唐澤克之先生、ありがとうございました


お世話になったお医者さまの先生が亡くなりました。お世話になったといっても、私は一度診ていただいただけでしたが…

すごく印象に残った先生でした。というのも、駒込病院の他の先生たちが皆若くて(執刀医の大ベテランの先生こそ私と同じ年か1つ2つ上くらい)フジテレビのドラマにでも出てきそうな印象だったのに対して、唐澤先生は(まだそれほどお年ではないのに)優しい昔ながらのお医者さんといった雰囲気だったからです。

ニコニコと診察にあたってくださり、私の担当医ではなかったのだけれど、たぶん駒込病院で放射線治療を受ける人間は、部長かつ名医である先生と一度お会いする機会が誰にでも与えられるのかもしれません。私も普段診てくださる若い女性の先生とは別に一度、診ていただく機会を得たのでした。

私ががん患者にしてはまだ比較的若いから「まだお若いですからね、がんばりましょうね」とか言ってくださり「治療をはじめてから数字がぐんぐんよくなってますよ」と言って、ぐんぐんよくなってるグラフをこちらが頼む前に具体的にプリントアウトしてださったのは、そういえば唐澤先生だけです。

駒込病院の私が受けた治療コースは実は標準治療ではなく、いわゆる臨床コースで、標準治療は膵臓癌 → 発見したら即手術、そのあと転移をふせぐために放射線というコースなのだけど、私が受けたコースは、先に放射線を唐澤先生の指導のもと受けて、がんを小さくしてから外科の先生が執刀する…というものでした。このコースを説明してくれた大学院生の先生は、とてもわかりやすく説明してくれたこともあり、私はその場ですぐに臨床コースを選びました。まぁ、でも臨床コースといってももう10年くらい実績があるらしいんですけどね。こういう先生方の努力によりがん治療は日々前進しているんだよなぁ。

おかげ様で、今のところ私は「とてもグレイ」ながらも無罪放免で日常生活がなんとか送れるまで復活しています。がん治療は日々すごい発展を遂げていますが、それが大変な関係者の日々の努力にささえられているということを私たちも認識しないといけません。実際、膵臓癌患者の10年生存率は今でも5%くらい。他のがん患者さんとはわけがちがう。私はその5%になれるのかわからないけどね。先生たちの頑張りを見ると、思わず「がんばります」とか思ってもいないことを言いたくなる(笑)

それにしても唐澤先生がいなくなるとは日本の放射線治療の大きな損失だと思われます。突然のことだったようで、ご家族の方、スタッフの方のショックは計り知れません。

この下記に紹介した患者だった方がブログで書かれているとおり、自分が生き続けることが先生へのお礼になるのかもしれません。私は普段、自分が生きることにはあまり執着していないつもりなんだけど、この方のブログを読んで、なるほどこういうことなんだなと思った。こうやって人間はいろいろな人と関わっていくうちに、生きねばならぬってことになるんだなぁ、と。普段一人もので気楽な私でもそんなことを考えました。それにしても私がまだ生きていて、そんなに年上でもない唐澤先生が急に亡くなったっていうのが、信じられない。ご冥福をお祈りいたします。

 

今回、初めて知ったのですが、奥様もお医者さまだったんですね。(奥様は別の病院に勤務)