映画「わたしは、幸せ(フェリシテ)」を観ました


うわ〜、なんて素敵なビジュアル。このコピーといい、なんといい、さすがムヴィオラさんだわ。映画の神様が応援しとるよなぁ、こりゃ…いや、冗談でもお世辞でもなく。2017年ベルリンで銀熊賞、審査委員大賞受賞作品「私は、幸福(フェリシテ)」を試写で拝見しました。ありがとうございます。



いや〜 なんというか地味な映画ではあったよ。でもすごく引き込まれた。フェリシテはシングル・マザー。歌いながら貧しくも地道に息子との生活を続けている。ある日、冷蔵庫が壊れ、そして息子が交通事故にあい手術をしなければ足を切断されてしまうという事態に落ち入る。しかも膨大な手術の費用は前払いが前提。必死でキンシャサの町を走りまわりながらお金をかき集める彼女。隣りのベットの人にお金を騙したられたり…。

なんというかグッと引き込まれるね。町のカオス、夜の熱気、これがリアルなアフリカ。大自然とか、社会派とか、そういうことではない、これがおそらく本物に近いアフリカの姿なのだ。

これさ、最近観た「サーミの血」でもそうだったけど、主人公が泣かないのよね… だから妙に説得力がある。だから反対に彼女がちょっと微笑んだかり、緊張しっぱなしの表情が緩むだけで、妙に大きく空気が動くのだ。最後の洗濯機修理人さんとのやりとりとか、ね。その感じが、たまらない。

もともとアラン・ゴミス(セネガル系アフリカ人)監督は、セネガルの自分が親しくしている女性たちの強さと、妥協を許さない姿を映画であらわしたかったんだって。そして、この映画にも監督のいつもの映画製作のテーマである「あがきと受け入れ」という弁証法的対立が描かれているのだそうだ。彼女たちの、どんなことにもくじけない強さと、何事にも真正面から取り組む生き方を… うん、こうやって彼女たちの日々は過ぎていく。

そして音楽がすんばらしいので、大注目です! コンゴの超人気グループ、カサイ・オールスターズと女性ヴォーカルのMuambuyi。なんと監督は、この音楽にインスパイアされて、この映画の脚本を書いたんだって。すごいね。

こちらがそのカサイ・オールスターズと歌手Muambuyiの映像。クラムドからCDが出てるらしい。確かにこの声にはアフリカの日々の生活の強さが内包されている。



監督は実際このシンガーのMuambuyiさんを主人公にして映画を撮影したいと思ったのだけど、彼女は監督が考えていた設定よりもかなり年齢が上だったんだって。なので、今回出演の女優さんに配役が決まったそうです。

その監督も11月にプロモーションで来日もするそうなので、 おもしろい話もいっぱい聞けるのではないかと期待。きっとあちこちの媒体に登場するだろうから、楽しみにしていてください。それからこの映画のサウンド・トラックはプランクトンさんから11月22日に発売になります。

12月16日からヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町他ロードショー。