映画「ベロニカとの記憶」を観ました。


映画「ベロニカとの記憶」を試写で拝見しました。ありがとうございます。

いや〜、いい映画でした。ロンドンでの話なんで、溢れる英国感にも大感激。時々主演男優さんがかもしだす、ちらちらと見え隠れするイギリス風ユーモアも最高。これはヒットするんじゃないかな。素晴らしい。

60歳をすぎた年金暮らしのトニーの元に見知らぬ弁護士から連絡が入る。「あなたの親友の日記です」と。それは初恋の彼女ベロニカの母親からの遺言だった。 親友はトニーと分かれたベロニカと付き合いはじめ、のちに自殺を図っている。その彼の日記を、なぜベロニカではなく彼女の母親が持っていたのか? しかも弁護士によれば、その日記はトニーには渡せないとベロニカが主張しているという。

全体をつらぬく謎というかサスペンス感もたっぷり。別れた元妻に、初恋の話を告白しながらも、謎にはまっていく主人公の姿がチャーミングだ。親父3人が集まって、SNSにチャレンジする姿も可愛らしい。そしてシングル・マザーになろうという娘の出産を通じて彼の成長(っていっても、60歳Overの爺さんなんだけど)も感動を運んでくれる。人は変われるんだよ、と。この辺は原作にはなかった温かい演出だそうだ。

まったくもって人間が覚えていることというのは宛にならない。こんな酷い事をした、あんな悪い事をした。それをすべて忘れて都合のいいように解釈を加え、思い出としていた。


俳優陣が、もう超一流。主人公と、離婚した元妻も最高。ミステリアスなベロニカもいい。そして若き日のトニーを演じる若い俳優さん(ビリー・ハウル)もいいねぇ。ホント抜群の配役だ。そして脚本も良く、セリフがいかしていて無駄がない。英語の発音がいい(笑)。100分ほどという短めなのもいい。でもさらにいいのは、これ、監督/演出/撮影じゃないかな。どの画面も、とても素敵だ。陽の当たり具合、空気の湿り具合、70年代の学校の様子や当時としても古めかしかったのではなかろうかというベロニカの実家、台所の古い冷蔵庫にいたるまで、すべてがぴったりだ。画面を切り取るアングルも素晴らしい。

監督はインド人。日本でもロングランヒットとなった「めぐり逢わせのお弁当」のリテーシュ・バトラ監督。この映画の元になったという原作本(ブッカー賞受賞作品)も読んでみたくなった。しかも、これ、土屋先生が訳してるじゃーん(笑) 新潮社クレストだし!!!



シネスイッチ銀座、そして新宿武蔵野館などで来年1月ロードショーだそうです。あ、あと邦題が上手いね(って、わたしったら、偉そうに)。「終わりの感覚」っていいタイトルだけど、映画の場合はこっちのタイトルの方が、ヒットを狙えると思う。