昨日、池袋でさっそく発売日前日に入荷しているのを発見し、購入。明日のトークショウでまたもう1冊買わないといけないと分かっているのに、ついつい待ちきれなくて購入してしまう。
ま、いいや、これもウチのプレゼント企画に使えばいいんだし。
それにしても発売日にウキウキなんて、ホント「ファン稼業」って楽しい! 角幡さんの新刊「探検家40歳の事情」の表紙はウチの辺境公演のチラシにもなったウヤミリック君。
最近、高野さんとの対談本「地図のない場所で眠りたい」が文庫になりました。こちらもウヤミリック君が表紙だよ。
ついつい能町みね子さんの「逃北」も探してしまう。こちらも平積み。ナヌークのことが載っています。皆さん、ぜひ読んでね!
というわけで、この新刊、昨晩はお風呂の中で読み、寝る前に読み、発売日前に3/4くらい読んでしまった。「漂流」は読むのに時間がかかったけど、これはスイスイ読めちゃう。
そして今夜はこちらの本屋さんへ、角幡さんのトークショウに参加しに行ってきました。(それにしても毎度トークショウに行くたびに「角幡さんの客層って分からない…」と思う。今日は年配の男性が多かったかも。場所柄かな…?)
そして現場でも、もちろんもう1冊購入。ファンはこうでなくっちゃ♡ たとえ買わなくても入場できるイベントだったとしても、主催者さまに敬意を評して…またやってください、角幡さんのトークショウ!
素敵なウヤミリックの表紙。
しかしウヤミリックを表紙にしたのは、オレのチラシの方が早かったんだよ。オレの後に講談社と文藝春秋が続いたんだよ(爆)
角幡さんのサイン。真面目そうで良いハンドライティングでしょう?
このサイン本は、誰かに差し上げます。ウチのCDでもチケットでもお申し込みのお客さんで、欲しい人は「角幡本,プレゼント希望」と書いてお送りください。
ところで、肝心のトークショウですが、すでに3/4読んでいる私としては、本に関連する写真や動画があれこれ観れてすごく良かったです。アッパリアス猟とか、上手いイヌイットの人の動画と、下手くそ(失礼)な角幡さんの動画の比較とか、アザラシ猟の写真は前にもみた記憶があるけど、みたことない犬ぞりの動画とかもね。それにしても羨ましいなぁ。シオラパルク、私も行ってみたいなぁ。(って言ってるだけじゃダメだよね。金と暇さえあれば誰だっていけるんだから、いつかきっと行こう!)
で、今日の帰りの電車の中で、すでに読み終わってしまった「探検家40歳の事情」。とにかくあっという間に読める。いや〜爆笑でした。まずは最初の感想は、角幡さんの奥さん、しっかりしてらっしゃる!! 探検家の妻はこうでなくっちゃね!ということ(植村直己さんとこのキミちゃん=奥様もすごくしっかりした女性だったみたいね。ちなみに植村さんの奥さんの旧姓は野崎と言う。今でも健在でいらっしゃるようです)
やっぱり角幡さんのユーモアって自虐的なんだよね。読者は角幡さんが失敗したり、困難に陥ったり、奥さんに怒られたりすればするほど楽しい気持ちになる。夜中に読んでて1人で声出して笑っちゃった「無賃乗車」(特に探検部の後輩2人に裏切られる角幡さんが笑えます)、最後のオチに涙が止まらない「忘れ物列伝」、奥さんとの喧嘩が目に浮かぶ「不惑」、そしてお嬢さんが生まれたことで別の喜びがあった「マラリア青春記」、どれもめちゃくちゃ可笑しいです。必読。
あと北欧グルメの話題「生肉と黒いツァンパ」も最高。偶然にもそこにクジラの皮の話が出て来たのだが、今日ナヌーク兄弟が2人とも、それをInsagramにあげていたのが偶然にしてはデキすぎている。
クリスチャンの方の写真が何故か埋め込みできないんだけど、これ。本にはそんなクジラ肉や、私も食べた麝香牛、そして食べてみたい角幡さん特製アザラシ丼など、あれこれ北極グルメが紹介されるのだ。
しかしながら、やはり私がこの本の中で1番好きなのは、今回書き下ろしとしてこの本に収められている「人間とイヌ」という、この本ではちょっと浮いている(角幡さん談)真面目なエッセイ。これはホントに素晴らしい名文中の名文なので是非多くの人に読んでもらいたいです。っていうか、これは雑誌とかに掲載されたものではなく書き下ろしですから、絶対にこの本を買ってもらいたいです。
「これ文章として完成度高すぎるだろー!!」というくらいものすごい完成度。なんというか、いやー 文章というのは、ここまで美しくなれるのかと感動する。そんな名文です。なんというか、前にも誰かが言ってたけど、角幡さんの文章って、ロックでいうとプログレの名盤みたいな、なんというか隙のない完成度の高さというか、凄みがあるんだよねぇ…
「人間とイヌが手をとりあって過酷な原野を生きのびることを選択したこと、これは人類史において、じつは火の使用や定住や農耕の開始などと並ぶきわめて決定的な一歩だった可能性がある」
「シオラパルクの人々のやり方は<文明国>に住むわれわれから見ると残酷なように見えるが、しかし考えてみると、われわれ<文明国>の人間だって、自分たちで面倒を見切れなくなったイヌを保健所に連れていって殺処分してもらっているわけで、根本的な部分では何も変わらない。ちがうのは、われわれが他者に委託してイヌの殺害をアウトソーシングしているのに対して、彼らがきちんと自分たちの手でイヌを殺していることだ」
…とかなんとか、気に入ったところを書き出していると、この章すべて書き出しちゃいそうなので、このくらいで辞めておきますが、なんというか、とにかくすごいんです。
そして、最後にこれからの北極の極夜(太陽が昇らない白夜の反対の状態のこと)の探検に出る角幡さんの気持ちも綴られています。
「私は一匹のイヌとともにそこにいる。私が死んだらイヌは死ぬ。イヌが死んだら私も死ぬ。そのとき私とイヌのあいだにひかれたあるゆる区分や差異は消滅し、二つの生物種を規定する異なる概念に意味はなくなるだろう」
そうそう今日のトークショウでお客さんから「角幡さんがピンチになったらウヤミリックは食べられちゃうんでしょうか?」という質問が出て、角幡さんの回答が良かった。
「基本的にそれは想定していない。前にドイツ人の探検家が犬食べて生き延びて、大変な非難を受けたのを見ましたけどねー。でも分からない。来年の今ごろトークショウやって“いや〜あの時すごくたいへんで犬食べちゃいまして〜”とか言ってるかもしれない(笑)」とのこと。
月明かりの極夜の中を1匹の犬と、草木1本はえない真っ白な北極を一緒に行くなんて、どんななんだろう。自然と、犬と、角幡さんと、すべての境界線がなくなる世界。
私の頭の中はナオコさんのラジオのこともあって、さっきから何度もこの曲が再生されている。北極を犬と2人で、この曲を歌いながら歩いていったら、どんなに素敵だろう… いや、自分にはできっこないんだけど、私にはその夢を止めることが出来ないんだ。
角幡さん、いってらっしゃい。どうかご無事で。そしてウヤミリックちゃんも。