フランシス・ベーコン展、行ってきました

ここも緊急事態宣言のために閉まっちゃうのかな…と思いつつご紹介。




正直、何年か前に行われた近代美術館でのベーコン展の方が圧倒的にわかりやすく良かったのではあるが、これはこれでユニークなコレクションともいえる。絵画のことは、よくわからないし、素人のコメントだと思って聞き流していただければと思います。感想メモ。


フランシス・ベーコン(アイルランド生まれ、1940年代、英国で活躍)は「叫び」や「強烈に歪められた人物像」「不穏な雰囲気が強烈な印象を与える絵画」で知られる画家。まぁ、一度見たら2度と忘れられない系のパワフルな作品群が有名です。左の写真は、うちのトイレに貼ってあるポストカード。ずいぶん前の近代美術館でのベーコン展で購入しました。この強烈な絵画。たしか作品自体も巨大だったように記憶しています。(間違っていたら、すみません)

今回松濤に来ているのはいわゆる彼のアトリエ・コレクション。生前ベーコンは、いわゆる「習作」はしないと公言してきたようだけれど、その死後、古典の名画や報道写真にあれこれ書き込んだ「ワーキング・ドキュメンツ(作業用の資料)」と現在呼ばれるものが大量に発表されたんだって。そしてXアルバムと呼ばれる習作の数々、展示会のポスターや、生前の交流関係がかいまみれるベーコンに寄贈されたサイン入りの書籍など、今回、その合計130点ほどのコレクションが松濤美術館に並んだわけです。

まぁ、なんというか、そもそも作家が「人に見せる」「売る」ことを前提としていない作品たち。断片的に雑誌や新聞の写真に落書きしたとした思えないようなもの、そもそも作品も小さいものばかりで、例えばヒットラーの写真への書き込みなどは「こいつ嫌なやつ」と引っ掻いたようにしかみえない。が、これも「作品」になるのはベーコンゆえか…と思いつつ眺める。 


そんな中、私が一番好きだったのは、バレエ・ダンサー、ヌレエフの写真の上のドローイング。ベーコンはゲイだったが、そういう視線も感じる迫力の一枚。そして数々のスポーツ選手(主にボクシング、そしてサイクリング)など動きがある写真へのドローイングがすごい。これらは迫力のあるものが多く近くで筆の力強さを感じながら見るのは素晴らしい体験であった…。

とはいえ、とにかくこれらすべて前提として「人に見られる」ことをまったく意識していないわけで、そういった単に頭の中にあることを自分で爆発させているというか、そういう表現なのだ。思えばゲイが深刻な犯罪だった当時の英国での彼の生き様を思うとあれこれ想像をめぐらしてしまう。そういえば「Call me by your name」の原作本も、ゲイの作者が人に読まれることを意識せず書いた秘密の作品じゃなかったっけか? ふむ。そういうわけで、彼の作品には、今の私たちに届くスパークする何かが存在しているのだと思う。

それにしても天気のよい1日。松濤って何回来ても、へんなエリアだよなぁと思う。文化村を境に文化圏が変わるところがすごい。高級住宅街は都内数カ所あれど、このエリアも、嫌味なほどリッチな松濤があり、谷底には渋谷があって、そこにはお金のない若者がむらがっている。とてもじゃないが駅前に行く気にはならず、代々木上原から歩いて松濤美術館へ行き、そこからタクって、そのまま代官山へ行き、イベントを行った。

それにしても、私は私で美術館、美術展については、この本を読んでから、いろいろ思うところあり…なのだ。一箇所のコレクションをまんま持ってくることと、あちこちから集めて独自にキュレートし、リスクをかかえて開催するのとでは、話が全然違う。良かったら感想をここに載せてあるので、ご覧ください。

話がそれた。このベーコン展は6月中旬まで開催。平日なら予約なしでぷらっと行っても入れるそうです。ちょっと案内文がわかりにくいんだけど、何はともあれ最新の状況と詳しくはこちら。