繁延あづさ『ニワトリと卵と、息子の思春期』を読みました。なるほど面白い!


ちょっとブレイディみかこさんの本を思い出させた子育て中のお母さんのエッセイ。いやー 売れてるのわかるわ。最初の章で、ぐっと読者を掴むし、めっちゃポップだしグイグイ読ませるし、これは最高。あっという間に読めた。

ただほんとに実際の生活を書いたものだから、どうも最後の読後フィニッシュ感が物足りなかったのだけど…というか「続きが知りたいー」という気持ちだけが残るのであった…

でもこの子すごい! 私はめっちゃ感動した。子供ってすごいよなぁ。っていうか、この長男最高。めちゃくちゃリアリスト。もう最高に応援したい。っていうか、この子、めっちゃビックになるんじゃないか?

一方きついようだけど、このおとうさんとかちょっと情けなさすぎる。子供とちゃんと話をしていないし、自分は結局失業中だ。このお父さんは、長男からもっと学ぶべきである(あ、「べき」とかまた言っちゃった)。

最近の子ってみんなそうなんだろうか。でもウチの姪っ子や甥っ子を見ていると、全然牧歌的で全然だめなようにも思えるんだが…この長男ほんとにすごい。

なんかお父さんより、お母さんより、長男が一番大人に見えてくる。一人でぷらっと家出しちゃうところなんか最高。

とはいえ、親子喧嘩がたえず、無職になっちゃったお父さんとの確執は深い。読んでいる私も最初は「子育ておもしろいなぁ、いいなぁ」と盛り上がっていたのだが、最後の方になると、やっぱり疲れて飽きてきて(笑)、「子育ては自分では無理」という結論に達したのであった。

世の中のお父さん、お母さん、子育てやりとげる人たち、すごすぎる。

そして、偶然にもこの本と、たまたま聞いたポッドキャストや音声メディアを聞いて、なんか自分でも見えてきたことがある。朝日新聞のポッドキャストに出ていたヒップホップのアーティストの方がこの仕事を選んだころご両親にめっちゃ反対された話。

そして佐々木俊尚さんのVoicyで聴いた、日本人は実は人に教えたがっている、そして反対に頼るのはめちゃくちゃ苦手、という話。

ここで、なるほどと私が思った結論は、人は人を助けたがっているし、アドバイスしたがっている。それが自分の子供ならなおさらなのだ、と。

ところが、その教えたい相手、自分より下に置いている相手が、自分の力量の範疇を超えた時、その人は相手の意見に反対したり、それは無理だと言ってみたりするんだろう。

この本のニワトリもそうだ。長男は自分であれこれ勉強し、親の知らないことをよく知っていて、しかもニワトリをペット化するでなく、ちゃんとドライに家畜としてとらえている。

めっちゃくちゃ腑に落ちた。なるほど、自分がわからなから、だから親は反対するんだ。それは当人のためということではない。当人を助けるために自分ができることが何もないからなのだ。

でも当人からしたら、そんなことを言っていたら、いつまでたっても親を超えられない。ありがた迷惑なんだよね。

ほんと部下のアイディアを受け入れない上司とか、胸に手をあてて考えてほしい。それは本当にダメなアイディアなのか? それとも自分が単に「知らない」から反対しているんじゃないのか?

私が子供ころライターになりたいと言ったら親はめっちゃ反対した。そりゃそうだ。ウチの親は二人とも地方公務員で自分がどうしたらライターになれるか知らなかったから。自分が手伝えないから。「なれるわけがない」「そんなんでくっていけるわけがない」と猛反対した。

今、私は小さいながらも記事を書いて、もちろんそれだけでは生活できないが、ちょっとしたお小遣いをもらったり、このブログだってGoogle先生に結構な金額をいただいている。

全国の子供たちよ。全国の部下たちよ。親や上の人間があなたの希望や夢や企画に反対するのは、それを彼らが手伝う余地がないからなのだ。本当は彼らはあなたに「教えたい」のだ。

それを「愛」とか「心配」とか呼んでごまかされてはだめだ。大人なんて、長く生きているだけで、ぼーーーっとしてるやつの方が圧倒的に多い。必死で生きている君たちの方がよっぽどえらい。

確かに長く生きているやつが言うとおり、時代は厳しくなっているのかもしれない。でも例えば音楽業界だって、レコード会社や雑誌に音楽のらないと何も発表できなかった時代を考えれば、今は夢のようだ。

昔を知っている大人は余計な同情もしてくるだろう。今の子はかわいそうだ、と。でもそんな奴らは何もわかっていない。

自由に生きよう。やりたいことをやろう。そして自立していこう。この長男、めっちゃいい。素晴らしいと感じるとともに、親ってなんて身勝手なんだろうとも思う。もちろん筆者であるこのお母さんは悩みながらも子供から学んでいく。お父さんも学んでくれているといいよな。こんな素敵な子供がいるんだから。

読んでいて、最初の方は子育てを羨ましく感じていた自分だったけど、違う、違う、そうじゃないと自分でも腑に落ちた。子育てするよりも、自分がずっと子供でいればいいのだ!!…という結論に達したのだ。人生楽しいな、まったく!(と、高笑い)

というわけで、この長男から学ぶことはすごく大きい。大人こそ彼の話を傾聴すべきである。いやー素晴らしい本でした。このかけがえのない時間を大切に。この家族の話の続きが読みたいが、読んだところでまだまだ終わらないのだろうし、まだまだ続くのだろう(笑)。

っていうか、長男、あなたも本を書きなさい。あなたの気持ちを聞いてみたい。

いやー おもしろかった。