カウリスマキの新作「希望のかなた(The other side of hope)」を難民映画祭で見ました。結論から言っちゃうと、物凄く良かった、物凄く良かった、物凄く良かったーーーーー!
今までみたカウリスマキの中で、一番グッと来たかも。いや、好きですよ、カウリスマキ。いつでも大好き。カウリスマキはいつでも好き。だけど、今回ほどグッと響いた映画はなかったかもしれない。なんでかなぁ、とよくよく考えてみた。映画を見終わった瞬間から、今この日記を書くにいたるまでの数時間、帰り道ずっと考えた。で、分かった。それはきっと自分が今の世界に絶望していたせいなのだ。
アレッポから「いい人たちが住む、いい国」フィンランドにたどりついたカーリド。紛争から逃げて来る途中で妹と生き別れになってしまう。家族はみんな死んでしまった。警察に難民申請するも却下される。そしてネオナチの若者には暴力をふるわれる。が、めぐりめぐってレストランのオーナーと出会い、そこで働き、仲間達に助けられたカーリドは自分の居場所を見つけていくのだった。
めっちゃ響いた。絶望していた私にめっちゃ響いたよ。カウリスマキが言いたいのは…といきなり結論を言っちゃうのだけど… 世の中は大丈夫、ということなんだ。いくら警察がダメと言っても、法律が理不尽でも、ネオナチとかが暴力奮っても、普通のホントに普通の特別でない人たちが、ちょっとずつ善意を提供すれば、それで世界は大丈夫なんだということなのだ。それを言いたいのだ、監督は。
リトアニア(だったっけ?)から舟が到着したシーンで、照れくさそうにタバコを吸う男たちが、めっちゃ泣けた。みんな照れながらも、助け合って生きている。
そして今回もまた犬がいい味だしてる!!素晴らしい演技力もう悶絶!!
もう日本とかいって、絶望的だけど…なんだか大丈夫と思えた。監督が大丈夫って言ってくれているような気がした。それがなんだか泣けた。
それに今回はストーリーも結構起伏に飛んでいて、いつものカウリスマキより「楽しかった」かもしれない。ユーモアも分かりやすかったかもしれない。それからいつもより音楽が多かったせいかもしれない。(あ、カウリスマキ監督がプロデュースした日本人歌手の…名前忘れちゃった… すごく効果的に使われてましたね)
そしてバラしてしまうと寿司屋のシーンにフィンランド在住の友人が出て来て寿司オーダーしているのにバカ受け! @etsuro さん、名演技。セリフもちょっと聴こえてましたよ(日本語/笑)。おつかれ様でした。
ところで今日は映画の宣伝をかねて来日している主演のシェルワン・ハジさんが上映後のトークイベントに登場。ポケットから紙を取り出し「これは言わなくちゃ」とメモを見ながら言ったのが「いらっしゃいませ」(日本語)そして「イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、シチ、ハジ」と「8」(ハジ)が言いたいがために、数字を8まで言えるよう練習したそうで、会場の掴みはバッチリ! 会場にいた全女性が、あの瞬間、彼と恋に落ちたのでした。(私を含む)
で、ハジさんはホントにシリア人なんだけど、ずいぶん前にフィンランドに移住して来た人で(本人いわく「愛に導かれて」。奥様はロシア系のフィンランド人らしい)自分は難民として移住してきたわけではないけれど…とお話ししてらした。
あと、すごく良いことを言ってたね。「自分たちを人間と呼ぶのならばヒューマニティ(人間性)を保持(メインテイン)するのは自分たちの義務だ」って。いい人であることは人間の義務なんだよ、うん。なんかめっちゃ響く。
ハジさんは、寿司屋のシーンで使われていたエプロンとはちまきを持って来ていて、それを着せてみせるなど,とにかく大サービス。
いや〜、なんてチャーミングな人なんだろう。奥様っていうか、こういう人と仕事を一緒にしている配給会社の皆さんが羨ましいわ。
皆さんも絶対に観に行ってください。このあとフィンランド映画祭での上映、そして12月2日からユーロスペースで見られることになるようです。あ〜、もう何度でも観たい!