映画の神様がまた降臨『遺灰は語る』を見ました。濃厚な90分。

御歳91歳の巨匠が送るノーベル文学賞作家ピランデッロの遺灰をめぐる物語。巨匠タヴィアーニ監督の弟による映画『遺灰は語る』試写で拝見しました。ありがとうございます。

ピランデッロも、タヴィアーニ監督も知らなかったわたくす。改めて本当に何も知らないよなぁ、と反省しきり。世界にはすごいもんがまだまだあるなぁ…

とにかく素晴らしい映像美。こういうの何ていうんだろう。モノクロなんだけど、すごくリアルなモノクロ。最後の方にはカラーもあるんだけど、これも色がとても綺麗。そして、ちょっとしたカメラアングルにも、とても心動かされます。

ゆったりとした静かな映画なんだけど、妙な緊張感もある。本当に不思議。最初のシーンは、瀕死の状態の作家の様子。ベットに横たわり、子供達が見守る。そしてこの作家の魂は、映画がやっている間中、遺灰になっても、世界全体を認知し、浮遊していく。

最後はこの作家の作品である「釘」という作品を映像化したもの。これは見る前にこういう構成なんだと理解していないと、ちょっと混乱するかも。

ここの部分は切り離して見た方がいいかも。でもこの作家の世界観をあらわすのに、その人の人となりではなく、ばっさりと作品一つにしぼり、それを紹介しちゃう構成は本当に斬新。

ちないにこのピランデッロ。独裁者ムッソリーニは、死んだら故郷のシチリアに戻りたいという彼の志を無視し、ローマにある遺灰を手放すことをしなかったのだそう。

そんなエピソードから、ようやく故郷へと電車で向かう彼の遺灰。それもまた珍道中。(配給会社社長によると、この辺のくだりの「おもろい」と思った部分は笑いながら見ても良いシーンなのだそうです)

そしてアメリカ軍の飛行機に搭乗拒否されたり、遺灰がはいった壺が行方不明になるなどトラブルは尽きない(笑)

すごく難解なようでいて、結局のところさっぱりと短めなのがいい(90分)。何度も書くけど、とにかくこの遺灰をめぐる部分と、遺作である「釘」の部分は切り離した方が理解が進むかな。

あ、そうそう、この「釘」の男の子役の子が、抜群に良いので要チェックです。

それから特筆すべきは音楽。音楽が最高に素敵です。こちらはアカデミー作曲賞を受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』のニコラ・ピオヴァーニ。Nicola Piovani

監督91歳。いただいたプレス用の資料によれば「まだまだ引退する気はないよ」とのこと。うーん、まったくもってすごい。私なんて57歳にして、もうくたびれているのに!!

都内ではヒューマントラストシネマ有楽町、そして新宿武蔵野館にて6月23日から。

トレイラー、まだ日本のやつができてないみたいなので、これを貼っておきます。


サントラはこちら。ちょっと泣ける。