「ケルト市」と「バンドにエイド」でバタバタだったので、本や映画のレビューがアップできていませんでした。たまった本や映画のレビューをアップしていきます。
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グレン・クローズ、大好きなんですよ。インテリジェントで俳優という仕事をしっかり受け止めていて、それが演技の素晴らしさにあらわれている。もう最高に素敵!!
で、彼女の主演作品で見逃していた『天才作家の妻』。やっと見ました。いや〜、素晴らしかった。今年もノーベル賞が話題になる季節がやってきましたが、ぜひぜひこのタイミングで見てほしい傑作です。
ノーベル文学賞をとった作家の妻。ところが実際は妻の方が書いていたという夫婦の秘密。子供たちにもそのことを隠し、しかし若いころの妻の作品に才能の芽を感じたとあるジャーナリストの追及が夫婦にじわじわと迫る。そしてノーベル賞の受賞式、お祝いのパーティ。
とまぁ、スキャンダラスなネタばかりがフィーチャーされがちだけど、でもこの映画の言いたいことは「愛の形」ということだ。男女のことは本人たちにしかわからない。ほとんど自分の気持ちを語らないグレン・クローズ演じる妻の存在がそれを教えてくれる。
70歳オーバーの二人が若いころとまったく同じようにベットの上で手をとりあってはしゃぐシーンなど、すべてが変わらない愛は強い。
とはいえ「誰々のパートナー」というか、「誰々の妻」「誰々の母」という立場って難しいよね。それはアイデンティティを確立する要素にはならない。それでもこういう愛情の形、家族の形もあるんだなぁ、と。授賞式や受賞パーティでのグレン・クローズの複雑な表情など、本当にすごい。
そんなふうに複雑だけど重厚な思いを残す映画だ。とにかくとにかくグレン・クローズの演技が素晴らしい。彼女の実の娘だという女優が本人の若い頃という設定で出てくるが、ちょっと存在感が薄いかな。美人だけどね。これも「誰々の娘」というのは、なんのアンデンティティということにはならないってことなのか。厳しいけど。でもまだ若い(1988年生まれ)なので、これからに期待! 一方でダメダメ息子役のスイートなルックの小太りの彼はなかなか良い演技だった。最後のフライトの中での母・息子の会話もすごく良いエンディングだ。
とにかくグレン・クローズ、圧巻。押さえた演技が本当に素晴らしい。そうなんだよね、彼女ほどの女優は滅多にいない。「危険な情事」しか見てない人は、アイルランドが舞台になった「アルバート氏の人生」もぜひ見て。こちらは本当に本当におすすめ。私の人生大好きな5本に入るくらい好きな映画です。(下にリンク貼っておきました)