ピーター・バラカンさん新刊『テイキング・ストック』を読みました

今回「バンドにエイド」のタイトル付けにおいてもお世話になったピーター・バラカンさんの新刊がでました。なんと「ぼくがどうしても手放せない21世紀の愛聴盤」ということですが、そうか…2000年も、もう20年だもんなぁ。
こんなふうにカラーでアルバム1枚1枚をレビューしています。
そして、このようにすごいリストがついている…
こちらはピーターさんがRolling Stone誌に寄稿したというAll Time Best 50 。すでに15年前のものだそうです。「何がきっかけで混ぜてもらえたのかいまだに不明です」とあくまで謙虚なバラカンさん(笑)
ピーターさんのセレクトと私の好みでは、アメリカものが重なるかなー 確かに今、アメリカの音楽はおもしろい。リアノン・ギデンス、そしてベラ・フレック、クリス・シーリ、パンチ兄弟など。とはいえ、実際、知らないアーティストばかり。うーん、音楽を楽しむリスナーとしては最高の時代に突入しました。

そして何を選んで良いかわからないリスナーにこういったディスクガイドは必須アイテムです。
あと嬉しいのは最後のリストだけど、ウチもちょっとだけ流通させたこの作品、リバーダンスの源流とも言うべき名盤中の名盤が入っていたこと。


セヴェスチェーン・マルータの入っているトラックとかもあって、すごいんだよ。このアルバム。なんというか一言でいうとアイルランド音楽ということではなく「アンディ・アーヴァインを中心としたアイリッシュ・ミュージシャンによるバルカンごっこ」というのが適切なミュージシャンかな。もちろんニコラ・パロフとかも入っているのだけど、とにかくかっこいい。ウチのCDショップで、まだ在庫はちょっとだけあり。もう残り少ないよ。

あとはアイルランド音楽ではCoolfinとかも入ってる。チーフタンズとヴァン・モリソンのあの名盤も。

それにしても、本当に90年代のアイルランド音楽は素晴らしかった。それでも、こうやって後世においても何度も語られ残っていく名盤は、なかなか出てこない。今ももちろんアイルランド音楽は素素晴らしいけど、90年代のこれらは、また違うフェーズなんだよね。あの時の、あの興奮するような感じはもう戻ってこないのかも。それを考えると本当に音楽をプロモーションする身としては「今」が大事。「今」しかない、とまた改めて思う。

それにしても例えばこのディスクガイドでも紹介されているような、例えばサリフ・ケイタのクラスの、ワールド普段聞かない人にも親しんでもらえるような、他とレベルの違うアーティストがアイルランドや北欧のシーンからでてくるといいのになぁ、とは思う。

私はその音楽がアイルランドだから、北欧だからといってプロモーションしているわけではない。数ある音楽の中で、すべてのジャンルを含めて上で「この音楽を聞かなきゃ行けない理由」がちゃんとあるものを提示しているつもりだ。良い音楽は今や地球上、すごく多いのだが、「絶対にこれでなきゃだめ」という最高中の最高のものを持ってきて、初めて日本でなんとかやっていけるようになる。そのくらい競争は厳しいし、本当にイバラの道なのだ。


それにしても、世間一般の音楽ファンと、伝統音楽好きとの間には大きな溝がある。前にも書いたと思うけど、世間がのぞんでいるのはポップスやロックの「アイルランド風」「北欧風」の味付けであって、まだまだオーセンティックものが受け入れられるような土壌にはなっていない。そういう意味では私たち、こういった音楽をプロモーションする立場の人間はもっとがんばらないといけない。

それにしてもバラカンさんのセレクトは、すべて、ブルーズからポップス、ロックそしてワールドと、どんなジャンルになろうとも「真の意味でのソウルミュージック」なんだよね。音楽に嘘がないんだよ。そこが素晴らしい。

と言うわけで、この本はおすすめです!!