ブックレビューがたまりまくってます。
ほんと自分の好奇心には抗えないというか、食欲も我慢できないが、知識欲も我慢できないというか。こんな本を読んでしまいました。
集英社の「KOTOBA」をトイレで読んでたら、この著者と水道橋博士の対談が掲載されており、本書も読みたくなりついつい買ってしもた。
このテの本でいえば、周防さんがネタになったこわーーーい本は、以前読んだことがある。実際、私が手に入れた時には、すでに絶版となっていたようで、自分がどうやって手にいれたかはもう不明なのだが、読んでそのあまりにもすごい内容に、そのまま黙って渋谷の棚本屋で速攻売りさばいた。
持っているのすら怖かった。
感想も書かなかった。だって読んだことがバレると怖いんだもの。それなのに、またもや怖いもの見たさで、ついついこの本も買ってしまった。
今度は講談社から出ている。マスコミが触れられない「タブー」とあるが、インタビュー後に亡くなった人もいるし、周防さんも社長から引退したようだし、それもあってかこの本はそんなに怖くない。
というか、基本、本人の語りだから、やばいことは誰も言わない。それにしても皆さん、引退が近いから語る気になったのか…?
この本を読み終わって最初に思ったことは、怖い人は黙っていた方がいいんだろうなということだった。というか、怖い人たちは黙っているから怖く見えるのだ、というのは間違いなくあるなと思った。しゃべってみれば、実は割と普通の人だったりもする。
私なんぞみたいに、たいていのことは日記よろしくブログになんでも書いているというのは、仕事上の威厳を保つためには(笑)、あまり良くないのだ。わかっている(笑)
黙っていた方が、絶対にもっとパワーが持てる。でも、パワーって?(笑)
それよりも、正直に開けっぴろげで生きてた方が楽じゃないか? でも黙っていれば、私も「アイルランド音楽の権威」とかになれたんだろうか(爆)。
いや、でもしゃべるよ。だってしゃべってないとサボってると思われるじゃない? ちゃんと仕事してるところを、しゃべらないと(笑)
でも、そうね、おじさんたちは黙ってた方がいいのかもしれない。
この本、まずは能年玲奈さんこと、つまりのんさんの話題から入るのだけど、この件、私はなんかよくわからないままTwitterに流れてくるニュースを眺めて、ひどいこともあるもんだと思っていたのだが…
この本を読んで、やっと「なるほどね」と腑に落ちた。なるほどね。そりゃ、そうだよね。そもそも、どんな事象においても、どちらかが100%真っ白で、どちらかが100%真っ黒ということはないのだし。
それにアーティストやミュージシャン、いわゆる表現者には、こういうことはつきものだ。私もそれは(レベルは違えど)本当に沁みるほど体験してきた。欠けているから、彼らは魅力的なのだ。あっ、別に能年さんが悪いと言っているわけではありません。
それにしても…と思ったのは、このおじさんたちの誰とは言わないが、ああいった、私にいわせれば、いかがなものかな…という音楽を作り続けていたにもかかわらず、自分の音楽に対してこれほどプライドを持っていることに、ある意味感心した。
ああいった音楽を、心から誇って作っていたのか、と。
すごいな。
いいや、違うな。彼らは「当てて」いるのだから、彼らのロジックの方が、絶対に私なんかよりも正しいのだろう。いや、すごい。すごいですよ。なにせ当てているのだから。
そして、読んでいると、時おり、頭をもたげる「この人、ちっちぇ…」という感想……あっ、すみません! 言っちゃった、すみません、すみません、すみません…
そう、やっぱり怖いおじさんも普通の人間なのである。だから怖いおじさんはしゃべらない方がいい。またそこに着地する。
あ、そうそう、でもこの本、70年代とか80年代のアイドルが好きだった人は、読むといいかも。
高3トリオの中では森昌子さんが圧倒的に歌が上手かったという話とか(これは有名だよね)、「歌は上手くないが自分を演出できる能力がある…それがのちのXXである」とか、「あの3人組の中のXXは、顔はよくないが、ただ(グループに)いればいい」とか(ひ、ひどい。ちなみにその人は「あの3人組」の中で一番好きなメンバーである)。
こんな話が本書の中では、すべて実名で公開されている。今、伏字にしたのは、全員私ですらも知ってる超有名人。そういう話が盛りだくさんで、そういうネタが好きな人は読んでみたらいいかもしれない。
「あの子は歌が下手だったけど、なんとかなるだろ」みたいな、そんな話がたくさん。しかしそういう子たち、どうやって、そのあと大衆に売れる才能があると見分けられるのか? まったくもって謎だ。
あ、そこがこのおじさんたちの偉いところなのか。そうか、そうだった、そうだった。
そしてなんといっても、こういうプロダクションとテレビとの癒着…だよね。番組制作にノウハウがないテレビ局、そしてそれをいいことに、そこに深く関わってきた芸能事務所。
時々松谷創一郎さんも指摘しているように、これが日本の音楽のレベルを作りだしてしまったわけで…。
ま、なんでもいいや。こういう世界は自分には関係ないなと改めて思ったし、関係ない世界で生きてこれて本当に幸せだよなと思ったり。それもこれも、ウチみたいなところが紹介する音楽を支持してくれた皆さんがいたからである。再び感謝。
一方で、こういう世界に自分が入れたとして、万が一にも成功することがあれば、私の中の「高市性(高市を高市たらしめているもの)」がむくむくと顔をもたげ、私は相当いやな人間になっていたりするのだろう…と恐怖におののく。
怖いのだ。高市が。あぁいう要素は自分にもあるから。もちろん、そんなラッキーに自分が恵まれるわけがないのだが…
そして言えるのは、もうこういう人たちの時代は終わるんだろうな、ということ。もっとも最後に出てきた会社組織は… 最近独立チャンネルが始まったりして、まだまだ怖いところがあるけれど、でもそれだって今後はわからないよ。それにお金を払って囲われた場所にいるのだとしたら、無視しようと思えば無視できるわけで。
公共性のある場所に、あぁいうものがあることが問題だったわけで。あとはほおっておけばいいんじゃないかなと思うのは、あまりに無責任か?
っていうか、テレビと同時に、これらもおそらく終わる。なにせもうテレビという後ろ盾そのものが、往年の力を失いつつあるのだから。
でもわからない。だって大衆はこちらが思う以上に…(以下自粛)
それにしても、私はいい時代に仕事したなぁ、と改めて。
この人たちも、みんなすごい時代を生きてきたわけなのだけど、私も私のレベルで自分に引き寄せて感慨深く思う。
私の仕事は70年代、80年代だったら、まったく箸にも棒にもかからなかっただろう。もちろんあと10年早く始めていれば、WAVE六本木などが盛り上がったバブル後期に引っかかって、多少は貯金ができたのかなと思わないでもない。
そして昔は昔で、昔の時代からワールドミュージックを紹介してきた某先生という存在もあるのだけれど、それもまた学校、そしてNHKというメディアや、大手のプロモーターがあってこそ、なわけで…
今でも先生の後輩たちが音楽業界で活躍しているけれど、皆さん、良家のご出身で、平民の私なんぞは出て行く場所すらない。私なんぞが一緒にやれるわけがない。
私の場合は、まさに今だからこそ、雑草みたいな私も生活を維持することができた。
そういう意味では、インターネットよ、ありがとう。スティーブ、ありがとう…と再び思うわけだ。インターネットがなければ、私には今の場所は与えられなかった。
…とぐるぐる、あれこれ考える。この本に話題を戻すと、貴重なインタビュー集であることは確かである。興味のある人は、ぜひ。
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