映画『カメラを止めるな』を観ました。なるほど、これは面白い!

話題のこの映画見てきました。


多くの人がSNSで、この映画を絶賛しているが「何も知らないで見た方がいい」とか「とにかく観に行け」みたいな感想が多く、誰も内容を説明してない…のが、余計惹くのか、平日午前中の映画館は、かなり大会場なのに満員であった。日本の映画館で笑い声が何度も起こるのも、この映画が初めてだったかも。

別に内容をある程度説明しても見て楽しいことに間違いは無いと思うので、ざっくり説明すると、ゾンビ映画を撮影のために郊外の廃墟に集った面々。ところがその撮影中に本物のゾンビが出現してしまい…  

最初は撮影している長回しのカメラワークに「ひどいな、このカメラワーク」と思いながら観る。が、しばらくすると「すごいな、これワンテイクだよね」と気づく。この部分だけで、なんと40分もある。(監督のインタビューによると、これ6テイク取ったのだそうです。しかもこれ1日2テイクくらいしか取れない。というのも、終わるとみんな血まみれになってしまうから/笑 採用になったのは最後の6テイク目だそうです)

そして、その後、次々とこの撮影の裏側があかされていくのだ。映画の中では怒鳴りながらも、実際は小心者っぽい監督も愛すべき素敵なキャラだったが、なんといってもプロデューサー役の小柄で威張っている女性が大ヒット。いかにもプロデューサーという感じで、とにかく笑える。現場の苦労を知らない、いや知ろうともしない。自分の手は絶対に汚さない上層部って、どんな組織にもいるよねぇ。こういう人たちは高い給料をもらい(もしくは稼ぎだし)現場からは距離を置いて、自分は安全地帯に立ちながらプロジェクトの美味しいところだけをすくいあげつつ賢く生きていく。この悪キャラをいかにもという感じで演じ切る女優さんはさすがだった。

一方の現場は必死。汗・涙・ゲロ(笑)・流血まみれ。それでも何がなんでも番組の成功のために必死で進んでいく。すごい。

それにしても、制作費はほとんどかかってないけど、愛と手間が最高にかかっている。そこがこの映画の最大の魅力だろう。何かの物作りに愛情をこめる人には、涙なくしては見れない映画だ。

300万ほどで作ってしまった、というのは、イヤ、ホントにすごい(日刊スポーツの記事より)。面白いものにはお金をかける必要がないという証明だろうけど、その分、時間はたっぷりかけていると想像できるから、つまり俳優やスタッフは、ほぼボランティアなんだろうなと想像するに至り(制作費において高いのって人件費であり、それは拘束時間にも比例する)意地悪い見方をすれば、本当に制作費が300だとしたら、この制作方法はちょっとやりがい搾取のブラックな感じもしなくもない。頭のいい人たちは、こういった企画には絶対に乗らないだろう。だからこの映画は映画バカのための、バカ映画だとも言える(褒めてますよ!)。この映画が当たって、映画館や配給会社だけではなく、どうか末端のスタッフまで潤っていますように(笑)

最後エンドロールで流れる、この映画の本当のメイキング・シーンにも非常に心を動かされた。この映画がヒットして、係った映画を愛する無名だった人たちは、さぞ嬉しく誇らしく思っていることだろう。なんというか、メジャーな制作会社、映画会社に一発くらわせてやった…くらい思っていいと思う。いや、思ってて欲しい。ホントに気持ちいい。ホントによく作った。


ただまぁ、ちょっとゲームっぽいというか、漫画っぽいのはいなめない。もちろん物作りの悲哀とともに父・娘の愛情物語も伏線としてあって、それはそれで良いのだけど… うーん、とはいえ、やっぱり漫画っぽいかな。でも観ている時は最高に面白いし、なんというか、細部を確認したいので何度も見たくなるのも事実だ。町山さんが「三谷幸喜っぽい」と解説していたけど、そうなのかもしれない。いや、オレ、三谷幸喜よく知らないし…(笑)是枝監督に「映画制作でやりたいことを表現したことはない」とか自慢げに言っていたらしい三谷幸喜(笑)。違うのは三谷幸喜がビジネスとして計算しながら、そして大変なプロフェッショナリズムの元、我慢しながらやっていることを、彼らは楽しみながら自然にやってのけてしまったことなのかもしれない。となれば、やっぱり楽しんで作っている方が愛があるから、やっぱりこっちの方が強い(笑)

いや、ホント、まぁ、よくできた映画だ。それは本当にそうだと思う。愛情をかけて作ったものって、こうやって人に伝わるんだね。そういう意味でもすごく勇気をもらった。
さてこちらはリアルな話であるが、この映画の監督のパパのfacebookが良い。特に話題になってるこの投稿は泣けるね…必読。町山解説も必聴です。

 

PS
とはいえ、三谷幸喜みたいな人はきっと世間に受けたり、ヒットしたりすることに快感をもとめているのだろう。それはそれで楽しいし、本人も充実してるんだろうなと想像する。でも音楽も映画も本も表現活動だからね… 自分の好きなものを思いっきりつくり共感を得られた時の嬉しさや一体感を手にしないでやる事に何の意味がある…って思うわけよ(と、ヒットを出している人に対する負け惜しみ/笑)

PPS
なんか今になって原作がどうこうという話題が持ち上がっているが、この方の文章を読むにつけ、監督たちは彼とコミュニケーションを取ろうとしても取れなかったのではないか、と想像する。芸術家で引きこもりにっぽくなっちゃう人は多いし、当時の劇の感想を見ても、まったく別の作品のようにも読み取れる。そもそもアイディアだけ出す人はこの業界、ホント多いんで、私はやっぱりあれだけの作品を実現させ、苦労して完成させた人を尊敬したいと思うね。いや、あくまで私の勝手な感想ですが。

PPPS