ポスター、2パターンともよくできてる。そして、観たわ、ついに。話題のこの映画。
まぁ、ほんとに脚本がよく書けてる。ユーモアもあり、ハラハラドキドキもあり、とにかく脚本にまったく無駄がない。まったく。
ストーリーが奇抜で、よく出来ている。セリフもいちいち効いている。知らない間に大社長の一番痛いところを刺激してしまってるタクシー運転手の父とか。「半地下」「地上」「地下」の持つ意味とか。「匂い」に一番敏感に気づく息子とか。階段の意味とか。モールス信号とか。パパによるノープランに関する考え方とか。
俳優もベストなキャスティングでこれ以上の演技は思い浮かばない。一人一人がとにかく完璧だ。すべての俳優女優さんたちが適役で、演技も抜群。自然と半地下家族に感情移入してしまうのは、是枝監督の「万引き家族」と一緒だ。そしてあのリッチ家族の空虚具合と、クビになった家政婦夫婦の空恐ろしさには鳥肌がたった。怖すぎる。
いや〜 面白い。最高に面白い。シリアスなシチュエーションの中、ちょこっちょこっとユーモアのあるセリフやシーンを挿入してくるところは、是枝監督作品に似ているかもしれない。でも是枝監督とは決定的に違う何かがある。めちゃくちゃシリアスな状況なんだけどね、なんか可笑しい。そして…オカシイ。なにかがオカシイ。ヘンだ…
132分もあったんだ。あっという間におわっちゃった感がある。すごいな、これ。
エンディングはちょうどいい含みのある感じで、良いエンディングだと思う。私はこういう映画の終わり方は大好きだ。爽やかなエンディングに感じられる人もいるだろう。でも私は「こんなんじゃ、どうせ半地下からは抜けだせないよ」(黒のざき登場)と意地悪く思ったりしている。皆さんはどう感じられましたか?
唯一不満が残るとしたら「器用すぎる」「完成度が高すぎる」ってことかしら。先日の北欧メタル映画にも思ったことだけど、とにかく良くできてるって観る方は唸るしかない。例えば日本のアイドルの一所懸命な素人っぽさを売りにするのと違って、韓国のアイドルグループのダンスが、飛び抜けて技術が卓越してたり、スタイルが抜群だったり、整形してまで完璧なルックスを目指すことに良く似ているかもしれない。完璧だよ。いや、すごいよ、韓国。本当に圧倒的。
ついついお隣の国だから、こういうことに対抗できる日本的なものって何なんだろうと考えた。
よく言われる是枝作品との違いは明らかで、確かに「社会問題」「社会風刺」「なんだかんだでユーモアがあって面白い」「子供のするどい視線」「家族」みたいなところは一緒なんだけど、決定的に違うのは、このボン・ジュノ監督のほうが圧倒的に「キレ」と「テンポの良さ」があるところ。エンタテイメントしても一級の作品で、シリアスな現在をしっかり映画に収めつつもハリウッドのおバカ映画よりもよっぽど面白く楽しめるところ。そして是枝監督の方は、もっと地味で静かで派手さはないかもしれないけれどこれを伝えようとしている「監督の視線の優しさ」が力強く存在しているところがあげられる。突破口があるとしたら、そこだろう。
うーん、だからこういうのって、ほんとこっち(私・見る側)の問題だわなと思いつつも、あえて書けば、それでも私的には今年のNo.1映画としては、なんとなく不器用な『The Peanut Butter Falcon』の方が好きかな、と思ったりする。あんなに可愛いくてチャーミングな映画はない。
いや、すごいです。すごいんです。韓国ってエンタテイメントの世界で今最高レベルかもしれないって唸るしかない。っていうか、「かもしれない」じゃなくて、すでに「最高レベル」だろう。すでに4年くらい前にBBCの文化担当者も「今、一番面白いのは韓国だ」って言ってた。そもそも国の文化に対する本気度が違いすぎる。偶然この映画を見る前にミーティングした某地方自治体の担当者は「日本は文化に対する予算が少なすぎます」って自分で言ってた。だいたい日本みたいに「頑張ってる感」やプロセスが評価される時代は終わったのかも。重要なのは結果だし、作品そのものの完成度だよ。そういう意味では、本当にこの映画はすごい。もう文句のつけようがない。
そういう意味では、言ってしまえば、この映画は「完成度が高すぎて」「可愛げがない?」でも機内放送とかで、もう1回観て味わうとか、絶対にありだとは思うし、見てない人は絶対に観たほうがいい。
公式サイトはこちら。劇場公開情報はここです。
PS
ソン・ガンホさん。インタビュー。すごくいい。あの石の意味がやっと理解できた。それにしても映画のイメージと違ってかっこいいお姿。水谷豊さんとかもそうだけど、この映画のプロモーションに協力しながら、一つの役のイメージで固定化しちゃうのに争ってる感じがする。そこが彼の俳優の彼としてのメッセージか。いい。
これから観る人はこちらを参照に、より理解が深まります。韓国通の畔柳ユキさんが教えてくれたサイト。「パラサイト 半地下の家族」ソン・ガンホ、好きな日本映画は?“是枝裕和監督の大ファン…俳優としても影響を受けた” - 韓国芸能ニュースはKstyle https://t.co/aINEnGzyx4— 野崎洋子 (@mplantyoko) January 22, 2020
韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(『寄生虫』)をより楽しむための韓国文化キーワード7つ(ネタバレなし) | エンタメ総合 | 韓国文化と生活|韓国旅行「コネスト」 https://t.co/SEglx3vFTZ— 野崎洋子 (@mplantyoko) January 23, 2020