『パラサイト』より私は圧倒的にこっちの方が好きかもしれない。パラサイトのお父さん役ソン・ガンホさんが本当に素晴らしい。
…っていうか、脚本だな。これ、元になったストーリーも素晴らしいが、脚本がすごいのだと思う。後半のタクシーの運ちゃんたちが応戦するシーンは、ちょっとドラマチックに演出されすぎではないかとも思ったが、なんのなんの。観ている間は、そんなこと考える余裕もなし。とにかく映画の中に引きずり込まれ、泣きに泣いた。特に「お前は伝えなくちゃ」と病院でうなだれるドイツ人記者にカメラを手渡す運ちゃんのところはグッときて、そこで泣いて、その後はもうずっと泣いてた。
最初はシングル・ファーザーのタクシー運転手を追いかけて、寅さんじゃないけどちょっとコメディタッチで始まり、途中からはアクション・ムービーさながらのアクション・シーンの連続。デモ隊と軍の衝突、カー・レースなどものすごい迫力の映像だった。下世話な視線かもしれないけど、これらのシーンにはものすごい予算かけてるのが素人目にもわかる。そして最後の最後はどうなるのかはここには書かないが、自国の黒歴史をここまでしっかり映画化してしまう韓国というのは、たいしたもんだと思った。だって、80年なんて、まだついこの間の話じゃないか。そして、それは本当に美しい、ドイツ人記者とタクシー運転手の素晴らしいストーリーなのであった。いや、今思い出してもちょっと泣けてくる。
登場人物みんなキャラクターがたっていて、あっという間の二時間ちょい。それにしても韓国映画すごいな。ちょっとハリウッドなみに話がポップすぎないか(ポップって楽しいって意味じゃなくて)と思わないわけでもないけど、とにかくすごい。何度も言うが『パラサイト』よりこっちの方が私は好きかも。いや、明らかに好きだな。
この映画、実際にすごい話題になったんだよね。ヒットするの、わかる気がする。っていうか、今ごろやっとみてるのなんて、私だけか?
この監督さんの作品も、ソン・ガンホさんの出演作品ももっと追いかけてみたくなった。Prime入っている人は、今なら無料でみられるから、ぜひぜひ。
ちなみにタクシー運転手の本当のストーリーとその後は… 映画みたことある人はぜひここも読んでみてください。とても興味深かった。光州事件のことは、まだまだ歴史上、多くが明らかになっていないということなのだけど、こうやって平和のために命をかけた無名の、多くの市井の人々がいたんだろうなと想像する。またまた涙。町山解説も素晴らしい。