金原ひとみ『fishy』を読みました。ドロドロで超・面倒くさい女たち。


 なんかこうパンチのある文章を読みたくなって、久しぶりに買った金原ひとみ。本の雑誌社の杉江さんがプッシュされていたので、間違いはないという確信はあったが、確かに非常によかった。最新作『fishy』。

『蛇にピアス』も読んだがなんかつらくて今いち楽しめず。それでもその表現力や筆力には感動したので、なんとなく文体というか彼女の世界観は読む前から想像ついた。

そして… この本である。「こういうの、読みたかったのよ!」という感じ。うんうん。楽しい世界ではない。正直重くて面倒くさい。嘘をついたり、いい加減な距離感で仲が良いようにみえて実は牽制しあっている女たち。普通の女の人って、こんなに面倒くさく生きてんだ?とちょっと引く。

ヘヴィな世界なのだ。キャリアウーマンで出版社につとめ息子たちにも恵まれた弓子はしかし夫との関係はすでに崩壊。夫は外に女をつくり離婚してくれ、と言う。そして不倫にのめりこみ相手の妻から訴訟をおこされそうになる美玖(みく)。夫を殺しただなんだと振りまきつつ若い男と同棲したり刹那的に生きるインテリアデザイナーのユリ。この3人の物語だ。

正直、登場人物の誰にも共感できない。だーれにも。まったく共感できない。自分が普段生きている人生とまるで違いすぎる。いや、だからこそ面白いのか。それにしてもとにかく私から見たら、こういう生き方は超面倒くさい。

こんなにも人との距離や、どっちの方が幸せかみたいなマウント取ってたら、自分の好きな人生送れないじゃないの。こんなに嘘ばかりついてたら、誰にどんな嘘言ったのか、嘘マネジメントが大変でしょうがないでしょうよ。こんなんじゃ好きな本も読めないし、好きな映画も見れないし、好きな料理だってできないよ。暇なのか、この人たち? こんなに面倒なら家庭なんて作らなくちゃいいのに。それぞれがそれぞれなりに見栄っ張りなところも、これまた損をしている。っていうか、時間の無駄! 案の定、弓子は馬鹿愛人の元から帰ってきた夫のことが、自分は本当に好なのか自分で判断がつかなくなっている。そりゃそうだろうよ。

しかしとにかく筆者のこの表現力っていうのか、筆力っていうか、そういうのがとにかくすごい。めっちゃリアル。私もこの3人のコリドー街での飲み会に自分も参加し「みんな馬鹿だなぁ、もっと合理的に生きた方がいいんじゃない? そんな人生じゃ自分のやりたいことやって死ねないよ」とバッサリ言ってみたくなる。…というくらいリアルである。めっちゃリアル。

すごいわ、金原ひとみ。若いんだよね、確か。本気で書いているのが分かるわ。この筆力は尋常ではない。売れるの分かるわ。確か角幡さんあたりが『マザーズ』薦めてた記憶あり。もっと読んでみるか。