不信のコスト

緊急事態宣言がまた始まった。イベントのキャンセル案内の連絡が来たり、閉鎖や閉館などの情報が流れてくるたびに、主催者や関係者の悔しさや無念さを思い、心が痛む。今度の緊急事態宣言は、短期かつ厳しい。そして内容には納得しかねるものが多い。これが効果があるのかもまったくわからないけれど、とにかくそういうことだ。

政府が国民を信じていない、国民が政府を信じていない。その結果がこれだ。私たちはこういう国に住んでいるということを改めて認識しないといけない。

たとえば水道の蛇口をひねった時、そこから清潔な水が流れてくるということを疑いだしたらきりがない。時間も検査するすべもない。でも今や政府が出してくるメッセージを、国民はそのまま受け取るほど政府を信じていない。

そんなふうに不信のコストは本当に高い。一方で、信頼できるというのはなんと素晴らしいことなんだろう。例えば誰かに何かの仕事をふる時。この人にお願いすれば大丈夫という信頼ができることのなんと恵まれたことか。

世の中こういう状態が進むと、ますます拝金主義が進み、もはや信頼できるのはお金だけ…という状況になるんだろうなと思う。ひどいな。

お金にしたって、普段税金を払い、消費税を払い、国民健康保険料を払い、それらを信頼して、自分の普段「考えなきゃいけないことリスト」からいろんなことを頭から外し、いろんなことを政府にまかせて、自分のやるべき仕事に打ち込んできた。ところがその信頼はコストにたるものではなかった。こんなことにコストをかけはじめたら、いくらあってもカバーできない。全部、不信、不信、不信だ。

こんなんで、いったい何を信じればいいのか。

北とぴあの公演は5月11日まで頼りにしていた北とぴあチケットセンターがこの期間閉鎖。もちろんWebで購入とはできるけど、年配の方はチケットセンターを利用することが多いので、これは本当にいたい。

TOKYO SCREENINGだって、こんな小さなイベントやっても全然利益にはならない…というか、返ってお金を使い投資している状況だ。ただ少しずつでも「動いている」「活動している」というアピールがなければウチみたいな小さな事務所は助成金も申請できないし、ミュージシャンやスタッフなどを助けることもできない。

下記の記事でユーロスペースの北條支配人。一緒にお仕事したことあるよ。『サウンド・オブ・レボリューション〜グリーンランドの夜明け』をかけてもらったことがある。あとカウリスマキの映画をイベントでお借りしたことも。本当にそうだね。香典かよ、って感じ。私たちは大人しく黙っているしかないのだろうか。

お花はこういう渋い色が最近はやっているよね… 700円もした! でもこういうのって1シーズンで死んじゃうんだよな…。もうガーデニングと編み物でもして、何もしないのがいいのか。なんかやればやるほどがっかりさせられる感じ。

はぁ… さすがの私も元気ないわ。

公演はがんばる。政府は信じられないけど、音楽は信じられる。詳細はこちら。




『レモングラス』
日本統治時代のミクロネシアで現地の女性によって作られ、1950年代小笠原の父島に伝わった。小笠原諸島は1861年に日本領となる。先住していたのは欧米系の捕鯨漁師とポリネシア系の家族だった。現在94歳のイディス・ワシントン(日本名・大平京子)さんは、この歌を語り継いでこられた。小笠原では「レモン林」という題名で知られている。  『レモングラス』  若い二人ははなれているけれど でね  やくそくしましょう またあう日の夜に  若い二人は ひとめがはずかしい でね  レモングラスに かくれて はなしましょう  レモングラスのあまいかおりの なかで  キッスをしたのを お月さまがみてた   平和になったら 二人はカボボして  新婚旅行は 内地(ないち)へゆきましょう


「でね」っていう呼びかけが、めちゃくちゃ残るミクロネシアから小笠原へ伝わった伝統歌。ここに詳細がある。