畔柳ユキ「メタル現場主義」を読みました

ユキさんの本、今月2冊目。昨晩読み終わった! 今回はヘヴィ・メタル・バンドの数々のかっこいい写真と「現場」の様子を伝えるエッセイがぎゅっと詰まった1冊。メタリカ、オジー、メイデン、マイケル・シェンカー、ハノイ・ロックスなどなど、私でも(名前は)知ってるメジャーなバンドがずらり。圧巻です。そしてメタル界の巨匠、伊藤政則さん、酒井康さんとの対談は、爆笑ものでもあり、そうなんだ,メタルの世界って…と思うことしきり。

というか、ジャンルが違うとホントに違うのよ、ギョーカイのノリが…

それにしても、重鎮のお二人も、相手がユキさんじゃなかったら出てこなかったんじゃないかしら。そういう意味でもメタル・ファン、必須アイテムなのではないかと思う。

爆笑したのは、伊藤さんのツバキハウスの話。いったいクラブ(ディスコと言ってました、当時)でメタルかけて、どんな状態なんだろう、と思ったら、みんなエア・ギターしてヘッド・バッキングしてたのね…な、なんと。爆笑すぎるよ。しかもすごい人だとボーカリストのパフォーマンス用にマイク・スタンドまで持ち込んでたと言う… バカかこいつら!?(褒めてます、褒めてるんですよ)

それにしても、ウチの音源にはまったく関係ないお二人だったので、ギョーカイ歴がそれなりにある私でも、リアルにお二人を存知あげないのだが、実は伊藤さんの事務所には一度ロリーナ・マッケニットをお送りしたことがあるんですよ。

FMファンというFM誌で、編集者の人が「伊藤さんはロリーナのファンだよ。資料送ってみれば」と声をかけてくれたのだ。で、ちょうど「Live in Paris and Toronto」のCDが出た時で、さっそくライブ盤をお送りした。そしたら、私はチェックできなかったのだけど、ラジオでかけてくださったらしいんだよね。それは、すごい事なのだ。だって、伊藤先生のラジオでかけてもらおうと、レコ社の担当の皆さんは先生のラジオ番組とかに立会って先生の収録が終るのを待っているのだから!(すみません、ウチはスタッフ1人なんで、そういうおつきあい出来ないんですよね…)

その後、ロリーナがまた来日するようなことでもあれば、また連絡を取ってみたかったのだが、そんなこともなく、そこでこの件は終わり。でも妙に嬉しかったよなぁ。

そして、「バーン!」の初代編集長、酒井さん。ユキさんをリクルートするなんて、やっぱり人を見る目があったんだろうね。「分ってない人に触ってほしくない」ってのは、私も自分の仕事で同じように感じている感覚だから、すごく分かる。自分の現場には信頼している人以外、入ってほしくないの。そして人は昔お世話になった人のことはずっと覚えているもんだ…というのも考えた。雑誌立ち上げの時、(当時Music Lifeの編集長だった)東郷さんが応援してくれてね、という話には感動した。それからレビューの「点数制」の話に対するロニー・ジェイムス・ディオのエピソードも。そんな話を引き出せたのも、相手がユキさんだったからだと思う。

それにしても「現場」の話はやっぱりおもしろい。ユキさんには、実はアラマーイルマン・ヴァサラットを撮ってもらったことがあるのだが、それはなんだかいい経験だった。ライブ撮影だったのに、ユキさんは早めに来てくれてリハの様子をドキュメントしてくれたのだが、これが抜群にいいのだ!!! もっともリハの様子とか、公開する場もないので、ホントにもったいなかったのだが、ユキさんの撮影に対する誠実さは、この本を読めば分かる。ユキさんの写真が素晴らしいのは、媒体の向こうにいる、このアーティストが大好きなファンの事をちゃんと考えているからだ。「このバンドを大好きなファンな人たちが、写真を見たらどう思うか」というのを、常に考えている。そこが、やっぱりこの業界で成功する人としない人の違いだよね。そういや、ムーン・サファリが流れるというので、先日初めて聞いた伊藤さんの番組でも本当にリスナーとの絆をすごく大切にしてる感じがして、すごく良かった。スポンサーとか、番組Dとか、編成とか、局とか、目の前にはいろいろありそうなのに、リスナーにフォーカス出来るなんてホントのプロだ… なんて大先生に向って、私も失礼な… でも改めていろいろ思ったよ。 すごいなぁ、って。

それにしてもユキさんには、ウチのバンドを撮影してもらったことは何度かあるけど、全部ライブ写真なので、いつかポートレート撮ってもらいたいなぁと思った。本を読んで思ったのは、ポートレイト撮影の時って「こんなにディレクションするんだ!」って事。でもユキさんの場合、ファン目線を意識して、きっちりイメージ固めてからいくから、当然なんだけど。あと相手がビック・アーティストで撮影時間10分とかで、チンタラ撮ってる時間がないから、ちゃっちゃと指示して、ちゃっちゃと撮らないと…ってのもある。

あ、そうそう、マリリン・マンソンのエピソードには笑った。セキュリティに羽交い締めにされ、汚い言葉を吐きながら引きずり出されて行くユキさん。何が起こったか、知りたい人は是非、本書を購入あれ!(笑)

それから日本のバンドElectric Eel Shockの写真では、赤羽の、私もしょっちゅう行ってるおでんやさん(丸健水産)がしっかり写っていて笑った。そう、あそこの二代目はマルケンズというバンドをやっていて、毎年赤羽バカ祭りで素晴らしい演奏を聞かせてくれているのよ。だからあそこは赤羽の、ロックの聖地でもある。さすがだ。

あと、この本にも登場してるんだけど、ユキさんのもう1つの「R」であるRavenについては、もっといろいろ知りたいので、続編を期待!