映画『ガザ 素顔の日常』を観ました。ただただ呆然。


日比谷でトーク付きの上映会があり、参加してきました。すごいタイミングの上映!と思ったけど、そういやこの戦争は10.7からスタートしたんだっけ… あれから2年かと思いつつ…

映画を見て、「いや違う。この戦争はもう何年も続いているんだ」ということを改めて思い知らされた。

2年前の10月7日のハマスの攻撃は、私的にも本当にやばかった。実はその直前、イスラエルの音楽産業をプロモーションしている機関から音楽フェスティバルを見に来ませんかというオファーがあったのだ。

私程度のレベルでも、こういう仕事を長く続けていると、そういった機関がどこからともなく私のことを聞きつけて、自国の音楽をプロモーションしませんかとオファーを送ってくる。

ありがたい話だけど、実際オファーを受けた時点ではすでに日程が相当きつかったし、かつイスラエルに行ったら、アイルランドの仕事できなくなるかも…と思いなおし(ダーヴィッシュが大ブーイングにあってイスラエル公演をキャンセルしたのはご存知のとおり)、断ったばかりだったのだ。

もちろんその音楽フェスはワールド系で、くだんの音楽フェスではない。でも日程はそれなりに近かったし、めちゃくちゃびっくりした。行ってたら、どういうことになってたんだろう。

本当に中東って、私は全然わかってない。今だによく分かってない。911の時に、やっと少しだけ勉強したくらいだ。

そしてパレスチナのことについては、アイルランドのことをウォッチしているせいか(笑)、イスラエルはひどいなという気持ちは、すでに常識として持っていた。

メアリーの妹のセネター・フランシス・ブラックは、アイルランドでも特にパレスチナ(英語でOccupied Areaという言い方をしていた)にヘルプを、というキャンペーンを続けて頑張っていた。

…と私の認識など、そんな程度。しかしいよいよ尊敬するグレタさんが今回、これは本当にまずいということで、船団をひきつれてガザ沖を目指した。2度も捉えられ、引き戻されたグレタ。彼女は言った。「私が拷問を受けたとか、そんなことが話題ではない。話題はガザのこと」と。すごいな。彼女は本物だ。

それもあって、さすがにバカな自分もいてもたってもたまらず、この映画の上映に参加を申し込んだのだ。

結果から言うと、観に行ってよかった。

っていうか、映画が始まってクレジットを見てびっくり。あまり前知識を入れずに見たのだけど、Screen Irelandのクレジットを発見。な、なんと、これ、アイルランド人が作ってるやんけーーー!!!

こういう危険地帯で映像を撮る人、すごいな、と思ったら、なんとアイルランド人ですか!? ちょっとグッと来た。こうやって私はアイルランドにつながっている。それを誇りに思った瞬間だった。

この映画に出てくるのは普通の人たちだ。若い人たちが集まる浜辺のパーティがあったり、夢を語る10代がいたり、一方で救急隊員として勤務する男性は家族にまったく会えていないんだよ、と語る。そういった、なんというか、まったく普通の人たち。

爆弾が理不尽に落ちる。あちこちで鳴り響くアンビュランスの音。救急車すらも爆撃を受ける。あの男性は無事だったのだろうか。撮影している監督たちの上にも爆弾は容赦なく降ってくる。かなり際どいシーンもある。

それでもって、実はこれは2019年に発表された映画で、ここに写っている映像のほとんどが2018年の映像だということ。今は、これ以上に状況が悪い。というか、おそらく想像を絶する状況になっている。

うーーーん。

そして、びっくりしたのは「海」の存在。なんか彼の地って、乾いてて、水のイメージがなかった。海があんなに近いんだ。(ほんとバカな私。ガザの正確な位置すらわかってなかった)

海の存在だよね。海の向こうには自由があるのだろうか。なんかちょっと象徴的。ガザって、こんなにも海が綺麗なところだとは思わなかった。

でもその海も5km(だったっけか)で封鎖されていてまともに漁もできないし、現在は汚水処理がうまくいっておらず汚染も広がってしまっているらしい。悲惨な状況。

映画の話に戻すと、編集も構成も素晴らしく、ガザの人たちの多様な様子を描くことにこの映画は成功している。

上映後は、トークがあり、ユナイテッド・ピープルの関根健次さんによる映画の登場人物のその後が紹介された。うまく今回の戦争直前に脱出できた人たちもいるようだ。

例えばこの映画の現地のクルーとして撮影を手伝った男性スタッフは、現在ロンドンでアルジャジーラの仕事をしているらしい。でもビザの関係で、残った家族はエジプトに留まり、お母さんたちはまだオキュパイドエリアから動けないでいるらしい。

エジプト側から脱出に成功する人もいるわけだけど、その場合は、政府にそれなりの賄賂を払っていたりする。その賄賂の値段も上がりに上がり…  今はもう脱出は不可能となってしまった。

他にも最近『もし君の町がガザだったら』という本を出された高橋真樹さんからは、それでも、と語る。

ガザの人々は国としては、どの国もダメダメだと呆れているけれど、市民に対しては絶望していませんよ、と。沈黙の中で死ぬはいやだ、と彼らは思っている。だから彼らのメッセージを受け止めてくれ、と。

現地から自分のところに「生きている僕らのメッセージを受け取ってくれ」というビデオメッセージが届けられてくるんですよ、と。

希望はある。あると信じたい。そして、自分たちのことを語り続けてくれと現地の人は言っている、と。

果たして日本では…

年金機構がエルビット・システムズというイスラエルの大手軍事企業に投資している、というのを共産党がすっぱぬいた

そしてイエスラエルの武器は強い。特にドローンたち。なぜって、それはガザで実験できるから。それを今、日本政府は購入しようとしている。そちらは東京新聞が報じていた

私たちに、いったい何ができるんだろう。こちらは高橋さんの本。さっそく注文。

壁のこちら側で、若者は耐えきれず、キレて塀の向こうに向かって石を投げる。そしてイスラエル側は、その報復として爆弾を投下する。ものすごい爆発音がすると、たくさんの若者がタンカで運ばれていく。血。土埃り。鳴り響くサイレンの音。そんなシーンばかり。

こんな終わりのない中に閉じ込められて「もう死んだ方がましだ」と嘆くガザの人たち。イスラム教では自殺は認められていない。が、しかし…

なお今月10日から吉祥寺でシリーズ上映がある。Big Issueさんも関わっている。ぜひご来場ください。場所は吉祥寺サンロードのこちらのスペース。安田菜津紀さんたちの写真を展示した『パレスチナの猫』という写真展もあるみたいですよ。

しかしこういう活動をしてらっしゃる方には頭がさがる。せめてと思い、来年のカレンダーは安田さんの写真集のやつにした。

United Peopleさん配給のこちらの映画もぜひ。私も見に行こうと思っています。

手に魂を込め歩いてみれば」イランの女性監督と、ガザにいる24歳のパレスチナ人フォトジャーナリストのドキュメンタリー。

KISS THE FUTURE」こちらにも登場するのがアイルランド人。なんとU2のサラエボ公演のドキュメンタリー。


映画を見終わって、どよーんとした気持ちで家路に着く。真っ暗な日比谷公園の中を歩きながら、官庁街を歩きながら、この曲(下のリンク)が頭の中でずっと流れていた。

日向敏文さんの曲は世界の、生活が厳しいエリアでよく聞かれている(Spotifyとかデータが全部取れるから、そういうのがすべて分かる)。その理由が、東京でぼんやり暮らす自分にも少しだけ分かったような気がした。いや、気がしたくらいじゃ、全然ダメダメなんだけど。


 

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