アイルランドのアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーンの最新作「ウルフウォーカー(原題:Wolfwalkers)」試写で拝見しました。ありがとうございます。
まず一言で言っちゃうと、控えめに言っても「最高です」 !! 野崎のいう「最高」ってのはマニアックすぎてヒットしないというふうに思われる方も多いかもしれませんが… いや、いや、いや、これは絶対にヒットします!!! 私が断言しておきましょう。すごい傑作が出来上がりました。
先にマニアの方のためにざっくり説明しちゃいますと、本作はご存知のとおり「ブレンダンとケルズの書」「ソング・オブ・ザ ・シー 海のうた」に続くカートゥーン・サルーンのケルト3部作の完結編ともいうべき作品。まず以前の作品と比べても本作は圧倒的に物語がわかりやすい。これ大事です。なんというか正直、初期の作品から見ていた自分としては、一作ごとに彼らの作品が良くなっていくのをリアルタイムで体験できて、妙に嬉しい。ついにカートゥーン・サルーン、そしてアイルランドもここまで来たか、すごいぞ、と(笑)
それにしても子供の声がすごくいいねー アイルランドの俳優のお嬢ちゃんたちが担当。あ、あと「コミットメンツ」や「アルバート氏の人生」「シング・ストリート」でもお馴染みのマイヤ・ドイル・ケネディがお母さん役の声で出てきます。そして注目の音楽はカートゥーン・サルーンでは毎度お馴染みキーラ。実際、音楽は非常に印象に残る映画です。挿入歌で女性ヴォーカルが参加してますが、これはノルウェーのシンガーが歌ってるんだって。これもなかなか良いですよ。(下にリンク貼っておきます)
なお音楽といえば、冒頭の方に街の市場のガヤガヤしているシーンがあるんだけど、そこで演奏しているミュージシャンたちのキャラクターが妙にキーラの連中に似ているんだよな。オスノディ三兄弟の長男とか(笑)。音楽ファンはここに注目。あのシーン、もう一度確認のために見たいなぁ…
とにかく前作2作に比べて話のテンポがよく、展開も目まぐるしいので飽きさせません。ドキドキハラハラ、そして女の子同志の友情、父と娘、母と娘の関係、そして子供の成長もきっちり描かれています。狼を排除しようとするイングランドの悪者の威張るピューリタンのオヤジというのも、非常にわかりやすい。
いや、これ実際、カートゥーン・サルーンは宮崎アニメ超えちゃったんじゃないだろうか、と思います。アカデミーのノミネート常連の彼らですが、これはもう取っただろう。そのくらい完成度が高い。普段アニメーション映画はみない私なので説明がうまくできませんが、キャラクターも愛らしく、例えばウルフウォーカーに噛まれた人間はウルフウォーカーになっちゃうとか、そういう細かい設定がファンタジー好きにはたまらないことでしょう。かつ森や城壁に囲まれた町の背景も美しく描かれ、動きも絶妙で、とにかく画面を見ているだけでも拍手喝采です。
加えてこの映画がかかるのが、恵比寿のガーデンシネマだけかと思ってたら、有楽町のヒューマントラストでもかかるみたいで、これは日比谷に映画にくりだすマダムたちの心を鷲掴みすること請け合い。うん、間違いなくヒットするでしょう。
…すみません、興奮しすぎました。ストーリーを簡単に説明すると、場面は中世のアイルランド。ピューリタンたちの侵攻でキルケニーにやってきたイングランド人の父と娘を中心に物語は展開していきます。父は森で狼たちを追い払う仕事をしています。娘は城壁で囲まれた街の家の中に閉じ込められ家事をするように命令されますが、好奇心が強くて父の言いつけを守らず城壁を乗り越えて冒険に繰り出します。そこで偶然にウルフウォーカーである女の子と出会います。森を焼き払って狼たちを追い出そうという悪くて偉いおっさん(笑)…こいつがお父さんの仕事上のボスなんですが、こいつの怒りが爆発し、ついに森が焼き払われることになります。友達と彼女のお母さんを助けるため、必死に頑張る娘。もうとにかくドキドキハラハラ。あっという間の100分でした。
アイルランド、キルケニー。綺麗なところですよね。また行きたいなぁ! 音楽めっちゃ良いですよ、この映像、見て見て〜っっ!
下の映像は挿入曲を歌っているノルウェーのシンガーのAURORA。映画ではヴァージョン違いになりますが、同じ曲を歌っています。どうやらこの映画の構想を練る中で、ランニング中にこの曲を偶然聞いたトム・ムーア監督が、この歌が森を走り回るオオカミになった女の子たちの心の声のようだと思い、映画作りのインスピレーションにもなったんだって。そこで映画のために改めて、この曲のアイルランド風のバックトラックを作り、ロックダウン中にリモートで録音を行ったとのこと。(プレス資料より)うーん、素敵!
さて、この「ウルフウォーカー」の配給元であるチャイルドフィルムさんも「ケルト市」に登場しますよ。「ウルフウォーカー」関連のグッズは間に合わないと思いますが、カートゥーンサルーンのグッズのあれこれ、お預かりして販売する予定です。楽しみにしていてください。
「秋のケルト市」ですが、会場は小さく現在のコロナ禍の状況をかんがみまして入場制限をかけております。間違いなく入場されたい方は事前予約をすることをおすすめいたします。現在の混み具合や予約の方法など、詳しくは特設サイトへどうぞ。
そして「ウルフウォーカー」は東京では有楽町ヒューマントラスト、そして恵比寿ガーデンシネマ、大阪はテアトル梅田他、劇場リストはこちらを参考にしてみてください。10/30(金)から!