斎藤なずな『夕暮れへ』を読みました

濃密です…
いや〜、素晴らしいね。齋藤なずな。人間ドラマの真骨頂。

昨年出でたらしい本。90年代の8作の作品と、介護や家庭の事情を経て2010年代の20年ぶりに復活して発表した2作の合計10作を集めた短編集。特に復帰後の2話がずっしりと重い。こういうの大好きである。ちなみに初期の8作は、Kindle Unlimitedでも読めたりもするので、登録がある人は要チェック。

特に好きなのは少年時代の郷愁を誘う「スカートの中」。年老いた父を見送る「カウントダウン」、そして復帰後の2作:迫力の「トラワレノヒト」。死ぬことを受け入れられず、納得もできず、自由になれないまま亡くなる老女の話。これは本当に著者の母親のことを書いたのではないかと思わせる。そして独居老人が次々亡くなっていく様子を描いた「ぼっち死の館」(それぞれの老人のニックネームが爆笑だ)。こちらも登場人物は著者なのか? とにかく、どれも日常の話ながら、とってもパワフルでグイッと読者を物語に引き込むのだ。

絵はお世辞にもポップとは言えないけど、ものすごい迫力だ。特に老人を書かせたら、そのキャラクターの強さに圧倒されてしまう。一方の子ども子どもで無垢な感じで線も少ないながら、逆に残酷な印象も受ける。とにかく読ませる漫画家である。

最後に掲載された呉智英さんの解説「20年のブランクを超えて」も力強く「こう言う漫画家が今でも活躍しているのか!」と感動してしまう。もっともっと描いてほしいなぁ。