THE SHADOW OVER INNSMOUTHといえば、もちろん私にとっては、まずこれ。
何度も書いているので、もう聞き飽きたと言われそうですが、私はケンソーの初代マネージャーなんですよ。
というか、厳密に言うとどこかのレコード屋の方がマネージャーだと公言していた時期もあったらしいけれど、一応リーダーの清水さんが認めているマネージャーというのは私が一代目だと思う。とにかく光栄なことです。
基本的には清水さんは一人でなんでも出来ちゃう人だから、マネージャーなんて必要ないんですけどね。
当時、まだ20代だった私は、ケンソーが「スパルタ」「夢の丘」「Live 92」を出したころは、キングレコード洋楽部宣伝課に所属。その後、会社を辞めて「ZAIYA LIVE」のころから、なんとなくケンソーの活動を手伝い始めたのでした。
そしたら知らない間にマネージャーになってた。この辺の経緯は実はあまり記憶がない。
でものちに「IN THE WEST」のライブ盤になったON AIR WESTでの公演は、明らかに私の制作によるライブで、ケンソーは古巣のシルバーエレファントを抜け出し、新しい道を歩み始めたのであった。
その後EASTの方でライブができるようになり、EASTが改装で閉鎖し、CITTAでライブをやる前までが私のマネ期間だ。だから実は、マネージャー期間は、そんなに長くはない。
でもやっぱり当時の「夢の丘バンド」は圧倒的だったし、今以上にバンドも活動的だった。そんなバンドの貴重な時期に関われたことは、私にとっては本当にラッキーだったと思う。
その後、自分のケルト関係の仕事が忙しくなってしまい、ケンソーのマネージャーは続けられなくなった。
「バンドにこんなオファーが来た!」「みんなやりたいと言っている」「誰が仕切るの、それ」「マネージャーはお前だろ」的な構図がいやで(私って、昔から人に指図されるのは大嫌い)、マネージャーを後輩の太田さんにお願いしたのが、今は昔。
とにかくケンソーは私の青春なのであった。
でも残念ながら清水さんが小説のタイトルからこの曲を書いたのは知っていたけど、その小説を読むという余裕は当時の私にはなかった。
今の私なら担当バンドにインスピレーションを与えた何かだったら、必ずチェックするだろう。が、当時の若い私にはそんな余裕はなかった。そもそも今とは比べものにならないくらい必死だったし、それこそ寝る間も惜しんで仕事してた。
話がそれた。
で、そのケンソーと同じころ。「The Shadow Over Innsemouth」でドラマを作っていたのが、佐野史郎さんだった、ということになるらしい。92年の作品だ。
今思うと、本当に不思議な縁だ。ケンソーの「インスマウス」は89年発表の『スパルタ』に収録されているが、そのバンドの初代マネージャーが、2025年に佐野さんとのちに仕事をすることになるなんて。ラヴクラフトがつなぐ縁??? なんか怖っっ(笑)
この映画(というかテレビドラマ?)は佐野さんのアイディがまずあり、そこから脚本を小中千昭さんという方が書き、のちに小中さんはそれをノベライズまでしてしまったというのだから、芸術家のインスピレーションの連鎖はすごい。
私はそんなこととはつゆ知らず、今回八雲の朗読公演を制作するにあたって、佐野史郎さんのWikiを眺めていて、「インスマウス」という言葉を見つけ、あれっと思ったというレベルである。本当私って、いろんなことを知らなすぎる。
ありがたいことに、ファンの間では、ほぼ伝説となっていたこのドラマ。今ではU-NEXTで見ることができる。
なんというか、不思議系のドラマなんだけど、いやはや、これが最高に面白い。この独特の空気感がいい。時代なのかなぁ。
あ、ちなみにこれも「知らない人がお母さん」的、変なファンタジーも入っているのだが、村上春樹作品にあるような嫌味は感じない。なんでだろう。カッコつけてないからかな。妙にすとんと入ってくる。いや、これも主演の佐野さんの力なのか。
それにしてもなんだか空気が魚臭かったり、食堂で食べるおじさんたちがズルズルしてて気持ち悪かったり、すごい世界観だよな、これ。
今、リメイクされてもすごく面白いかもしれない。いや、今リメイクしてもこの感じは出ないか?
CG?というか、特殊メイクみたいなものも、ある意味、技術が安っぽいっちゃ安っぽいんだけど、なんだろう、この時代にしか出せない味になってる。
それにしても、魚のあの気持ち悪い感じ。居酒屋のおつくりで魚の頭が出てくると、わざと口をこじ開けて中に並んでいる細かい歯を、割り箸の先でいじってみる時の、あの、感じ。嫌いじゃないんだよなぁ!
(ぜんぜん関係ないけど、今、ツアーアテンドしているグループは生魚NGなので、せっかく魚が美味しいインスマウス…もとい地方に来ても、魚が食べられないのであった。辛すぎる!!)
それにしても最後のオチの作り方は見事。この元になったラヴクラフトの原作ではどう表現されているのかわからないけど、ケンソーのインスマウスから35年近くたって、やっと原作を読んでみようかな、という気になった。
というわけで、今度の北とぴあ「音楽と本祭」第2回のテーマは、そんな佐野史郎さんも登場する小泉八雲の朗読公演です。音楽は同じ松江出身の山本恭司さん。佐野さんによるとこの二人のコラボは「プログレバンド」らしい。あっ、繋がった?!
佐野史郎さんと山本恭司さんによる圧巻の朗読と音楽のステージ。小泉凡先生の解説付き。NHK朝の連ドラ「ばけばけ」の世界をぜひ。特設サイトはここです。
◎野崎は、現在作曲家:日向敏文さんのマネジメントおよび宣伝をお手伝いしております。
6月25日に新作「the Dark Night Rhapsodies」がリリース。こちらが特設ページ(Sony Music Labels)。アナログ盤と、ピアノ小品集の楽譜は日向さんのサイトで通販中。
◎2年前にレコーディングした無印良品BGM29 スコットランド編がやっと公開になりました。良かったら、聞いてください。プロデュースはLAUのエイダン・オルークにやってもらいました。現在無印良品の店頭で聞くことができますし、配信でも聴けます。