それにしても装丁がいい。和田誠さんのイラストが印象的だ。一人出版社である夏葉社のこれが最初のリリースだったように記憶している。各書店で積まれて本当に話題になった本だ。当時、すぐ買って読んだはずなのだが、その頃のブログを探っても感想文が見つけられない。ってことは読んでないのかも?(笑)
頭が弱い私は読むと、読んだその先から忘れていく習性があり、このブログに感想をまとめているのも、一番の目的は自分が本から得たポイントを忘れないようにするためなのだ。
…という事はさておき…。
というわけで、引っ張り出して再読。なんかこう、夏葉社さんの世界というか、こういう研ぎ澄まされた美しい世界に浸りたくて再読した。ほんと間違いないんだよね、島田さん(ひとり出版社、夏葉社の社長)の世界はね。
これもかなり前の、昭和初期とかに出てずっと絶版になってた本の再リリース。3編あるが、それぞれ翻訳の先生が違っていたり…。通常、フィクションはあまり読まない私なのだが、たまに読むとえらく感動できる。
短編3つ。1つは美術学校での教授2人のすれ違い。2つ目は冷戦下のロシアで作品を託される妻に先立たれたアメリカ人のライターさん。3つ目はショッキングなタイトルだが微妙な親子関係を綴った物語。
どれも静かだがジワジワくる。感想はそれに尽きる。ジワジワくる。派手ではない。でもどうなっちゃうんだろうという気分にさせられるので、物語の世界にがっつり引っ張られる。こういう時期に読むには最高かもしれない。
私はお風呂の中で読んでました。でもこの素敵な装丁が濡れちゃうのがイヤだったけどね。私にしては珍しく、そんなことも考えた。普段はお風呂でバキバキにしちゃう本(笑)。
それにしても、これがジューイッシュな世界なのかな。そうそう2編目で原爆についての言及があるのにも注目。大好きな『昔日の客』でもそうだったけど、このくらいの時代の古いものやセピア色の写真って、それだけでなんか落ち着かせてくれる何かがある。普遍的なものを取り上げているからなのかな。そして想像できないほど前の話じゃないからなのかな。どの物語にも、人間関係のぎこちなさが丁寧にかかれている。
ほんと私は本は読み終わるとだいたい誰かにあげちゃうのだけど、島田さんの出すやつは、なんだか手元にずっと置いていたくなる。本屋の親父の物語『昔日の客』も再読しようかなと思いつつ、積読山がすごいので、またそっちに戻ることにする。