豊田泰久、林田直樹、潮博恵『コンサートホールx オーケストラ 理想の響きを求めて』を読みました。これは必読!

 


お花の中に置いてみた。

いやー 面白かった。ほとんど一気読み。音響設計家の豊田泰久さんと林田直樹さんの対談本だ。

この本の話は、実は林田さんからちらっと聞いていたので、すごく、すっごーく楽しみにしていた。やっと出たよー!

一言で言って「おもしろい」です。正直、私はクラシックのことはよくわからず出てくる固有名詞はほとんどわからないまま読んでいるのだけど、それでもすごく興味深く読めました。音楽、コンサートホール関係者、これはぜひ読んだ方がいいよ。

まず読んでいて、やっぱりウィーンフィルってやっぱり圧倒的にすごいんだな、というのを何度も思った。

ウィーンフィルは私はバルトロメイ・ビットマンの来日の時に結構勉強した。パパ・バルトロメイの本も読んだし、実はコンサートも2回も行っとるぞ。(自慢)

と、いっても聞いても、実は音楽はよくわからないのだけど(ひどい!?)、こうやって豊田さんや林田さんのように、そしてパパ・バルトロメイのように、言葉で説明してくれると、ウィーンフィルの何がすごいのか少し分かったような気になれる。

最初の章(コロナ禍中に取られた対談)でもウィーンフィルの「密」が話題になる。っていうか、You Tubeで動画見てても思うよね。なんかウィーンフィルって、狭いところにぎっしりってのが、スタイルなんだよ。この辺なんか、知ってるとちょっと「知ったか」できそうなネタだ。

あとこれもまたちょっと笑えた。オーケストラはすごい指揮者が客演で来ると舞い上がって、すごい演奏しちゃう。でもそれが続くと音が壊れちゃう… みたいな話。

えーーっ、そうなんだ!?と。でもよく考えると理解できる。団員だって人間だもの(笑)。だから実はバーンスタインみたいな指揮者は常任よりもゲストの方がいい、とか(だからウィーンフィルとはあんなに上手くいった、みたいな話も)

バーンスタインも「親愛なるレニー」でちょっとかじったので、この辺も私でもちょっとだけ想像できる。あの熱量の人が常に近くにいたら疲れちゃうよね… レニー、ハイパワーすぎるからなぁ(笑)

トランペット奏者の話もおもしろかったし(「大人にはなれないわよ」には笑った)、つくづくオーケストラって人間なんだなぁ、と…(笑)当たり前のことを思ったりして。クラリネット奏者の「あんた何を変えたの?」にも爆笑。

だってオケの人たちって、単に集められて譜面もらって、その通りに弾く…私から見たら、それだけにしか見えないんだもの! ロックバンドや伝統音楽バンドに比べたらロボットみたいな人たちだと思ってた。ひどいよね。

オケの人って、みんな時給で結構稼いでいて、レコーディングスタジオの駐車場には、弦の人たちのすごい外車とロックミュージシャンのハイエースが止まっている…そんなイメージなんだもの!(偏見)

でもすごいよね。音楽ってやっぱり「聴く」ことの方が大事なんだなぁ、とこの本を読んで改めて思う。

アヌーナのマイケル・マクグリンも言ってた。「アヌーナは聴く芸術なんだ」と。ヴェーセンのローゲルも言ってた。「日本の伝統音楽のバンドはすごくいいけど、みんなバンド内の音を聞いてない」って。

そうなんだよ、バンドはオケでも室内楽でも、ロックバンドでも、仲間の音を聴くことの方がが大事なんだよね。うーん、深いなぁ。(音楽じゃないけど、篠田真貴子さんのLISTEN にも通じる)

そして再びサントリーホール立ち上げ時の「東京文化会館」との違いもこの本には登場する。

これは前に読んだこちらの本にも載ってた。アマゾンへのリンク『響きをみがく』
私の感想はこちら。

オーケストラってこういうことなんだ、ホールってこういうことなんだというのが、『響きをみがく』を読んだらクラシック素人の私にでも理解できた。すごい本。

それにしてもそこでも書かれてたけど、こちらの本でもサントリーのスポンサーとしての懐の深さにちょっと感動する。このあと紹介する山根さんのブログにも書いてあったけど、彼らの「残響時間というのはウイスキーのアルコール度数みたいなもんですね」は、ほんと名言。

そしてここと決めたら、もう専門家に任せる。余計な口を素人が知ったように出さない。これぞクライアントの鏡!! 

あと私が響いたのはカラヤンの音についての説明。彼によると音はドライアイスみたいに動くんだって。(詳しく知りたい人はこの本買ってぜひ読んで。この話題は本当におもしろいから)なんか納得できるところあるんだよなぁ。

あとステージのレイアウト。普通は3列のところを変えちゃうってありうるんだ!!とびっくり。でも確かにそうだよね、そうなると音は全然違ってくる。

あと笑ったのは林田さんの小澤征爾うどん屋のビールエピソード。これ、気持ちわかるなぁ。これもぜひ本買って読んで。

細かいところだと思うけど、こういうのに、素人は反応しちゃう(笑)まさに林田さんの言うとおり、音楽と全然関係ないんだけど、でも音楽と非常に関係があるようなエピソードでした。

あとやっぱり興味深く読んだのは、最後の方のアメリカの寄付文化の話。日本みたいに文化ホールは公共事業というのとは全然違う仕組みがすごく興味深い話題だった。

オケのメンバーをどう集めるか、というのも。アメリカではまったくブラインドで音だけ聞いて決めるオーディションが多いらしいのだけど、中には地元の音楽院を中心に採用するという楽団もいるらしい。

この辺、日本ではどうなっているんだろう。まだまだ誰々先生についてました、みたいなのが幅きかせてそうだよなぁ。芸大とかそうだって聴くもんなぁ。今は、どうなってるんだろ。

それにしてもオケとコンダクターって不思議な関係だ。

一方で、ゲルギエフの「指揮者がオケをよくするのではない」「作品が、作曲家が、そのオーケストラを成長させるんだ」というのも響いたわ。

確かにロックバンドですら、みんながその曲を大好きで「あぁ、いい曲だなぁ」って思って演奏している時に最高の演奏をする。やっぱり曲なんだよね。音楽はやっぱり演奏者よりも大きい。音楽はやっぱり人間よりも大きい。

そしてコンサートだけではなく、録音においてのクラシック音楽の話題も面白かった。確かに今のエンジニアでマイクを的確に置ける人はどんどん減っちゃっているかも。地方のライブハウスだって、そうだもの。アコースティックな楽器が来ただけで、どこにマイクたてていいかわからない人はハウスエンジニアでも結構多い。

でもって、さらに言えば、地方に行くとある立派なホール。ほんと役所がからんでくると、どっちつかずの多目的ホールになっちゃってることが多い。

その点、ミューザの話も面白かった。タクシー運転手、そして地元の人たちが誇れるホール。そして頑張ってホール主催ですごいオケを世界中から連れてくることの重要性などなど。

あと日本ではホールの運営に「指定管理業者」というわけのわからないシステムが入ってるけど、アメリカのホールはMBAなどを取得して経営のプロがホールの運営にかかわっている、みたいな話も勉強になった。

特に、この辺のくだりは潮さんの解説文がすごくわかりやすかった。あと最後のの福山のクラシック音楽復興の部分などは、全ホール担当者に読ませたいくらいだ。なんかもうみんな打ち合わせでくらいことしか言わないからさー ホール関係者に限ったことじゃないだろうけど。

それにしても音響の話って本当に面白い。豊田さんと同じ永田音響の方のお話を武蔵野文化会館に聞きに行った時も、すごく面白かった。

ほんといい音ってなんだろう、と思う。いわゆる残響の長い響くクラシックのコンサートホールと、いわゆるデットなライブハウスと…音ってどう違うんだろう、と。

私は最初、圧倒的にライブハウス派だった。ルナサだって、ヴェーセンだってロックバンドとして売りたかったのだ。だから低音をめちゃくちゃ出して、音が大きな公演を作ろうと思っていた。でも彼らと知り合って、一緒に仕事しているうちにいわゆるナチュラルな響きということが少しずつ分かってきたんだよね。いやー 人生、勉強だよな。

だから気づいてくれている人は少ないだろうけど、たとえばフルックみたいなバンドの場合は、渋谷のライブハウスと多目的ホールと両方で公演をやる。両方聴くとわかるよ。音ってこんなに違うだって、うちのお客さんは、みんな気づいてくれてるのかな。だから両方こないとダメだっていつも私、言ってるじゃない?(笑)

ちなみにこの本の片鱗というか、こちらでこの本の様子をちょっと読むことができます。

ところで、豊田泰久さんは、我らがアイリッシュミュージシャンの豊田耕三さんのパパなんですよ、ご存知でしたか。二人ともあまりお互いの仕事に言及しないのがかっこいい。

豊田耕三さんのバンドはオジゾーO'Jizo、子供たちはコジゾーKo'Jizoと呼ばれているので、私は密かに豊田泰久さんのことをパパゾーと呼んでいるのは内緒…失礼しました(笑)

PS

 クラシック関係のブログでは一番人気の山根さんも紹介してたー

「残響時間というのはウィスキーのアルコール度数みたいなものですね」は私も響きました。サントリーウイスキー「響き」(笑)


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そして7月にTHE MUSIC PLANTは、初めてクラシックの企画に挑戦します。『親愛なるレニー』、ぜひこちらのイベントもよろしくね。






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