ニーキャップですよ。
ニーキャップって単語を覚えたのは、このアイルランド映画だった。The Commitments。メンバー3人にジェイムス・ブラウンの映像を見せて、ソウル・ミュージックとは何かということをマネージャーのジミーが解くシーン。
この映像には出てこないが、このあとのセリフで、
「あんなことしたらKneecapが、壊れちまう」
「代理の誰かを呼び込むのかな?」
「バカだなぁ、演技だよ、演技」
みたいなセリフが続く。
(コミットメンツは、それこそ私はセリフを覚えるくらい何度も何度も観た)
Kneecapとは、膝こぞうのこと。IRAが昔、裏切った仲間を私刑にするのに膝小僧を撃ち抜いていたりしたことから由来する。怖いね。
この映画『ニーキャップ!』。バイオレンス、汚い言葉、ドラッグ…いろいろあるのだが、思わず爆笑してしまう痛快さがすごい。なんというか、抜群の破壊力だ。そう、この映画はコメディである。
テンポがめちゃくちゃ良くって、本当に良く出来てる。バンドの成り立ちなどについて、果たしてどこまでがフィクションなのか、さっぱりわからないが、いやー 観ていて痛快。楽しい映画。
何よりゲール語の先生が気に入った! 警察に捕まってもなお、アイルランド語しか話そうとしない彼のために通訳として呼ばれた先生。それはいいのだけれど、そこで出会った彼の運の尽きで、彼が書く歌詞に魅了されてしまう。
初めて知ったのだが、北アイルランドにもゲール語をしゃべる人はいるのだそうだ。私は実はまったくいないのかと思ってた! でもその数は少なくて6,000人ほどだそう。
ゲール語のトラッドも映画内に何度が出てきて、そのたびに、この激しい映画を見ている最中でもちょっとホッとする気分になる。ポールの歌唱でも有名なこれ。この曲、大好きなので、劇中では、女学生たちが歌ってたのを聴いてちょっと嬉しかった。(タイトルはいまだに覚えられず)
ポールはなにせ北アイルランドで超有名なお坊ちゃん寄宿舎高校(カトリック系)にいたので、ゲール語はそこで習っているはずで(今度あったら、確認してみよう)ゲール語も自然な感じでかっこいい。
でも、いつだったか、ブライアン・ケネディとメアリー・ブラックが某フェスティバルで(北アイルランドだった)で、ゲール語の曲(Eistという曲でした)を共演した時、ブライアン(北アイルランド出身)はメアリーに教えられた歌詞を、ローマ字書きみたいにしてメモってたのが印象的だった。
北では、普通の子はゲール語の教育は受けないからね。そしてその歌詞を教えていたメアリーも、ダブリン育ちの都会っ子だから、ゲール語はかなり最近になるまでしゃべれなかった。
それにしても文化=言葉だというのは、ここのブログにも何度も書いていることだけど、ほんとこういうバンドが出てくるんだ、というのが新鮮な感動である。
今では共和国(南側)では、ゲール語人口は少しずつ増えつつある。学校で習うことがクールとされ、ゲール語の放送局(これ、すごく重要)も出来てもう何年もたつ。南ではそんな状況なのに北ではまったく公用語として認定されたのもつい最近、2022年の話だ。
でもよく考えたら、グリーンランドでもグリーランド語のラップはすごく盛んだし、メッセージを運ぶには危機言語ラップは最高なヴィークルなのだと思う。うん、それはとっても自然なことなのかも。誰だって自分の言葉で叫びたいんだ! 当然だよね!
そんなわけで、公開されてから、もう結構たっちゃっているから、皆さんも早めにスクリーンで見てください。あっという間の2時間でした。
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◎野崎は、現在作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。
6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中。
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