いやー 試写室で、映画見るの久しぶりだったかも。11月公開の『ミセス・ハリス、パリへ行く』を試写にて拝見しました。ありがとうございます。
まずひと言で言って、この映画、ヒットするでしょうね。間違いなく。
なになに会場はシネ・シャンテ。そりゃー、ますます間違いない。銀座に映画に行くおばちゃん、全員がハッピーになれます。というか、これは誰もがハッピーになれる素晴らしい作品です。
まぁ、ちょっとハッピーな展開すぎる感じがしないでもない。もちろんストーリーにはアップ&ダウンがあり、そのたびに観てるこっちは揺さぶられるんだけど、なんとなーく、はじまってしばらくしたら、あ、もうこれはハッピーな展開になるんだろうなと見ていてわかる。
だからなんというか、ワクワクドキドキしつつも、超安心して見てられます。
舞台は戦後のロンドン。ミセス・ハリスは夫の帰国を信じて待つ働き者のおばちゃん。毎日通いの家政婦としてテキパキとお金持ちの家を掃除してまわります。
この頃の英国は超階級社会で、ほんの少数のお金持ちと多数の貧しい人たちという社会だったわけです。
そこに届く…夫、戦死の知らせ。
失意のミセス・ハリスは、いつものようにとあるお屋敷にお掃除に行ったところ、とあるドレスと出逢います。なんと500ポンド(今の金額でいうとだいたい200万円相当らしい・町山情報)するというディオールのドレスに、すっかり参ってしまったミセス・ハリス。
なんとこのドレスを自分も買おうと決意。お金を貯めようと失意の底から立ち直り、動きだすのです。
それにしても、細部がいい! そして、ストーリーが展開していく中で、その細部の丁寧な伏線回収ぶりも、おいっ、三谷幸喜脚本かいっっ!?ってな具合で、たいしたもの。いやー、いちいち「なるほどねー」とうなってしまいました。
でも、そんな事は、まったくもって試写で腕くんでみてる私の斜めな視線でして、そんなことよりなにより観ている者たちはすべて主演のミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)の可愛さにすっかりやられてしまうんですよね。
働き者の貧しい、でも太陽みたいなおばちゃん!というところで、もう私も腕組みながらも感情移入MAX。
ほんとにミセス・ハリスは掃除人としても裁縫人としても優秀で、テキパキ、チマチマとよく働く。それなのにクライアントの上流階級の人たちは支払いを滞らせたり、彼女に横柄な態度で接したり、まるで彼女を「見えない」もののように扱う。
なんかわかるんだ、例えばスーパーのレジのおばちゃん、ショッピングセンターのトイレ掃除のおばちゃん、垢すりに行くとよくしてくれる陽気な韓国のおばちゃんたち…などなど。
その人それぞれのプロフェッショナリズム、それぞれの素晴らしい人生があることを、私たちは意外に気が付かずにすごしてしまう。
クライアントは平気でミセス・ハリスの前で着替えをしたり、愛人を連れ込んでいたりするのを彼女に観られても平然としていたり… それはまるで空気のように扱う。
でも大丈夫。そういう連中にも、おばちゃんが一発かましてやる痛快お仕置きシーンも待っているから、とにかく安心してみて!
そしてそして…もちろんディオールの素敵なドレスは最高に素敵なのだわ。なんかドレスはもちろんだけど、シックなコートとか、厚手のジャケットとか、シンプルでもかちっとしたワンピとか… 本当にかっこいいよねぇー もう私も500ポンドの服買うかぁ…と思わずうっとり。
でも、あまり言及されないかもだけど、私は働いている時のミセス・ハリスのお洋服もめっちゃかわいいと思った。それは同じく掃除人で働く軍需工場で知り合ったという相棒のヴァイおばちゃんも同じ。
なんというか、柄on柄で行っちゃうんでだけど、これがすごく上手におしゃれでかわいいのよー ちょっと小花柄とかリバティ柄っぽいんだけど、ぜひ注目して。ブルーだったり、グリーンだったり、ピンクだったり。
そして手編みのティー・コージー!! なんてかわいいの❤️
そしてのちのサンローランになるらしき、会計人の彼もいいね。そう、ミセス・ハリスが訪ねたパリではサルトルが大流行り。みんな実存主義とか言って、眉に皺を寄せていたのだ。ま、簡単に説明すると、この時代のパリって、みんな本当の自分ってなんだろう、と悩んでいたわけよ。ほんとフランス人って…(笑)
あと、これは気づく人は気づくと思うけど、イギリスとフランスの違いの対比がめっちゃ良いのよ!!(この辺は往年の名作『ローカル・ヒーロー』のアメリカ人vsイギリス人の戦いにも匹敵するクオリティの高さ)
だから異論反論ある人もいるかもだけど、あえて書いちゃうけど、ミセス・ハリスが若いカップルのためにつくる手料理。あれ、美味しくなかったんだと思う。グレーヴィー・ソースもないし(爆)
まぁ、この辺の細部はぜひ映画を実際に見に行って楽しんでください。とにかく楽しいし幸せな気持ちになれる映画です。
あ、そうそう、特にプログレッシブ・ロックファンの方に注目してほしいポイント。この映画、原作になったのは『スノー・グース』でおなじみのポール・ギャリコ。いいでしょう〜
というわけで、11月18日よりTOHOシネマズシャンテ、渋谷ホワイトシネクイント他、全国ロードショー。公式ホームページ、日本語のトレイラーはまだ準備ができていない様子なので、英語のトレイラー貼っとく。
あ、このトレイラー見て思い出した。そうそう、このトレイラーにもある爆笑シーン最高だったな。「あら、うちの牛乳配達人に似てるわー」ってやつ。ミセス・ハリス、本当にイカしてる!(笑)