断捨離しなきゃいけないのに、またこいつが家に増えてしまった。いや、ありがたいんですが…ありがたいんですが。キッチンタイマーだそうです。
先週は北欧のマネジメント会社やレコード会社、出版社などがこぞって日本にやってきて、商談会やら何やらいろいろ行われ、そこでとある取引先からいただいたのだった。なんだかんだに出席して久々の現役感を味わったり、いや、もう自分にできることはないだろうと思ったり…
それにしても本当に各国どこも予算を使って自国の文化を売り込もうと必死だ。それは簡単なことではないと思うし、正直こういう国の予算でやってくる連中から受ける売り込みに対して斜めにみていた時期も私にはあった。アーティストと私の出会いは恋愛みたいなもので、誰かに計画されたお見合いみたいなものとは違う、と。そういう中2みたいなことを言っていた時代もあった。今は、ちょっと大人になって、そういうのもありがたいよな、と思うようになった。
実際こういう地道なプロモーションの努力って実を結ぶのよ。というか長く続けていれば、いつか拾ってくれることがあると、そういうことだけかもしれないけど。結局時間は1つしかない結果を呼ぶわけで、あとから「それは結果論だ」と言われればそれまでだけどね。何もやらなくたって時間はすぎていくわけだから、やっぱりコツコツとした努力は大事だ。(と、今読んでいる日本会議関連の本などを読んでも思う。コツコツした努力をバカにしていると痛い目にあう。最短距離なんてどこにもないんだから… それはさておき)
例えばアイルランドやケルト音楽についてはU2とか、エンヤとかの世界的ヒットがあって、これが全体に及ぼした影響は測りしれない。だからコツコツ努力より、一発の大きなヒットの方が文化のプロモーションには最適だろ、と思うのだけど、税金つかってやっているわけだから、そう話は簡単ではない。結果、多すぎるバンドが来日し、その努力の成果がよくわからないまま帰っていく。去年、いや、先週来てたバンドが誰だったかプロモーターが誰だったかもう思い出せない…というほどに。
なかなか難しい。
まぁ、でもこんな斜陽の、将来性があるんだかないんだかの日本洋楽マーケットに興味を持ってくれていることだけでも感謝だ。今や日本のこの市場は「もう日本はダメだ、中国に投資しよう」って言われて、いつ見捨てられるかわからない状態なんだから。「そんな音楽、日本じゃ売れないよ」的な横柄な態度を取るのではなく、この状況に感謝しないといけない。そして来日してくださった皆さんには、なんとか僅かでも希望を持って帰国していただかなければいけないのだ。
北欧の皆さんは、このあと韓国に同じようなプロモーションに行くという。韓国マーケットへの興味はとても理解できる。韓国のアーティストたちは今、アメリカやヨーロッパで大成功を収めている。彼らと共演できたりコラボできれば、自国のアーティストたちの希望も広がる。(もっともいわゆるJIMUSHOスタイル、ザッツ芸能界の世界だから、歯がたたない…ということもあるのかもしれないが…でも海外からのオファーというだけで、そのメリットは測りしれない)
一方、海外のアーティストとのコラボは。音楽出版の業界ではかなり進んでいるらしく、共作事業で実際あてているソングライターも多いらしい。でも一方で日本では、TV局、ラジオ局がアメリカなどでは違法とされている音楽出版社を持ち、政治的な力がなければオンエアすらも叶わないという圧倒的な現実もある。
いろいろ考えるにつけ、ほんとに私はコマーシャリズムとは無縁の伝統音楽のジャンルでよかったなと思ったりもする。あくまで「文化的」という立ち位置がある程度確保できている伝統音楽。私は本当に偶然、流れ流れてたどりついたのがこの世界だったというだけだけど、これでよかった。何が起きても、これは個人のことではなく、200年、300年続く伝統音楽の今の形だ、と変な納得がいく。私はその隅っこに居場所をいただいただけだ。だから、私もそこにお礼を返していかないといけない。
…などなど(笑)考えても考えても結局答えはなく、現実といえばポップスの世界同様、あの手この手を使って自分に縁のあるアーティストたちと一緒に頑張るしかない。
とはいえ、こういうことをあまり真剣に悩むのも暇な証拠。そんな同情は彼らには必要もなく、税金を使ってやってくる彼らに必要以上に感情移入したところで何も変わらないのだ、ということを再認識するのみだ。彼らは日々のやるべきことをやっているわけで、そこで余計なことを言って要らぬ波風を立てるほどのことではない…といったところか。
でも、そういう場であるにもかかわらず、多くの関係者の、その中をいかにくぐりぬけ、上手く自分のやりたいことを実現させるかという思惑も見えかっくれしている。そんなこんなが交錯する1週間でした。
PS
今、北欧関係で一番やりたいと思っている人。アンティ・パーラネン from Finland。昨年のFinEst Sounds以来、何もできてないや…