私に好きな本を10冊上げろと言われたら、『沖で待つ』は絶対に入る絲山秋子さんの大傑作。(6年前のブログのこの投稿に私の好きな本7冊をあげているけど、そこにも入っている)
私はフィクションは滅多に読まない。でもこれは本当に好きで、少なくとも5回…いや10回は読んだかも。長くないし、なんというか全く無駄のない研ぎ澄まされた文章が、とにかく素晴らしい。主人公はリアルな働きウーマン。何度も自分に引き寄せて泣いた!
でも映画化の話は、この映画祭の発表があるまで全然知らなかった! オレのアンテナ低すぎ。いや、でも映画の制作なんて秘密裡に進んでいるものなのだろう。何はともあれ嬉しい。だって、大好きな本だから。
とはいえ不安もあった。一昨日の夜は実は映画・音楽関係の濃ゆい皆さんとご飯で、「明日は横浜なんですよ」と大好きな本が原作だという映画の話題になった時、その場にいた全員から「原作は絶対に越えられない」と断定され(笑)、若干テンションが落ちつつ…
かつ、ゴールデンウィークのみなとみらいの映画館に10時ということで、高すぎるハードルにおののきながらも家を出た。(私は人混みおよび休日に出歩くのが大嫌い。みなとみらいみたいなデッチ上げニューエリアが大嫌い)
映画館はそれほど大きくなかったけど満席だったと思う。今回プレミア上映で、実際、本作品はこの2週間前に完パケしたとか、そういう状態だったそう。っていうか、まだ完パケというわけでもなさそうだ。もしかしたら一般上映までに、まだ手が入るのかもしれない。
で、映画です。
結論から言っちゃうと、かなり良かった。期待を裏切らない素晴らしい内容でした。っていうか、原作がやっぱり強いんだよなぁ!!!
脚本は誰だったのかな… ちょっとクレジット見逃しちゃったんだけど、上のポスター画像によると町田剛さんとある。とにかく無駄がなくテンポもよかった。セリフもかなり原作からそのまま来ていて最高だった。
っていうか、なによりまず太っちゃんがイメージ通りでびっくりした。全く違和感ない。で、一方で、実は読んでからだいぶ時間がたっていることもあって、主人公の名前はすっかり忘れていたのだけど…(ちなみに及川という)
及川のイメージは… 実は私の中では、実は絲山さん本人だったんだよね! これ反則かもしれないけど。
でも絲山さんがトイレ機器メーカー勤務だったことはファンにとってはよく知られた事実。だから、あの映画の主人公は、絶対に絲山さん本人だと私の中でイメージが固まっていた(勝手に・笑)。絲山さんもタバコ吸っているし。一方の上地さんは、タバコは似合わない。
だから全然イメージの違う主演女優の上地由真さんに正直違和感があったのだけど、映画を見始めて10分もしたら、そんなこともすっかり忘れ、彼女の演じる及川にどっぷり感情移入してしまった。
そして井口さん(だったっけ、太っちゃんの奥さん)の田中麗奈さん。彼女も、これがびっくりするほど本の中のイメージとピッタリだった。
田中さんの上映後のお話だと、監督からメモを渡されたりしてたらしいので、その辺はきっちり監督がディレクションしたのかなと思う。そして彼女は久留米出身! これは素晴らしい。
それにしても映画が良い作品で良かったよ〜〜。ほんと〜〜。これなら、この作品なら、堂々と応援できる!!
実は映画化にあたって心配していることがあった。あの『沖で待つ』が芥川賞を取った頃、主人公と太っちゃんには実は男女の気持ちもあったんじゃねーか…みたいなマトを外した読書感想文を何度か見たことがあったんだよね。
だからこの作品が映画になる時に、変な恋愛感情みたいなのが、映画制作側の意向で混ぜられていたら嫌だなぁと思っていたんです。その点をすごく心配でしたけど、稀有に終わった。良かった。原作にかなり忠実な展開はとても嬉しかった。
そうだよね、これがあの本が伝えたかったことなのだ、と思う。あの本の良さわかっている人にとっては、もう明確だよね!
これは圧倒的な男女の友情の物語だ。同期という不思議な友情。そして仕事仲間という友情。仲間と仕事したことない人は分からないだろうなとは思う。ぼんやり仕事してるやつにはわからんだろうなとも思う。
その前の日に見た『プラダを着た悪魔2』もそうだけど、こういう仕事の仲間!! くーーーーっっ(涙) この感じを若い人にも知ってほしいよな、と思っちゃった。
今は働き方改革とやらで、いろいろ事情は違うけど、私にとっても若いころ外回りで頑張ってたあの頃の時間は、今でも宝物だ。
だからこういう映画を見て、現役で仕事を頑張っている人は励まされてほしいと思うし、こういう仕事の醍醐味をまだ知らない人には、ぜひ知って、仕事を好きになってくれるといいなと、仕事の先輩(笑)としては、余計なことを思ってしまうのだ。
がんばるオレたちを笑う奴らなんて、くそだ!
だって仕事を頑張ることは本当に素敵なことだと思うから。
特に営業職は…外周りの仕事は、そうなのよ。ほんと大変なのよ。でも本当に素晴らしいしやりがいがあるし…
もっと言えば、なんというか、自分はここにいていいんだ、社会の役にたっているんだっていう、そういう感覚になれるんだよね。だって営業って本当に上手く行った時は、Win -Winの関係だから。
例えばキングレコード時代(89年〜91年)、私はラジオ局や音楽媒体を回る宣伝担当だった。そもそも外回り職にいる女は、あぁいう古い会社には珍しく、私は私で明らかにお茶を組んだりデスクワークだけしてる女性たちと自分は違うんだ、とちょっと勘違いもしていた。
でも太っちゃんと結婚したのが、原作ではデスクの優秀な事務員さんである井口さんだったという、その流れも、なんか妙に納得するのよね。これまた何かを暗示している。ほんと!!
そして、これは余計なことなんだけど、実は映画を見て思い出したことがあるんだ。でもこれについては、また今度書こうと思う。長くなるから(笑)
そういや勝間和代さんも言ってた。女が社会に認められるのは実は営業職など、「社外に評価がある仕事の方がいい」と。まぁ、さもあらん、だよね。すみません、これについては、長くなるのでこのくらいにしておく。
でもこういう営業の大変さ、時には理不尽なことを言うクライアントに、あれこれ言われながらもなんとか商品をおいてもらうのは大変な仕事ではあった。
だから主人公の頑張りとか、太っちゃんの頑張りとか、そんな自分の若い頃の苦労と重なって感情移入してしまうんだよね。
それにしても、映画を見ていて、自分が記憶している本の内容と若干違うところもあった。なにせ何度も読んでいるとはいえ、最後に読んでから時間が相当たっているしな…。
それに、この感想文を本を再び本棚から出して開いて、情報を確認することはしないで、このブログをいきなり書いているので、記憶違いがあるかもしれない。
っていうか、あの本を再読する前に、映画の最初の感想をここにまとめておきたい。だから、今、書いているのだけれど…
例えば映画を見始めて、思い出したこと。その1。あの素敵な「先輩」の存在も私はすっかり忘れていた。でも映画見ながら思い出した。そうそう、そうそう「収まらない現場はない」!!! そうなんだよ!!
また出産のところは、あんなだったかなぁ、と。これも実は、本での記述は記憶なし。でも映画での、あの便器を持って走る太っちゃんのシーンは最高だった。いや〜
ちなみに本で強烈に記憶に残り大好きだったのに、映画では出てこなかったシーンを…。
主人公が熱が出た(?)太っちゃんを車の後ろに乗せて高速を走っているシーン。「こいつのためなら、なんだってしてやる」って思うシーン。あれは映画でも欲しかったかも。(でもその素敵なセリフは、映画の別のところで登場していた)
あとこちらはささいなところだけど、(事務能力最高の、すでに引退した井口さん=太っちゃんの奥さんが、訪ねてきた主人公に)「パソコンは"輸送"している間に壊れたのかしらね」みたいなことを言うところ。
その「輸送」と言う単語に井口さんの優秀さが現われてる、みたいなことを主人公が考えたシーン。あそこ、本の中で、妙に印象的で、すごく好きだったんだけど、井口さんと主人公にその会話はなかったな、と。
とはいえ、この映画は監督の、『沖で待つ』を読んだ感想文なんだな、と言うのが感じられた。監督もこの本大好きなんだな、と。
その二箇所はなくて残念だったけど、他はとにかくすべて入っていて、それを90分の尺にまとめたんだから、素晴らしい!
そして太っちゃんの手書き文字も!! イメージ通りだよ。「沖で待つ…」
とにかく本の方は、読んでから時間がたっちゃったから、いろいろ忘れていることもあると思う。だから映画を見て、あの感動がふたたび蘇ってきたよ。うるうるうるうる。
また『沖で待つ』読もう。あの本がいかに好きだったのかをありありと思い出し、最後は涙、涙でした。
終演後、監督の篠原哲雄さん(『犬部!』の監督だったんだね。あれも好きな映画でした。帰宅してググって気がついた)と俳優陣が登場。びっくりするような撮影秘話などもあいまって、会場を沸かせてておりました。
ちなみに本作のちゃんとした公開はおそらく年内、秋以降になるみたいなお話でした。配給会社さんとかは、これから決まるのかな…。何はともあれ、公開になったら、またもう一度見たいし、パンフレットも買わなくちゃと思った。
はぁ〜
それにしても良い映画でした。行って良かった。
◎1996年からかかげてきたTHE MUSIC PLANTの看板は2025年12月にて下ろしました。公式サイトは近日中にアーカイブ化する予定。自分の主催公演や招聘はもうやりません。ただ2026年も若干の雇われ・お手伝い案件があるので、そちらはゆっくりとこなしていく予定です。
◎現在リリースしたCDの販売は終了しておりますが、書籍はあいかわらず販売しております。
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