ケヴィン・クロフォード インタビュー ルナサ新作『CAS』について その2


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ルナサのケヴィンが私がメールで送った質問に答えてくれた音声を、日本語に起こしたものをご紹介しております。シリーズの2回目。その1はここにあります。

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『Paddy's Green Shamrock Shore』を歌ってくれたデリー・ファレル。彼は僕のレーダーにもうすごく長い間ひっかかっていた人なんだ。もう注目して4、5年たつかな。ずっと気になってたアーティストの1人。だからこのレコーディグの成果をめちゃくちゃ気に入っているよ。彼は素晴らしい情熱の持ち主で、信じられないほどのスピリットを歌にそそぐ。

彼のことはずっと見て来たんだけど、特に彼のブズーキの演奏は信じられないくらい素晴らしいんだ。例えばアンディ・アーヴァインやポール・ブレイディといったものすごい人たちと同じレベルの才能を持っている人だと思うんだよね。いわゆる素晴らしいシンガーで、同時にギターもブズーキの演奏も素晴らしいっていう…。70年代とか80年代の素晴らしい人たち。まさに僕らが聞いて育ったような素晴らしい音楽。そういう才能なんだ。素晴らしく輝ける灯台みたいな光さ。遠くからでも見つけられるような。しかもめちゃくちゃいい奴で、いつも元気で明るくて一緒にいて楽しい奴さ。

(確かにすごいです、この歌、このブズーキ)



曲の選曲についてなんだけど、選択は実は僕がした。2、3曲、フランク・ハートの曲を提案したんだ。で、このヴァージョンはフランク・ハートのヴァージョンをもとにした。歌詞もそこから取っている。でももちろん僕は彼に他の曲も提案をしたし、彼にも何か提案するように求めたんだ。結局この曲になったけどね。でも僕ら両方とも、この曲が一番の選択だと思ったんだよ。バンドのサウンドにもあっているし、楽器編成もぴったりだ。僕らがアルバムに入れたいと思うような曲にも非常に近かった。

しかしレコーディングはちょっと複雑だった。スケジュールがなかなかあわせられなくて仕方なかったんだけど… まずデリーがダブリンのトレヴァー(ベース)のスタジオにデモを取りに行った。その音源がアメリカにいる僕とキリアン(パイプ)そしてコリン(フィドル)のところに送られてきたんだ。僕らのパートをいくつか録音して、それをまたトレヴァーに送りかえした。これらのパートを聞きながらデリーは再び歌のトラックを録音。同時にブズーキのラインを作り上げた。これらが再びアメリカに送られ、キリアンと僕とコリンはテキサスのフェスティバルにいる間に、さらにレコーディングを重ねた。その部分にいたってはなんとホテルの部屋で録ったんだよね(笑)

だからこのトラックがアルバムの収録曲の中で一番オーガニックなトラックではないかもしれない。でも最近の技術は素晴らしいよ。こういうことが実現出来ちゃうんだから。というわけで、これがダリー・ファレルのレコーディング。本当に彼が参加してくれて嬉しく思っている。

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さて、今回のアルバムの中で、一番みんながびっくりしただろうトラックは、ブルース、ゴスペル、アメリカーナのシンガーであるエリック・ビブのトラックだと思う。『My Lord What a Morning』

エリックは、僕らのマネージャーだったスチュワート・オングリーの友人で、スチュワートはエリックとも仕事をしてたんだよね。ベースのトレヴァーは、エリックのベース奏者として何度もツアーに参加していた。ルナサもフェスティバルで何度も一緒になったことがあるんだ。僕らはとても仲が良くって、いつも何か一緒にやろうよ、という話をしていた。だからこのアルバムを作ろうっていうことになった時、エリックに声をかけるのは自然のことだったのさ。

エリックみたいな声、彼みたいなバック・グランウンドを持つ人がアルバムにこういう曲を提供してくれるなんて本当に素晴らしい。なんていうかゴスペルっぽいっていうか… 

しかしこのコラボにはちょっとした努力も必要だったよ。というのも、彼が歌うタイプの曲は、僕らの音楽とはなかなかフィットしない。この曲を選んで来たのは彼の方で、彼がこの曲を送ってくれて、これなら僕らにも何か出来るぞ、という結論にいたった。

実際のレコーディングは… 彼は今、スイスに住んでいて、レコーディングのための調整が非常に難しかった。このレコーディングもすごく変なんだが、エリックがまず彼の奥さんのオリカをバッキング・コーラスに従えてスイスでこの曲を録音した。もちろん彼の素晴らしいギターも一緒に押さえたんだが、これが素晴らしく際立っていてね。歌同様にこのギターが彼のサウンドの要だな、と思ったよ。そしてそれが僕らのところに送られてきたんだ。大変だったのは、この時点でスケジュールがすごく押していてね。フィドルのショーンとコリンが、このトラックに何かを付け加える時間がなくってさ。でも僕らはフィドルはこの曲には必要ないんじゃないかな、って思ったんだ。で、ホイッスルをゴスペル・クワイヤに見立てて、エリックと一緒に歌わせるってのがいいんじゃないかというアイディアに行き着いた。なんというか、チャント風というか… 

で、僕とキリアンは、頭のダブル・ホイッスルのパートを録った。これを3回、幽玄なサウンドを重ねることで、歌が始まるとはとても思えない感じを醸し出している。ところが、そこにまるで共鳴するようにしてエリックのギターが入ってくるのが、ちょっとした驚きだろ? で、ちゃんとしたリズムに乗ってエリックの歌が始まるんだ。さらに僕らはバースとバースの間とか,最後のところなんかは、ダブル・ホイッスルのハーモニーを、長い音を演奏して重ねていく手法をとっている。そして真ん中のホイッスルは曲のメロディに捕われずに僕らの自由な解釈で演奏した感じになっている。基本的にホイッスル、そしてロウ・ホイッスル、そしてエリックだけのトラックであることは事実だ。それからトレヴァーが最後にブズーキをこのトラックに付け加えた。

(エリックってこんな感じのサウンド。確かにルナサとはだいぶ世界が違いますよね)



その3へ続く。

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