今さらながら是枝監督『誰も知らない』を観ました。すごすぎる!!


いやーーーーー すごすぎる! すごすぎる! すごすぎる! やっと観ましたよ。『万引き家族』に感動して、是枝監督の代表作『誰も知らない』を。ホント邦画はよほどのことがなければ観ない私。今ごろになって、やっと…という感じです。

なんというか、子役すごすぎる。長男すごすぎる。監督のメッセージ… じゃなかった… 監督はまたもや何も言ってない。なーーーーんにも言ってない。ただひたすら子供たちをリアルに描くだけ。それなのに、この映画の「観る者に考えさせる度」圧倒的にすごすぎる! これはすごすぎる映画です。いや〜 またもや是枝監督にやられた。

またもや監督は何も言ってない。何も言ってないけど、これを観て考えない人はいないでしょう? いや、自分だったらこの子供たちに介入できたか? 勇気を持って話しかけることが出来たか? でも話しかけても本人にはぐらかされたら、おそらくそれ以上は突っ込めないでしょうよ、マジで。巣鴨のこの事件が題材になっているそうだけど… すごすぎる。 あぁ、でも、ごめんなさい。そう、私も弱い大人なんです…。



しかし、この長男、存在感、目の力、すごすぎるでしょ。もうやばいわー すごすぎるわー。表情が…もうやばすぎるでしょ! 映画は1年かけて撮影したそうだけど、最後の方、長男成長してるし、背が高くなって声代わりまでしてる。どうやらwikiによると身長が146cmから163cmまで延びたんだって。すごいよね! カンヌで最優秀主演男優賞を最年少で受賞したの、超わかる! 審査委員長のタランティーノが、この映画が受賞に不利だといわれる2日目の上映だったのにもかかわらず、大きな賞をゲットしたことについて「毎日すごい本数の映画を見たが,最後まで印象に残ったのは彼の顔だった」と話していたそうだけど、分かる! いや、すごいもの。

友達が貸してくれたメイキング映像のDVD見たら、クランクアップの時、長男くん、花束渡されて、みんなに労わられて、こらえきれずに泣いてるのよ。もう、それ見て、号泣っ! 号泣っっ!   映画みては泣かなかったんだけど… 子供なりに必死で責任感感じてたんだね。大人の期待に答えようとしてくれてたんだね…(涙)

そして陽気な次男… この子、すごい!! だって全然演じてないでしょ?(ちなみにカップ麺の汁にご飯を入れるのは、子役くん本人のアイディアだったとか…) 。ちなみに次男は小学校卒業と同時に俳優業はやめたらしい。

監督が「いかにも育児放棄しそうなキャラクター」と抜擢したYOUさんの母親役も自然で良かったわ。だって、まったく悪びれてないんだもの。特に子供たちと遊ぶシーンは、すごくナチュラル。母親は母親なりに子供たちのことを考えていたのだとは思う。そしてこれが最後だと知るよしもなく別れる駅のシーン。あぁ…(YOUさんはあれが別れのシーンだとは知らないで演じていたそう)
 
それにしても、すごいよね。この子役たち。ほとんど後半というか、終わり2/3は子供たちの演技だけで映画は進行していく。すごすぎるでしょ、この子供への演出は! で、監督のホームページのこのコーナーにある「春」「夏」「秋」「冬」の写真集と監督のコメントがいいんだわ! そこに監督の子供演出の秘密があるような気がした。監督が子役たちのことが大好きなのがよくわかる。特に「冬」にあるカップラーメンの裏蓋をなめる次男の写真に「お母さん、すみません、でもこの写真とても好きなんです」ってのがいい(笑)

監督は子供を愛しているし尊敬しているね。リスペクトがある。だからこそ、こんな風に撮れるんだと思う。ホントすごいわ。で、同じページにある、子供たちが書いた夏の思い出やカンヌの思い出もいいから、是非読んでみて。映画では泣かなかったけど、長男のコメント読んで、泣けた。やばいわ、子供達! そして次男、まったくあの映画で見た次男どおりだから!(笑)

どっかの横柄なコメディアンがYOUだけ浮いてる、とか言ったそうだけど、監督の制作ノートを読んだら、それがいかに考えなしのコメントなのかが良く分る。監督との打ち合わせに来たYOUさんは、最初この仕事を断ったそうである。演じるという経験もないし、セリフ覚えて準備するのが自分はとても苦手。自分はバラエティなどで臨機応変にやる方が向いてる、と。そこで監督はYOUさんに子供と同じ演出方法を仕掛けた。セリフは覚えてこなくていいですから、と。なので、一応脚本は事前に用意し渡したものの、YOUさんが事前に読んで来た形跡はなかったそうだ。

でも彼女はすごい。冒頭の食卓のシーンでの撮影時、まだ撮影になれてない子供たちの会話があれこれ脱線してしまう中、それを叱るでもなく訂正するでもなく、編集ポイントで自然に子供たちの役名を呼びながら臨機応変に軌道修正し対応したんだそう。これって「万引き家族」のリリーさんや樹木希林さんと一緒。大人の役者が子供に対する演出家みたいなことを引受けている。まさにバラエティで鍛えられたスポンテニアスな彼女の本当の凄さ!    すごいと思うよ、ほんと! っていうか、是枝組、またしてもすごい! またもや是枝監督のキャスティングそして、その人の才能を最大限に引き出す力に唸る。唸る。唸る!!!

アマゾン、標準画質なら300円で観れるから、是非。見てないひとはいないだろうけど。



そしてYOUと長男くんはその後、車のCMで共演してるとか…(笑)



さて実際の巣鴨事件の犠牲者だった子供たち。その子たちはこの映画を見たのだろうか。二人の娘は母親と結婚した父親にひきとられ、長男は施設に入った…とのこと。どうか… どうか彼らが幸せでありますように。弱い大人たちを許してください… これは社会の問題だ。そして、いつも犠牲になるのは子供たちである。

今日、たまたまマンションのエレベーターの中でそれ違った、男の子二人(9歳と7歳くらい)、女の子(4歳くらい)の兄妹が、子供だけでマンションのゴミ捨て場にゴミを捨てにきていて、次男が両手にゴミをいっぱいかかえ「(ゴミ捨て場の)扉があけられなーい」とか言っているのを聞いて扉を押さえて開けてあげた。すれ違い様に「ありがとうございます」と言った長男に萌えてしもた…。子供は社会の宝だ。

PS
ところで子役というと,この子を思い出す。野村芳太郎監督の『砂の器』の秀夫役の子。この子も不思議な運命を辿ったみたいね。(こちら)子供の目力、やばい。すごい。こちらはセリフが「とうちゃん!」しかなかった…というのもあるけど、この子もすごかった。