昔の映画を見ています:音楽映画 MORE

ダブリンの夕暮れ フィルターなし


引き続きこの状況下で、夕飯後に編み物をしながら昔の映画を見る、という習慣が続いております。というわけで、今回は音楽映画の続きを。まだまだあった、大好きな音楽映画。

やっぱり最高なのはこれ!! というわけで、おそらく私が大好きな音楽映画の1位はこれからもしれません。『コミットメンツ』 もう何回見たかわかりません。久しぶりに見て、自分がいかに細部まで記憶しているかびっくりしています。とにかく好き。ロディ・ドイル原作、アラン・パーカー監督。

ボーカルのデコとマネージャーの彼がいいですよね。グレン・ハンザードも、『ONCE』よりもちゃんと自ら演技している感じがする。やっぱアラン・パーカーさすがだわ。そしてて音楽がとにかくいい! やっぱり音楽映画においてこれは最重要ポイント。

それにしても90年代のアイルランドって特別な魅力があったと思うんですよ。この映画のロケ地はダブリンに滞在したことがあるなら、どこも分かる。あの海辺のライブハウスはまだ存在するのだろうか。私もTVの収録を見に何度か訪ねたことがあります。懐かしいなぁ。あと当時路面電車も地下鉄もなかった(今も地下鉄はないけど)ダブリンのをDARTのシーンはいいですね。

それにしても本当に懐かしい。みんな貧しかったけど、パワーがあった。「オレは負け犬じゃない」そういうパワーがあった。

そしてバンドあるある話の連続。絶えない喧嘩、個人的問題を持ち込むメンバー、バンド内でできちゃうカップル……バンドの成功とは反比例で問題は累積。とうとう爆発して終わりを迎える。でもジョーイが言うように「こちらの方が詩的」だ。

そして私ったらこの映画を何度も何度も見たのでした。そしてきたない言葉をいっぱい覚えた。こう言う風に自然にしゃべれたらいいな、っていつも思ってた。「ファッキン・イージット」とか「シャイト」とか「ボロックス」とか。赤毛の人を「ジンジャー」って差別用語で呼んだりとか、テレビのことを「テリー」って呼んだりとか。牛乳をいれた真っ黒な紅茶をマグで飲むところとか… この映画のすべてが愛しい。

そのコミットメンツでギタリスト役をつとめたグレン・ハンザードの「ONCE ダブリンの街角で」もいい。二人に名前がないところとか、ロマンス的に成就しないところとか、そのすべてがロマンチック。っていうか、私はこの物語は「ダブリン」の物語だと思っている。移民を受け入れ変わっていくダブリン。この映画が描いているのはダブリンの街の優しさだ。(余談だが同じくNew York Timesのファッションページで有名なビル・カニンガムのドキュメンタリー映画もビルの映画というよりも「ニューヨーク」という街の懐の深さをよく表している)

そしてこの映画の文春での評価もすごく良かった。評者の誰かが「周辺おやじの優しさ」と評価していたのが心に残っている。マルケタにピアノを触らせてやっている楽器屋の親父、修理を営むグレンのお父さん、最初は乗り気でなかったのにみるみると音楽にのめり込んでいくスタジオのエンジニア、いきなり歌いだす銀行員など… 本当に最高に親父たちが魅力的なのだ。

まさかまだ見たことない人はいないと思うけど、絶対に絶対に見て!

そしてこれは「友情」の物語だと思う。だから「二人が恋におちて、うんぬん」とか映画評で書かれているのをみるとイライラする。違うって、これは友情の物語なんだって! もっとも確かに男側がぐらぐらしているのが見てとれるけど… これは友情なんだ。二人の友情。

超低予算な映画だったこともよかったよね。本当にすべてがいい。ジョン・カーニーはこの作品のあといろいろな音楽がらみの映画を発表したけど、どれもイマイチ。私は、仲間の間でも絶賛されていた『シング・ストリート』ですら、全然乗れなかった。結局彼は『ONCE』を超えられていないと思う。ま、まだまだ先が長い監督だと思うので、これからも彼に期待したいね。

ジョナサン・デミの『幸せをつかむ歌 Ricki and the Flash』は、数日前にやっと見ることができたメリル・ストリープ主演の素敵な音楽映画だ。デミ監督は本当にトム・ペティの「American Girl」が好きだよねぇ。羊たちの沈黙でも誘拐される女の子が誘拐直前に車の中で歌ってたもんね…。そんなわけで冒頭のリッキー役のメリルの歌にすっかりやられてしまう。同じメリルの「音楽映画」の『マンマ・ミーヤ!』が、私的にはイマイチだったのに比べてこっちのメリルは「ロック母ちゃん」という役柄がめっちゃいかしていてとても魅力的。最後のウェディングにすべてを浄化させてしまうところなど(いや、すべてじゃないんだけど、なんとなく浄化されたように思わせてしまうところなど)は、同監督制作、ロビン・ヒッチコックも登場する映画『レイチェルの結婚』をも思わせるが、まぁ、そうね、人生なんて、そんなもんでしょう(笑)そうやってなんとか折り合いをつけていくのだ、冠婚葬祭で(笑)

そしてここでも「パパなら許されることがママだと許されない」…というフェミニズムな視点もしっかり描かれていて素晴らしい。それにしても音楽がいい。ロック母ちゃんのボーイフレンド役のリック・スプリングフィールドも最高にいかしている。このテのアメリカの音楽って、めっちゃ元気になれるんだよなー。本当にすごく元気になれる映画だ。デミ監督はこれが遺作…となるのかしら、とにかく最高でした。ロック母ちゃんの娘の役をメリル・ストリープの本当の娘が演じていて、まぁ、これは可もなく不可もなくって感じだけど、悪くはない。それにしても元旦那の新しいきちんとした奥さんが黒人女性でロック母ちゃんのメリルとは対象敵な落ち着いた人っていう設定の妙も最高!!って感じなのだ。いやー、いいよねぇ。