『サンドラの小さな家(原題:Herself)』をオンライン試写にて一足早く拝見しました。ありがとうございます。一般には、4月2日から公開されます。詳細はこちら。
いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー すごくよかったです。ダブリンって、こういうとこあるのよねぇ…と。結構最初の方から泣けて泣けてしょうがなかった。街の人たちのさりげない優しさが、特にこのコロナ禍の地球では響きまくります。映画のキーワードは「メハル」。みんなが集まって助け合い、そうすることで自分も助けられるというアイルランドの精神。その精神がこの映画の真ん中にあり、またよくよく見ればセント・ブリジットの物語へのオマージュともなっている。でも、それを置いておいてもドキドキハラハラもあり、あっという間の90分でした。監督はメリル・ストリープ主演の『マンマ・ミーア』や『鉄の女』を手がけた女性監督フィリダ・ロイド。
それにしてもアイルランドはしみじみと人がいいんだよなぁ。いいや、アイルランドでなくて東京でもこれは可能だと思う。うん、なんというか、みんながちょっとずつ助けあったり譲りあったりすることで社会がうんとよくなる。ちょっとした親切で、自分も幸せになれる。コロナ禍の地球で、なんとも考えさせる映画でした。
最後の方でサンドラの歌う『The Lass of Anghinm』が印象的でした。これはリサ・ハニガンのヴァージョンですが、貼っておきますね。
こちらはジョイスの『ダブリン市民』からのシーンも。同じ曲です。ここに詳しい解説あり。
しかし、この映画、企画自体がなんと主演のクレア・ダンの持ち込みだったようで、そんなストーリーにも感動しちゃいます。
彼女がニューヨークに住んでいる時にダブリンの女友達から突然電話がかかってきた。いわく「ホームレスになっちゃった」という彼女は、3人の子供をかかえてDV夫から逃げ出し、結果ホームレスにはならなかったものの、実家の小さな部屋で子供と一年あまり不自由さの中で暮らしていたそうですが、そういう社会の不条理などが、この映画の脚本家であり主演であるクレアをこの映画の制作へと突き動かしたのだそう。うーん、女性版新星ケン・ローチ?!というのは、褒めすぎかも…
でもアイルランド人って、正義感ほんとに強いんだ。そして友達のためなら、自分には思ってもいないような力が出る時がある。
同じアイルランドが舞台の『アルバート氏の人生』、それからスケートのトーニャ・ハーディングの自伝的物語『I, TONYA』も。それぞれ主演女優さんの持ち込み企画だった。
そのせいか、なんというか、演技の迫力が違う。当然だよね、だって「自分の企画」なんだから。誰かが企画をたてて、そのオーディションのニュースをつかみ、応募してみるのとは訳が違う。
もっとも、この映画の主演のクレアは、当初脚本だけ書いて自分で演じる予定はなかったのだそうです。でもこの映画のためにあれこれ動いているうちにみんなから言われて自然とそうなったんだって。ちょっと映画ができるまでのストーリーが、この映画自体のストーリーとシンクロしていきますよね。
そしてサンドラを手伝おうと少しずつ仲間が集まってくる。映画を通じて社会問題の解決、ということに目覚めた彼女。自分でも「ほんと馬鹿なことしているな」「私ったら正気を失ったかも」と思ったそうだけど、いろいろリサーチをしていくうちに「いや、君は正気をとりもどしたんだ」と周りが励ましてくれるようになっていったんだって。(と、プレス資料に書いてありました。ありがとうございます)
うん、でもほんとだ。映画を作る彼女自身がまるでサンドラ本人みたい。
主演のクレア・ダン、私は初めて知ったのですが、彼女が評価されたのはこの一人芝居のステージだったらしい。こちらも社会派な内容。トレイラーみたいな動画を見つけたので貼っておきます。
彼女の左目の下の痣だけど、本物なんだね。うん、とってもチャーミングだと思う。サンドラって女優さんはこの地球上に多いから、わかるように神様が印をつけてくれたんだね。(映画の冒頭に出てくるセリフから)
それから、この超正しいダブリン…いや、ドブリン訛りも最高です。
それと原題の『Herself』って英語のタイトル。すごくいいタイトルだと思う。でも確かに日本語にしちゃうとわかりにくいので、『サンドラの小さな家』は良い日本語タイトルは正しいと思うけどね。それにしたって『家』なのがいいわ…。最近流行りの「おうち」とか言わないのがいい。「おうち」って言葉どうも嫌い。だって迫ってくるのはなんとなくの不安なんかじゃない。厳しい現実なのだ、毎日の生活なんだ、明日の食べるものなんだって強い意志が感じられる。うーん、とにかくたくさんの人に見てもらいたいな!!
4月2日より劇場公開。詳細はこちら。