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2015年6月18日木曜日

萩田泰永「北極男」を読みました

先日アマゾンのベストセラーチャートを見て、世の中ではこんな本しか売れてないのか…と思い愕然したのだけど…。

でも私もイシグロとか頭使って読む文学より、こういうポップな本を読む方が楽、と自覚した。私も頭が悪い。…とか、書いちゃうとこの本に失礼だよね。いや言いたいことは、この本はスーイスイ読めてしまった、という事。3日で読破。萩田泰永さんの「北極男」。

なんと萩田さんは海外旅行は北極周りにしか行ったことがない、というくらいの、いわゆる「北極バカ」。(©角幡唯介

私もハワイやグアムとか行ったことがないヨーロッパ好きだが、それよりも、これはひどい。バイトをしてお金をためると北極へ行くために使う、というその繰り返し。北極に取り付かれた人生をそのまま生きている著者。スポンサーやメディアのサポートも一切なし。自分は他の人とは違うはずだと、根拠の無い自信をもとにチャレンジの旅を続ける。そして…そのたびに結構挫折して帰ってくる。たまに成功しても、達成感とか幸せは一瞬で終わる。すぐに次の旅がしたくなり2年もたたないうちにまた次の準備へと繰り出す。そして、またバイトの日々…

なんか自分のことを見ているようで、正直いたたまれなくなった。私も好きなミュージシャンに捧げたこの人生、それでも、この人と比べたら少なくとも私は好きな事は職業として成立しているわけだから食べられているだけまともなのかな、と思わないわけではないのだが…。とにかく自分のバカさを見ているようで、ちょっと辛かった。それにしてもこの人生はキツいわな…最近はでもネットを使ったファンドなどにも着手しているようだが。果たしてそれもいつまで続くのか。

とか言って同情してたら、著者、後書きに妻子がいる、とか書いてる!! このバカものっ!(笑) 奥さんには相当苦労をかけているか、実家が金持ちなのか? 角幡さんの本を読んだ時も思ったのだが、みんななんだかんだ言ってちゃんと自分の個人的幸せもあるじゃないの?!と。オレみたいな仕事オンリーの可哀想な人間が同情する必要なんて彼らにはまったくなかったのだった。すみません、失礼しますたー

それにしても男はいいなぁ! 植村さんもなんだかんだ言って素敵な奥さんがいたし、しかも彼女をほったらかし。手紙はラブラブだった時期の12,000キロ旅の時などあれこれ書散らし、そのあとは減っていったらしいし、あれこれと自分の不在中に奥さんを秘書にして、ホントに自分勝手。それでもって英語の勉強とか言ってアメリカに単身行っちゃったり。何やってんだ、いったい。

それにしても角幡さんも荻田さんも、二人ともどう考えてもちゃんと生活能力があるとはとても思えないので(失礼)ホントに家庭があるだなんて羨ましいよ。オレなんか絶対に結婚したり子供がいたりしたら今の自分は作れてないからさ…。もちろん、それについてまったく後悔はないけどさ。

いずれにしてもまだ彼は無補給単独徒歩による北極点到達は果たしていない。現在はホームページやブログなどであいかわらずファンドで資金を募っているらしい。

それにしても読ませる、面白い本ではあった。爆笑したのは、飲み屋で冒険家だ、というと男たちは「何、それ、どんな感じ?」と興味津々、ワクワクなのに対して、女たちは「それ死んだら保障はあるの?」とか言って、超現実的なのだそうだ。爆笑。そうね、女はそういう意味ではつまんない生き物かもしれない。しかしこういう本をワクワク読んでいるオレも、この本を読みながら自分の中の男らしさを発見してしまうのであった。男はロマンに弱い。一生大人になれない生物なのだ(©椎名誠さん)

でも最近荻田さんは子供を連れて北海道を歩いたり、そういう活動もされているようだ。それは素晴らしいと思うよ。探検よりも、そういうところに自分の人生の落としどころを見つけていくのが成功なのかもしれない。

植村さんも…私が何を知っているわけでもないが、最後の最後は焦って自分の落としどころが見つからず自爆してしまったのだと思う。植村さんは、それでも帯広で少しずつ何かを見つけつつあった。萩田さんも、それに近いものを今、発見しつつあるかもしれない。人は誰かに必要とされることで自分の居場所を見つけて行く。いや、私が彼らの何を知っていると言うのだろう。すべては勝手な想像にしかすぎないんだけど。

そしてまた書くけど、妻子もいるわけだから、私なんかよりもよっぽど幸せなわけだけど。

荻田さん、北極に行くとすべての感覚が研ぎすまされる、という。なんかそれ分かるよなぁ。いつだったかずいぶん前、東京在住の英国人の友人に「東京のどこが好き?」と聞いたら彼女は「東京にいる自分が好き」と答えていた。それってすごく理解できて、私も当時は英国大好き人間だったから、そうやって「1人で旅している英国での自分」が大好きだった。私も仕事をしている自分が大好きだ。

そういう、何となくではあるが「ここは私の場所だ」と思える感覚。それは…たくさんの場所を訪れる必要もなく、発見できてしまうものなのだ。

それにしても角幡さんも荻田さんも奥さんに苦労かけないようにね。まさか生活費、奥さんや実家に依存してないよね?と思う。まぁ、でもいいのか、それが可能な人はそれで。私が何を知っているというのだろう。ま、いいや、オレも自分の生きたいように生きる。オレは少なくとも金銭的には誰にも依存はしていない。

30代の彼らが悩んでいるように、私も50近くなっても、まだ人生の落としどころをどうしたもんかと考えてるよ。ウチのアーティストたちで若い子は30そこそこ。あと10年くらいは彼らの面倒をみないといけない…というか、私もあと10年くらいは彼らに係りたい。そしたら彼らは40で、私は60だ。そのとき、今の体力はないだろうから、どういう風にオチをつけていくのか。引き際は見極めたいよなぁ…

そしてやっぱり荻田さんも、シオラパルクの大島さんにお世話になっている。日本からあれこれ頼ってくる冒険家が多くて大島さんも大変だよ。でも荻田さんも書いているように、人間,生きているからには何かしら誰かに迷惑をかけて生きているのだ。それについては間違いない。それをなんとか世の中にお返しすべく頑張るしかないんだよな…

この本を読めば読むほど共感する。人間は面倒くさい生き物だ。単に食べてウンコして元気でそれでいいじゃないかというわけにはいかない。自分で自分を納得させられなくなったら、生きているのは、死ぬほどつらい。となると、あんな風に死ぬしかないだろうかと、数年前の某音楽評論家氏の自殺を、ついつい思い出してしまう。

あー、やだやだ。あんな風になるのは自分は納得してカッコ良くていいだろうけど、友達に対してありえないよな…と思いつつ、私も今、ロマンを北極に求めつつある。ふぅー。(何が「ふぅー」なんだか/笑)というわけで、荻田さん、応援してますよ。荻田さんの活動の詳細はこちら。