だからさ!! メールじゃないから! ちょっと頼んだ物が送られてこなくて、どうなっていますか、って連絡したら“大丈夫だよ,安心して!”って返事とともに“シール”!!」 (あとでメール調べたら、このベルさん、まだオフィスにいらっしゃいますね。ICE STATIONのことをR.E.M.の公式ページに載せてくれたのが、このベルさんです)
のざき「だからアセンズを動かなかったのかもね。これがニューヨークに事務所移してたら,全然違ったのかも。地元の人を雇っていたんだろうし」
和田「時代が違うから、と言われたら終わりだけどさ、石坂敬一物語じゃないけど、R.E.M.の小さな事務所がどうやってこのバンドを世界一にして、長く続けられたのかっていうのを知りたいよね。そういう話を聞けたら、すごいよ。だって1バンドがワーナーから80億円だよ。すごい事だよ。どうしたらそういうことが可能になるのかさ。時代が違うと言われればそれまでだけど…」
(鍋をラーメンで締めた後、アイスクリームが食べたくなって、居酒屋の隣のマクドナルドに流れたのであった。和田さん,熱い想いをありがとうございました〜)
★ ★ ★
和田さんの名著の数々。どれもおすすめですよ!
そしてICE STATIONはSUN STATIONとなって白夜の北極に行くことになった。こちらは7月。これはすごい布陣。さすがノルウェー。予算が違う…
★ ★ ★
和田「本当にいい思い出。いい思い出で終わって良かったかな、とも思う。逆に2007年とか2008年とか無理して行かないで良かったのかな、と」
「とにかく、彼らについては、いい思い出、たのしい思い出がたくさんある。彼らが解散したのは悲しかったけど、最終的にこんなにいっぱい仕事させてもらってさ…」
「仕事も最初は別のライターさんの独占状態でさ、私なんかが出て行く場所なんて全然なかったの。でもその人がとある原稿を彼が落としそうになって…締め切りなんてとっくに過ぎてて、ホントにやばいって時にレコード会社が「なんとか明日までに」と言ってきて、私が“このライナーなら4時間で書けます”って言って、書いた事もあった。で、ホントに4時間で書いた」
のざき「かっこいーーー!!」(爆)
和田「なんの資料もないけど大丈夫?って言われて“構いません”って」(爆)
のざき「すっげー、かっこいい!」(爆)
和田「書いて、出して、それからは、ずっと私にR.E.M.の仕事を振ってくれたものね…」
のざき「そりゃそうだろうね…。でもライナーノーツの執筆ってさ、ライターとしてはミュージシャンの仕事を手伝える最高の機会なわけじゃない?」
和田「CDに名前が載るんだもんね」
のざき「最高のコラボレーションというか、仕事仲間になれるわけじゃない?」
和田「そうだよね」
のざき「今回の来日についても、そっち周辺の音楽ライターさんとか連絡とってみたんだけど、返事もよこしゃしないよね。あの辺の人たちにとっては、レコ社が広告出さなくなったタイミングが縁の切れ目って事なのかしら…」
和田「本当にR.E.M.には1つ1つ思い出があるよ。ただ好きっていうじゃないんだよね」
のざき「ICE STATIONもどうやってプロモーションするべきか、今、すごく悩んでるんだけど、例えばR.E.M.のファンの人たちが、こういうメンバーのバンド以外でのプロジェクトをどう思っているかだよね。本当ならバンド活動してほしい、って思うんだろうからさ」
「先日もこの件で五十嵐さんと話していて気付いたんだけどさ、例えばピーターなんかはさ、ホントに音楽大好きじゃない? あぁいうところをR.E.M.ファンの人も分かってあげてほしいんだよね…。例えばR.E.M.はミリオンどころか、すごい数字を売るバンドでさ、で、ピーターやマイクはそのバンドのオリジナル・メンバーでさ、それはものすごい事だよ。でもその事以上に、ピーターは若いバンドでも年寄りバンドでも好きだと思えばライブを見に行き、レコーディングやライブを手伝い…っていう、で、上手くいけば新しいバンド作っちゃう…みたいな、そんなピーターの音楽好きなところを認めてほしい、って思うのよね。まぁ、リスナーにとっちゃ好きなレパートリーが聞けないから関係ないことなのかもしれないけどさ。リクエスト叫んでもいいし、カバーもやるだろうから… そういうところが伝わるといいよね、って事。スコットとかもそうだけど、ピーターと損得抜きの“音楽仲間”っていう、あの感じがホント好きなんだー、私」
和田「マイケルの声がなくてもR.E.M.ってすごい良いバンドだなってのは1つ言えるよね。彼らのドキュメンタリーがあって、リハーサル・シーンが出て来るのだけど、そこではマイケルは歌わず、バンドが演奏しているのを隅で聞いているのね。で、バンドだけの演奏を聴き終わるとマイケルが言うの。“ホントにすごいいいバンドだ”って。“ヴォーカリストがオレじゃなくて、ヘンな奴だったとしてもオレは絶対に最高のバンドだと思うよ”って言うの」
のざき「きゃーーーっ♡♡♡」(爆)
和田「私もすごくそう思うのね。そういうことをみんなにもっと知ってほしいよね」
のざき「とはいえR.E.M.イコール・マイケルだし… あのカリスマ性あってこそのバンドだって言う事はあるよね。でも、よくあの4人が出会ったなぁ、という感じはするね」
和田「しかもジョージア州アセンズでね…」
のざき「田舎なのにね…」
和田「(R.E.M.の)マネージャーのバーティスっていい人でさぁ…」
のざき「会ったことある? さすが和田さんバーティス、知っているんだ!」
和田「実は2004年にアメリカに見に行った時に取材したくて、ずっとオファーしていたんだけど全然ダメで… で、直訴しちゃおうって思って勝手にお願いしようと決意したら、バーティスがその辺歩いていたからメモを渡してお願いしたんだけど… で、結局インタビューは出来なかったのよ。でもあとからCDとか送ってきてくれた」
のざき「いい話!」(爆)
和田「そんな人いないでしょ、普通“レコ社通せ、ばかやろう”ってなもんじゃない? しかもちゃんとLimited EditionみたいなボックスのCDでさ… すごい事でしょ?」
のざき「R.E.M.はスタッフが良いってのは、いろんなところから聞くね」 和田「バーティスこそインタビューしたいなぁ。それこそ田舎の弁護士だったわけだから…」
のざき「ピーターのレコード屋のお客さんだったみたいだね」
和田「でも彼らをあれだけのものにしたのだから…。1バンドがあんなにお金を儲けられたってのはかつてなかったわけだし、おそらくこれからもないわけだから」
のざき「そうだね、これからも絶対にありえないね…」
和田「それであの人はいったい何をしたのか…、何をしなかったのか… すごく聞きたいね」 (結局それでインタビューをすることになった。結果はここ)
のざき「本とか読んだけどさ、感動だよね。まぁ、あの本の頃はまだジェファーソン(R.E.M.の初代マネージャー)がいたわけだけどさ…」
和田「ジェファーソンは女子社員に対するセクハラ疑惑でクビになったんだよね。たぶん有能な人だったと思うのだけど、それでもクビにしたってものすごい英断だったと思う。普通は女の方をクビにしてお金を渡して黙らせるでしょう。じゃなくて、ジェファーソン・ホルトの方を切ったっていう事が、すごい」
「バーティスに会ったのはワシントンDCとニューヨークに行った時かな…で、ワシントンDCで会えたから“すみません、ワーナー通してインタビューのオファーも出しているんですけどダメだって言われたんですが…”って言ってアプローチしたのよ。ちょうどブッシュとケリーの大統領選挙の時だった。で、どうしても興味があるから、って言って。これまでもこんなに記事書いてきました、って伝えて… できればこのあとニューヨークにも行くので、そこで時間がもらえれば…って。そしたら受け取ってくれた…」
のざき「でもマネージャーの顔とかよく分かったね」
和田「顔はね、ファンサイトのMurmurs.comとかに登場していたのよ。だからそこを見ている人は当然知っているわけですよ」
のざき「すごいねーー!」(爆)
和田「そしたら1週間か2週間で事務所からいろいろ送られてきた…」
のざき「いい話だわ…。バーティスさんってノルウェーのICE STATIONには顔を出してるんだよね。あんな僻地へさ… しかもバンドの課外活動というか…仕事ではないわけじゃない?」
和田「友達だからだよ」(しんみり)
のざき「ホントそうだよね…」(妙にしんみり)
和田「常に一番の友達だから側にいてあげる、っていうかね」(キラッ)
和田/野崎「きゃーーーーー❤❤❤」(キラキラッッ)
和田「彼は常にバンドの一番の友達なんだよね。とにかくこのDVD見てもらえれば、もうバンドのことはバッチリ分かるよ。すごくいい内容だから絶対に観て」
のざき「それにしても、すごいバンドだよね。ミュージシャンの方もマネージャーを信じてきたわけだから」
和田「なんか人を信じる力が強いんだよねー」
のざき「いいね、それ!」
和田「なんか悪い人がいないんだよね…。そういえば、私が海外でインタビューした時とか、通訳いなくてさ…、とにかく時間がないから… ラウンド・インタビューで、ジャーナリストがチームになって、私は明美ちゃん(中村明美さん)と同じチームになれたら良かったんだけどなれなくて、シンガポールの人とスウェーデンかなんかの人と一緒になったの。そっちの人たちはもう英語ペラペラなわけよ。私だけが英語できなくて質問を英語で書いたものを持っていって… そしたらマイケルがさ、自分でその質問を読み上げてインタビューを進めてくれて…」
のざき「きゃーっっ(爆)すごい! 頭いいね。そうだよね。録音に残せば、あとはプロの人が後から整理してくれるものね」
和田「そうそう… だから質問を読み上げてくれてさー」
和田/のざき「優しーーーーーーーーーっ❤❤❤」(爆)
和田「あんな大スターなんだよ!」(爆)
のざき「泣ける!」(爆)(涙)
和田「もうホントに申し訳なくってさ、私、英語が下手で…って言ったら“いやいや”とか言ってさ…」
「R.E.M.本当にみんないい人たちだった。特にマイケルはモゴモゴしゃべるから何言っているか分からない時もあったんだけど… ピーターとマイクならはっきりしゃべるから私でも理解できるんだけど」
のざき「それはいい話だわ」
和田「でもその時ピーターが、“オレたちが何を歌ったって誰も気にしてくれない”って 言ってたのよね」
のざき「ピーターってインタビュー読んでると、そういう事、言う時あるよね」
和田「ピーターがもしかすると一番繊細だよね。あ〜〜、それにしても久々にR.E.M.の話した! 最近、相撲の話しかしてないから…(注:和田さんの相撲本がもうすぐリリースされますよ!)、最近口をついて出て来る言葉は“白鵬”とかだからさ」
和田/野崎「はははははははははははは」(爆)
和田「でもR.E.M.みたいな成功例はホントにないよね。これだけ成功したロック・バンドっていうのも… だって何もないところから始めているんだよ」
のざき「そして常に活動が健康的というか、やりたいことはちゃんとやれてる、ってのが素晴らしいよね。今回もこんな小さなツアーにも来てくれるし。普通あんなに大きくなっちゃうと、そういう自由は放棄しなくちゃいけなくなるからね」
和田「自分たちも好きなことをやり、人を喜ばせ、そしてお金も稼いで… ありえないよね。今後も絶対にあり得ない。確かに90年代とかオルタナティブの盛り上がりがあったけど…。パール・ジャムは長くやっているから稼げているかもしれないけど、R.E.M.ほどには…ってのはあると思う。ニルヴァーナとか成功したけど死んじゃったし…」
のざき「死んだら駄目だよね、死んだらね…」
(ここで頼んだモツ鍋をあれこれいじる)
のざき「そういやワルシャワにも行ったんだよね…」
和田「すごい良かったよ。ワルシャワでのライヴって、R.E.M.のライヴの中で1番目か2番目に良かったかも。最初チケット取れなくてさ…当時Ticket Mastersとかないから…。ポーランドの航空会社のオフィスまで行ったりして… ワルシャワのプロモーターにメールしても返事がなくて… でも当時合気道を習ってて、合気道の先生の友達の友達みたいな人に頼んだら、その人たちがすごく良い人たちでね。日本に駐在していたことがある人で… 日本の学校にも通ったことがあって日本語ペラペラで、その子が一緒にコンサートに行ってくれてさ、最高に良かったの。あの時、アジア人、私一人だったのよ。そんな思い出もある。それが2003年」
のざき「歌は世に連れ…じゃないけど、いろいろあるね。音楽を聴いていただけなのにね…」
和田「なんだろうね、音楽って不思議だよね」
のざき「人間をつなげる、っていう機能があるんだよね」
和田「でもチケット売るって大変だね〜」
のざき「ホントだよ」
和田「ウォリスよかったよね。あれ見たらみんな感動するよね。理屈じゃないわ…」 (ここでウォリスの話、仕事の話で熱く盛り上がる。長いので割愛しますが、内容は省略。ただ赤尾さんとピーターのツーショット写真を絶対に撮ろう!とやけに盛り上がったのでした)
和田「でも今回のICE STATIONってどういうプロジェクトなの?」
のざき「そうなのよ、結構分かりにくいよね。あれはそもそも(ポップ・アーティストの)ミシェル・ノアクがノルウェーで始めた企画で、彼女が北極でアーティスト・イン・レジデンスをやった時に極夜の時期で寂しいから、って言って、友達のミュージシャンを北極に呼んだのよ。それが一番最初のICE STATION」
「一方私は2006年にスコットとピーター呼んでから、彼らがまた日本に来たいっていうのを何度も言われていたのだけど、前回のツアーもけっこうな赤字だったし、どうしようかなぁ、ってずっと迷っていた。ところが今、私ナヌークをやっているでしょ? で、あの子たち11月にプロモで呼んで取材させて記事を出すでしょ… でも若いバンドだけじゃコンサートはなりたたないと思ってたのよ。企画として、どうも弱いな、と。で、ある日Facebook見たら「なんだピーターたち北極やってんじゃーん!」ってなって…。そんなわけで2つのプロジェクトをくっつけることにしたわけ」
和田「なるほどー!」
のざき「だから企画として、ちょっと無理があるんだよな。ピーターが環境問題に詳しいかっていうと、そうでもないと思うし…。でもピーター、ノルウェーの北極圏に行った時のドキュメンタリーがあるんだけど嬉しそうだったよ。サーミのミュージシャンと共演して「サイケデリックだ!」とか言っちゃって。ホントあの人、音楽大好きなんだなぁ、って」
のざき「まぁ、とにかく彼らは演奏できるって事ならすごく喜んで飛んで来てくれるわけよ。今回も声をかけたら、すごく嬉しい!って、速攻で返事が来た。それにしてもR.E.M.から2人来る、ってのが、結構すごいと思うんだよね。ベースボール・プロジェクトだって、通常はマイクかピーターかどちらか1人だけなんだから。私はピーターとスコットが来日してくれれば他は誰か来てもこだわらなかったけど、結果マイクとピーターが両方が来てくれるって事になったのがすごいな、と思ってさ。そもそもピーターだけじゃなくマイクが来ればR.E.M.のレパートリーが歌えるしね」
和田「マイケルも来ればいいのにねぇ」
のざき「ははははは。でも音楽活動またすぐ開始しそうじゃない?」
和田「うーん。でもバンドがいないと彼1人では何もできないでしょう」
のざき「コールドプレイと歌っていたじゃん?」
和田「でもあれはコールドプレイのステージであって、あくまで客演だからね。あなたが主役になるのはR.E.M.だからね、ってこと」
のざき「再結成ないっすかね…」
和田「ないだろうな…」
のざき「ないかな…。赤尾さんだったかな、言ってたの… マイケルがやるって言えば、ピーターあたりは文句をブーブー言いながらもやるんじゃないかって。でも私も規模は全然違うけど、あのツアーの辛さってホントダメでさ… 私自身2週間以上は絶対にツアー出来ないタイプだから。気持ちは分かる。もういいでしょ、充分でしょ、って気持ちになるんだよね。なんていうか、あれはやっぱり人間性失うよ…」
和田「普通に旅行するのだって大変だものね」
のざき「あの、どんなにいいホテル用意してもらっても、どんなに豪華なケータリング入れてもらっても、ファーストクラスで飛んでも埋まらないっていうか…」
和田「埋まらないよね」
のざき「その点、ICE STATIONは友達企画だから!(笑)だから、みんなめちゃくちゃ楽しみにしてくれている。自分たちでやるって決めたことだから」
「しかし今回R.E.M.のオフィスの皆さんとメールとかしてて、おもしろかったのは、R.E.M.のオフィスではさ、R.E.M.っていう名前をオフィスの名前っぽく扱うんだよね。バンド名っていうよりも…」
和田「株式会社 R.E.M.でございまーす…ってか(笑)」
のざき「うん、なんていうの…みんなでメールやりとりしてると、“オフィス”っていう感覚なの。“今日、REM寄ってく?”とか、“あれREMに持っていっておくから…”とか。もちろんメールでいちいち句読点を打ったりはしない(笑)。そしてなんというか、パーマネントなチームっていう感覚もあって、すごくいい」
和田「あそこで働いている人たちとかどうしてるんだろうね。あんな田舎で職を失ったら困るでしょうに」
のざき「ホームページには今でも従業員のクレジットがあるよね。ある程度遺産で続けられるだろうけど、桁違いに稼いでいた時期とは明らかに違うわけだしね。でもオフィスで働くスタッフの給料は安いって、R.E.M.本に書いてあったなぁ…。男社会なんだって女は安いOL価格とか書いてあった(笑)。女の人の方が安い給料でも一所懸命働くからね」
和田「ファンクラブとかホントにちゃんとしててさ、デヴィット・ベルって人がいてさ…、その人がいい人で、こちらのどうでもいい問い合わせにもいちいち返事をくれるわけよ。で、返事の封書におまけみたいなシールとか付けてくれるわけ。手紙の世界だからさ!! メールじゃないから! ちょっと頼んだ物が送られてこなくて、どうなっていますか、って連絡したら“大丈夫だよ,安心して!”って返事とともに“シール”!!」 (あとでメール調べたら、このベルさん、まだオフィスにいらっしゃいますね。ICE STATIONのことをR.E.M.の公式ページに載せてくれたのが、このベルさんです)
のざき「だからアセンズを動かなかったのかもね。これがニューヨークに事務所移してたら,全然違ったのかも。地元の人を雇っていたんだろうし」
和田「時代が違うから、と言われたら終わりだけどさ、石坂敬一物語じゃないけど、R.E.M.の小さな事務所がどうやってこのバンドを世界一にして、長く続けられたのかっていうのを知りたいよね。そういう話を聞けたら、すごいよ。だって1バンドがワーナーから80億円だよ。すごい事だよ。どうしたらそういうことが可能になるのかさ。時代が違うと言われればそれまでだけど…」
(鍋をラーメンで締めた後、アイスクリームが食べたくなって、居酒屋の隣のマクドナルドに流れたのであった。和田さん,熱い想いをありがとうございました〜)
★ ★ ★
ピーター・バックとマイク・ミルズが来日するICE STATION、開催までもうすぐ。渋谷と京都で公演があります。現在チケットは「当日精算」で受け付けております。
2月7日 京都 磔磔
2月9日 渋谷 WWW
2月10日 渋谷 WWW
with ナヌーク、カート・ブロック、ピーター・バック、スコット・マッコイ、マイク・ミルズ、リンダ・ピットモン、スティーブ・ウイン
和田さんの名著の数々。どれもおすすめですよ!
そしてICE STATIONはSUN STATIONとなって白夜の北極に行くことになった。こちらは7月。これはすごい布陣。さすがノルウェー。予算が違う…