コンサート会場におけるPAの役割

「音遊人(みゅーじん)」最新号はPA特集。これが素人が読んでもなかなかおもしろい。

コンサート・プロモーターやっている人って、いわゆる「ライブ現場上がりの人」と「レコード会社周りから流れてきた人」といるわけだけど、特にレコ社周りからながれてきた人(私を含む)は、音について非常に「ビビリ」であることが多い。ライブをやるたびに「音がでなかったらどうしよう」という恐怖にかられる。この場合「音が出る」というのは単に音がスピーカーから出る、という意味ではない。ミュージシャンがモニターに満足しなかったり、フロントの音が悪くてお客が満足いくものにならなかったりしたらどうしよう…とそういうことだ。

でも今だから言えるけど、それって、いいことだと思うんだよね。昔は音について怖いことが多かった。でも例えばライブあがりで来た人たちが「大丈夫、大丈夫」といいながら大きく失敗したり、素人に現場を触らせてぐちゃぐちゃになっているのを目撃するたびに私はこれで良かったのだと確信する。すくなくとも私にとっては、自分ができないことはプロを雇ってお任せする。音のことについて常に謙虚でいるというのはものすごく大事なことなのだ。「音が出る」「ノイズが走らない」「演奏者がモニターにハッピーである」ということはやはりとても重要だ。

だからこそ、あれこれわからない人にあれこれコメントされるとイラッとすることが多い(ちっちゃい私)。昔はよくコンサートでミュージシャンがサインランゲージみたいにモニターを指さし演奏中にフロントにいるエンジニアに指示を送る(たとえばギターをもっとくれとか、ベースがもっと減らしてくれ、とか)姿をみかけると、お客さんがそれを見て、自分の聴いている音について「〜の音が小さかった」「大きかった」と感想を言ったりすることがよくあった。でもね、いや、お客さん、それ違いますから、ミュージシャンがモニターで聴いている音とフロントのスピーカーでお客さんが聴いている音とは全然違いますから…  と言いたくなる。(のだが、言えない・笑)特によくルナサのドナ(昔のギター)がそれやってたっけなー。大きな目でギョロリとPA卓をにらみ、あれこれ指示を出すものだからお客さんはそれが気になってしょうがない。メンバーからもあれはかっこ悪いことだ、とクレームが出ていた。もっとそれよりも目の前の演奏に集中しろ、と。そしてあれこれ言ってくるお客さんには残念なことだけどミュージシャンたちがモニターで聴いているのは基本自分の音なのだ。お客が聴いている音とは違う。ま、もちろんお客さんだからね。何を言われても余計なことは言わず、私たちスタッフも一応ご意見として「あ、そうですか」と承っておくわけだけど…。

とまぁ、音ってほんとに難しい。正面で聴いて最高な音が壁際で聴いたらダメだ…なんてこともありうる。反対に最前列だと生音しか聞こえなくてバランスが全然ダメな時も。そんな風に音を作るのって、本当に大変だから、なるべく自分で制作しているコンサートはもちろんだけど、自分が普通にコンサートにいってPAさんに声をかけることが許される様子だったら、「今日、音すごくよかったです。おつかれさまでした」って声をかけるようにしている。だってそれが当たり前とはとても思えないから。みなさんもぜひコンサートスタッフに直接接するチャンスがあったら声をかけて褒めてあげてください。



音ってほんとに難しくて、サウンドチェックのときはよかったのにお客さん入ってみたら全然違う!ってことにもなりかねない。機材じゃなくて会場の「鳴り」(しかもお客入り、お客なし)にもなれていないといけない。本当にこういうのをハンドルするプロの人って、すごい腕だよなぁ、と思うのだけど、PAさん選びも、これまたなかなか難しい。主張のあるPAさんだとPAの音を聴かせよう、聴かせようって感じになっちゃう時もある。そうじゃなくて、私は会場の響きと、楽器から出る直接の音と、それをまったく自然にPAが入ってないみたいに聴かせるPAさんが好きだ。また製作時においては、同じステージをシェアするミュージシャン、照明さんたちとも上手くやっていただく必要もある。その点、うちが予算があれば必ずお願いする小林さんや小泉さんは最高のエンジニアさんだ。なかなか予算の関係で彼らにお願いできないこともあり、いつも悔しく思っているのだけど。

そうそう、いつぞやコンサートの永田音響の方の講座受けに行っていろいろ勉強になったっけなーと、あれこれ思い出したのでした。その記事はこちら

いずれにしても音のことがわかりやすく書かれたこの「音遊人」最新号。ぜひぜひコンサートに興味がある人はゲットして読んでみるといいですよ。