これもやっと観た! ベルリン在住の女性監督が撮った音楽ドキュメンタリー。「百夜のタンゴ」
いつだったかスウェーデンに居たこともある某女優さんのヌード写真集を「白夜のヌード」とか言って週刊誌があおってた事があったけど(笑)…いやいや、この映画、原題もMidsummer's Tangoと言います、ハイ。
で、これがもう最高に良かった!! まずカウリスマキの「怒っているんだ、オレは」みたいなコメントからはじまる。「タンゴはアルゼンチンが発祥の地ではない。フィンランドのものだ」と。「アルゼンチン人たちは、そのことをすっかり忘れてしまっている」と。
どうやらカウリスマキ監督が指示する説においては「フィンランドで生まれたタンゴを、水夫たちがウルグアイへ伝え、それがさらにアルゼンチンに伝わって、彼の地でヒットしたのだ」ということらしい。
なるほどね。まぁ、なんというか、ワールドミュージックの世界ではね、こういうね、音楽がどこから来て、どう旅してどう伝わって、どうなって…って研究してる学者さんは多いけど、あまりに自信たっぷりに見て来たみたいに自分の説を声高に称える人を見ると、実際にそれをお前は目撃したのかよと思う。いや学者なら、まあ自分の物語は大切だろうけどね。でも歴史なんて、だいたいは、そんな感じだ。この映画に出てくるセリフにもあるが「良いものは世界のもので、悪いものは地域のもの」…だったかな… 本当にそうだと思う。みんな自分の都合によって、自分にいいように解釈したがる。原発だって何だってそうだ。この世に確かな説なんて、当事者だって分らない事もあるのに。どうしてみんな「分らない」と言えないんだろう、とホントに思う。
…ってそれはさておき、それでも映画の中に出てくる「ロシアン・ロマンスと、ドイツのマーチがフィンランドで一緒になった」って説得力あるよなーと思った。そしてフィンランドの男性はシャイで告白できないから、男性の歌うタンゴが人気なんだ、って事も。
このドキュメンタリーではアルゼンチンのミュージシャン3名が「タンゴの発祥がフィンランド? そんな訳ネェだろ! タンゴはブエノスアイレスの心だ!」みたいな感じでフィンランドへ旅に出掛け、そこで出会ったフィンランドのミュージシャンと交流し一緒に演奏しながら、どんどん考え方が変わって行く… そんなシーンを追いかけたドキュメンタリーだ。
出演するフィンランド側のミュージシャンについては、私も知らない人が多かった。
そもそも私のフィンランド・タンゴに対する独自の考察はこうだ。フィンランドで生まれたかどうかはともかく、とにかくアルゼンチンで火が付いたタンゴは世界中で大ヒットした。もちろんフィンランドを含むヨーロッパでも戦前戦後ダンスホールでタンゴはひっぱりだこだった。でもそんなヒットは一時的なもので、世界各地でタンゴはどんどん下火に。でもフィンランドでは「人と変わったことが良しとされる国民性もあって」、何かエクストリームなものが極地的に残りがちであり、それはヘヴィメタも理由は一緒なのだけど、タンゴも色濃くいつまでもフィンランドにはズルズルと残っている、と。
で、フィンランドにはイスケルマという演歌のような歌謡曲のような世にもダサい音楽があるのだが、これも関係していると思う。今や日本の演歌の人だってかっこいいサウンドを追求しているのに、フィンランドのイスケルマはすごい。あそこには古き良き時代のノスタルジアがあり、こういうのが例えばラジオとかから流れてくるとウワっ、フィンランドってクールだと、いったい誰が言ったんだ?と吠えたくもなるぐらいなのだが、タンゴも私に言わせりゃ、それに近い…哀愁を誘う、悪く言えばダサイ…部分がある。明らかにジジババが聞く音楽で、それでも確かにメロディはキャッチーで美しいものが多く、カウリスマキあたりが取り上げれば確かに「痛(いた)かっこ良」くなくもないのだが…(笑)まぁ、とにかくタンゴのイメージと言ったら私にとってはその程度だったのだ。
でもこの映画みたらタンゴも悪くないな、と思った。っていうか、タンゴだろうが、なんだろうが関係ない。やっぱりミュージシャンってホントにいいなって思った。いや、とにかく音楽好きだったら、北欧、南米、関係なく見に行くべき1本だと思う。(あ、また「べき」とか言っちゃった/笑)
ただ1つ気になったのはすっごい期待して買ったパンフレットに、北欧音楽の視点から書かれた解説がないこと。そこがちょっと残念だった。少なくとも出てくるミュージシャンの名前、バイオなどは、全員の分が欲しかったかなぁ。
「音楽は聞く事だ」「音楽は沈黙だ」って力説するスプーン演奏するミュージシャンの人の名前は載ってなかったし。あの人、ホントに良かったなぁ。(これ私も常日頃追求しているテーマなんだけど、音楽は実は聞くことだと思う。それについてはアヌーナも言っていたし、この映画でも語られている)このミュージシャンの方の名前とかくわしい事を知っている人がいたら是非教えてください! っていうか、DVDが出たら買って見直すしかないのかな。
でもやはり映画のハイライトで出てくるレイヨ・タイパレは、パンフレットでもきちんと紹介されてましたね。そう、彼はカウリスマキの映画「マッチ工場の少女」に出てた人だけど、ホントに声がつやっぽい。フィンランドで長く活躍する現役の歌手。この曲はフィンランドで超ヒットしたんですよね。
あと今日実は偶然にも夜フィンランド音楽の関係者に会っていたのだけど、その彼女から「M.A.ヌウミネンは知ってるでしょ?」とか指摘されて、あら知らなかったと超反省したのがM.A.ヌウミネン。ドキュメンタリー中、このおじさんはホントにいい味を出していた。ウサギと熊の格好して出てくるデュオのウサギの方だ。子供相手にタンゴを歌ってエンタテイメント溢れるショウを現在でも精力的にこなす。ドイツでもすごい人気で、このデュオはすでに何十年も活動しているから、子供のころ聞いていたという親たちがこぞって自分の子供を彼らのコンサートに連れて行くのだそうだ。すでに第2世代のファンが育ちつつある。このおじさんはホントに笑顔が素敵な魅力的な人だった。話も素敵だったし!
でもってエンディングでは、カウリスマキ監督が撮影中のクルーが持つ音声のマイクをさりげなく調整してあげているシーンとかもチラッと映るのだけど、これがもう最高。カウリスマキ being カウリスマキって感じ。さりげない、シャイな優しさ。あぁ、監督、まったくもって期待を裏切らない〜っっ(笑)あそこはカウリスマキ・ファンは悶絶だろうから、見逃さずチェックしてみてください。
とにかく最高に魅力的なこの映画、絶対に絶対に観に行ってください〜〜
…っていうか、今度ウチのコンサートのプレ・イベントみたいなので、この映画上映したいな〜 なんか一緒に出来ないかな〜。本当に感動したわ。良いもの見たわ…。
PS
思わずカウリスマキの方の映像を貼ったけど、こちらがタイパレのオリジナルレコーディング。60年代。うーん、時代ですなぁ〜。
PPS
こちらがオリジナルのポスター。この移動サウナをひっぱるバイクのおじさんを追いかけてくシーン、最高!!!
いつだったかスウェーデンに居たこともある某女優さんのヌード写真集を「白夜のヌード」とか言って週刊誌があおってた事があったけど(笑)…いやいや、この映画、原題もMidsummer's Tangoと言います、ハイ。
で、これがもう最高に良かった!! まずカウリスマキの「怒っているんだ、オレは」みたいなコメントからはじまる。「タンゴはアルゼンチンが発祥の地ではない。フィンランドのものだ」と。「アルゼンチン人たちは、そのことをすっかり忘れてしまっている」と。
どうやらカウリスマキ監督が指示する説においては「フィンランドで生まれたタンゴを、水夫たちがウルグアイへ伝え、それがさらにアルゼンチンに伝わって、彼の地でヒットしたのだ」ということらしい。
なるほどね。まぁ、なんというか、ワールドミュージックの世界ではね、こういうね、音楽がどこから来て、どう旅してどう伝わって、どうなって…って研究してる学者さんは多いけど、あまりに自信たっぷりに見て来たみたいに自分の説を声高に称える人を見ると、実際にそれをお前は目撃したのかよと思う。いや学者なら、まあ自分の物語は大切だろうけどね。でも歴史なんて、だいたいは、そんな感じだ。この映画に出てくるセリフにもあるが「良いものは世界のもので、悪いものは地域のもの」…だったかな… 本当にそうだと思う。みんな自分の都合によって、自分にいいように解釈したがる。原発だって何だってそうだ。この世に確かな説なんて、当事者だって分らない事もあるのに。どうしてみんな「分らない」と言えないんだろう、とホントに思う。
…ってそれはさておき、それでも映画の中に出てくる「ロシアン・ロマンスと、ドイツのマーチがフィンランドで一緒になった」って説得力あるよなーと思った。そしてフィンランドの男性はシャイで告白できないから、男性の歌うタンゴが人気なんだ、って事も。
このドキュメンタリーではアルゼンチンのミュージシャン3名が「タンゴの発祥がフィンランド? そんな訳ネェだろ! タンゴはブエノスアイレスの心だ!」みたいな感じでフィンランドへ旅に出掛け、そこで出会ったフィンランドのミュージシャンと交流し一緒に演奏しながら、どんどん考え方が変わって行く… そんなシーンを追いかけたドキュメンタリーだ。
出演するフィンランド側のミュージシャンについては、私も知らない人が多かった。
そもそも私のフィンランド・タンゴに対する独自の考察はこうだ。フィンランドで生まれたかどうかはともかく、とにかくアルゼンチンで火が付いたタンゴは世界中で大ヒットした。もちろんフィンランドを含むヨーロッパでも戦前戦後ダンスホールでタンゴはひっぱりだこだった。でもそんなヒットは一時的なもので、世界各地でタンゴはどんどん下火に。でもフィンランドでは「人と変わったことが良しとされる国民性もあって」、何かエクストリームなものが極地的に残りがちであり、それはヘヴィメタも理由は一緒なのだけど、タンゴも色濃くいつまでもフィンランドにはズルズルと残っている、と。
で、フィンランドにはイスケルマという演歌のような歌謡曲のような世にもダサい音楽があるのだが、これも関係していると思う。今や日本の演歌の人だってかっこいいサウンドを追求しているのに、フィンランドのイスケルマはすごい。あそこには古き良き時代のノスタルジアがあり、こういうのが例えばラジオとかから流れてくるとウワっ、フィンランドってクールだと、いったい誰が言ったんだ?と吠えたくもなるぐらいなのだが、タンゴも私に言わせりゃ、それに近い…哀愁を誘う、悪く言えばダサイ…部分がある。明らかにジジババが聞く音楽で、それでも確かにメロディはキャッチーで美しいものが多く、カウリスマキあたりが取り上げれば確かに「痛(いた)かっこ良」くなくもないのだが…(笑)まぁ、とにかくタンゴのイメージと言ったら私にとってはその程度だったのだ。
でもこの映画みたらタンゴも悪くないな、と思った。っていうか、タンゴだろうが、なんだろうが関係ない。やっぱりミュージシャンってホントにいいなって思った。いや、とにかく音楽好きだったら、北欧、南米、関係なく見に行くべき1本だと思う。(あ、また「べき」とか言っちゃった/笑)
ただ1つ気になったのはすっごい期待して買ったパンフレットに、北欧音楽の視点から書かれた解説がないこと。そこがちょっと残念だった。少なくとも出てくるミュージシャンの名前、バイオなどは、全員の分が欲しかったかなぁ。
「音楽は聞く事だ」「音楽は沈黙だ」って力説するスプーン演奏するミュージシャンの人の名前は載ってなかったし。あの人、ホントに良かったなぁ。(これ私も常日頃追求しているテーマなんだけど、音楽は実は聞くことだと思う。それについてはアヌーナも言っていたし、この映画でも語られている)このミュージシャンの方の名前とかくわしい事を知っている人がいたら是非教えてください! っていうか、DVDが出たら買って見直すしかないのかな。
でもやはり映画のハイライトで出てくるレイヨ・タイパレは、パンフレットでもきちんと紹介されてましたね。そう、彼はカウリスマキの映画「マッチ工場の少女」に出てた人だけど、ホントに声がつやっぽい。フィンランドで長く活躍する現役の歌手。この曲はフィンランドで超ヒットしたんですよね。
あと今日実は偶然にも夜フィンランド音楽の関係者に会っていたのだけど、その彼女から「M.A.ヌウミネンは知ってるでしょ?」とか指摘されて、あら知らなかったと超反省したのがM.A.ヌウミネン。ドキュメンタリー中、このおじさんはホントにいい味を出していた。ウサギと熊の格好して出てくるデュオのウサギの方だ。子供相手にタンゴを歌ってエンタテイメント溢れるショウを現在でも精力的にこなす。ドイツでもすごい人気で、このデュオはすでに何十年も活動しているから、子供のころ聞いていたという親たちがこぞって自分の子供を彼らのコンサートに連れて行くのだそうだ。すでに第2世代のファンが育ちつつある。このおじさんはホントに笑顔が素敵な魅力的な人だった。話も素敵だったし!
でもってエンディングでは、カウリスマキ監督が撮影中のクルーが持つ音声のマイクをさりげなく調整してあげているシーンとかもチラッと映るのだけど、これがもう最高。カウリスマキ being カウリスマキって感じ。さりげない、シャイな優しさ。あぁ、監督、まったくもって期待を裏切らない〜っっ(笑)あそこはカウリスマキ・ファンは悶絶だろうから、見逃さずチェックしてみてください。
とにかく最高に魅力的なこの映画、絶対に絶対に観に行ってください〜〜
…っていうか、今度ウチのコンサートのプレ・イベントみたいなので、この映画上映したいな〜 なんか一緒に出来ないかな〜。本当に感動したわ。良いもの見たわ…。
PS
思わずカウリスマキの方の映像を貼ったけど、こちらがタイパレのオリジナルレコーディング。60年代。うーん、時代ですなぁ〜。
PPS
こちらがオリジナルのポスター。この移動サウナをひっぱるバイクのおじさんを追いかけてくシーン、最高!!!