映画『ベイビー・ティース』を拝見しました。

 


映画『若草物語』で現在ベスにぞっこん中の私には最高の映画「ベイビー・ティース」。ベス役をつとめたエリザ・スカンレンが主演。2019年の作品だから「若草物語」のあとにこの作品に参加したんだね。いやはや、ものすごい映画でした。オンライン試写で拝見しました。ありがとうございます。

16歳の癌におかされた少女。家族はボロボロなだけに、いちいち揺さぶられる。だらしがなく薬中、しかし優しさはあるボーイフレンドは、不器用ながらも彼女を包み込む。そして映画は、余命いくばくもない彼女が必死で恋に生きる姿を描いていく。

ストーリーを読んだだけで、激しくて辛い映画だったらいやだなと思われる方も多いだろう。確かに見ててつらいし、最後は悲しいエンディングになるわけだけど…   なんだろうなぁ、でも妙にドライな部分もある。本人は死ぬことを怖がっておらず、なんというかその死にすらポジティブな意味を見出している。すぐそこに迫る死に。自分の短い人生に。この短い生命の中でも彼女は必死で生きて、恋をしたってのが、妙にうらやましくもなるんだ。この輝きは本物だ。イシグロがよくいう「人間は与えられた運命を受け止める、そしてその中で精一杯の尊厳を維持しようとしていく」ということに通じるのかもしれない。これが彼女の人生のやり方だ、ってことなのかも。このポスターの彼女の髪の色のようにヴィヴィドな世界観で、なんかすごくよかった。スカンレン、すごくいい女優さんだし、何より作品に恵まれている。とにかく全身全霊で最初で最後の少女の恋を演じている。

なんというかティーンエイジャーで未熟な恋なんだけど、無防備な恋ではない。損得なしでまっすぐ人を愛しているようでいて、実は計算づくなのではないかともおもわわせる。そこが、ちょっと『君の名前で僕を呼んで』を思い出したけど、あれとは大きく違う。あぁいう無防備な「痛さ」はない。男の子と女の子の違いかな。あぁ、やばい。でも本当に彼女は私なんかよりもうんと強い。うんとすべてをわかっているような印象だ。

しかしエリザ・スカンレン、すごいね。「若草物語」でも「死ぬのは怖くない」って言ってみせる達観した表情と、持っている人形にご飯を食べさせたり「おままごと」をするベスの両方が素敵に演じられていたけど、今、実年齢は21歳だと思うんだけど、こういう風に16歳の子の役をこんなにヴィヴィドに演じられちゃうのだから、本当にすごい。

ボーイフレンド役、両親役の二人とも素晴らしい。まぁ、それぞれがエキセントリックな登場人物たちではあり、とにかく激しい。どなったり、怒りまくったり、感情爆発させまくりで、もう大変な騒ぎだ。でも、その中でも際立ってパワフルで、かつ力強く、幸せそうなエリザ・スカンレンが演じるこの女の子はすごい。すっかりファンになりました。また次の作品が楽しみ。

公開はまだちょっと先です。2月19日公開予定。