角幡唯介さん『エベレストには登らない』を読みました


角幡さん、新刊! イエーイ。嬉しいなぁ。また新しい本が読めるなんて。ウヤミリック(角幡さんのグリーンランド 犬)の表紙も嬉しいBE PALでの連載をまとめた『エベレストには登らない』が出ました! やったね〜

BE PALといえば名門アウトドア雑誌。昔、レコード会社勤務時代(30年くらい前か?)、FM誌を担当していたことがあってFMレコパルという雑誌の編集部にしょっちゅう通いお世話になっていた時代があった。レコパルの隣がBE PAL編集部だったので、こちらは長く続いてる名門雑誌という印象だ。

角幡さんのこの連載はBE PALを本屋でみかけると買って読んでいたので、すでに読んだものが1/3くらいはあったかもしれないが、やっぱりまとめて読むがいいね。また最初の方の連載は2013年とかで、まだまだわたしが角幡さんの存在気づく前だったので、さすがに初めて読むものばかり。正直言って、最初の方はいまいちピンとこなかったけど、後ろの方になっていくにつれ、いつもの角幡さん節になってきたから、読んでいて嬉しくなる。ご本人も後書きで書いてらっしゃるが、本人が書くのを楽しむと読者はそれに共鳴するんじゃないかな。少なくとも熱狂的なわたしみたいなファンはそうだと思う。

読んでて嬉しくなったのは『極夜行』の裏話はもちろんだけど、鎌倉に家を買う経緯や、『漂流』の裏話あたりだろうか。『漂流』の本を出たことを地元の人たちが喜んでくれた、というくだりにはグッと来た。そう、みんな話を聞いてもらいたいのだ。漁村の人たちも、グリーンランド の人たちも。もちろん角幡さんの本は著者読者両方の自分の中にぐいぐい入っていく感覚と人生とは何かとかそういうことをあれこれ考えさせられるところに魅力があるわけだが、やはり対象となる土地や人々の暮らしを伝えていくというミッションも同時にあるわけで、そんなグリーンランドや海の人たちから自然と人間との距離感や、探検の意味を考えようとする角幡さんの思考が本当に面白い。あとグリーンランド からウヤミリックを日本に連れてきたいということで奮闘した話も良かったし、『おクジラさま』のドキュメンタリーを見たあとの角幡さんの感想というか考えを聞くのも興味深かった。

1つ1つが短いので、それこそご本人がいうとおりトイレに置いて読んでも楽しいと思う。角幡本の最初の1冊にはどうかなとは思うが、角幡本を読み尽くした人には、あぁ、あれはそういうことだったのね…と膝をうちたくなる箇所がいっぱいで、やっぱり必読です。