クレスト・ブックス短編小説ベスト・コレクション「美しい子ども」を読みました!

いやーーーーーー これは良かった。またもや大ヒットである。積ん読山から救出した1冊。これを買った過去の自分に感謝… よく買ったよ、これ。

うん、短編小説ね。どれもこれもすべてすごく濃い。そして1つ1つが全然トーンが違うから、1つのお話を読んだら、次のお話を読む前に物語の最初に書かれた作者の国籍とバイオを少し読んで、落ち着いてから次へ行った方がいい。そのくらい1つ1つが個性的で、パワフルだった。

特に好きだったのは、なんといっても… またもや泥酔酩酊文学と言っていいベルギーの作家による「美しい子ども」だ。これほど情けなくて、汚くて、どうしようもない話はない。先日読んだ大バカ小説「みんなバーに帰る」に匹敵する、どうしようもない悲劇。が、それがめちゃくちゃ笑える。そして…相変わらず人間は、排泄行為が大好きだ。小さな子供も排泄行為の話題、大好きだけど… 大人だって結局のところそんなに成長しちゃあいない、って事だ。私だって朝、元気な●ンコが出た日には、写真にとってSNSにアップしたくもなる。「いやだぁ」とか言いながら、それでも爆笑する。あぁ、ホントどうしようもない…どうしようもない。最後爆笑できる最高のオチもあり。本当に最高の1作。

そして死に至る男と娘の悲劇「エリーゼに会う」もすごいスリルで良かった。

「地獄/天国」人生の評価はまったくもって出来ない…という話。これは面白かった。

「水泳チーム」も良かったなぁ。この自分にとっては大事な部分を分かってくれない相手とは上手くいかないって感じ、めっちゃよく分かる。

「若い寡婦たちには果物をただで」もすごくユニークな、興味深い話だった。こういう戦争が原因の複雑な感情には言葉もない。ジューイッシュのハードコアなコミュニティに生まれ、イスラエルを訪問することで棄教したというプロフィールをもつ作家の作品。この作家は興味あるね。もっと読んでみたい。

そして「リューゲン島のヨハン・セバスティアン・バッハ」にいたっては、なんと私の大好きな「朗読者」の作者ベルンハルト・シュリンクの作品ではないかー!! そしてこの作品も「朗読者」やバッハの音楽のように、ものすごい完成度だと思う。圧巻。

とにかくどれも最高にパワフルで、さすが新潮社クレストのベストだけあるなぁ、と感動しきり。うーん、偉いぞ、過去の自分。よくこの本を買った!